2024年の住宅業界はどうなるのか、今後の動向が気になる人は多いでしょう。
住宅業界で生き残るには、現状を把握して課題を一つずつクリアしていく必要があります。
この記事では2024年住宅業界の今後の動向を予測して、将来の見通しや対策について解説しています。
コロナウイルスが徐々に落ち着いてきた今こそ、自社を見直す絶好の機会にしてください。
住宅業界とは
住宅業界とは、分譲住宅や戸建て住宅の設計・販売・建築を事業とする企業の集まりです。
住宅業界は主に工務店やハウスメーカーが存在し、全国的な大企業から地域の中小企業までさまざまな業態が存在します。
ハウスメーカーの特徴 | 設備や建材の品質が管理されており住宅の仕上がりに差が出にくい。土地探しから住宅購入後のアフターフォローまでのサポートが充実 |
工務店の特徴 | 地域密着型の企業が多く土地・風土にあった住宅を建ててくれる。対応の早さや範囲は工務店によって異なる |
住宅業界の現状
住宅業界の今後の展望を考えるためにも、まずは現状を把握しましょう。
【住宅業界の現状①】人材不足
住宅業界は慢性的な人材不足に悩まされています。
- 若者不足
- 職人の高齢化
- 後継者不足
国土交通省「建設産業の現状と課題(2023年)」によると、全産業で55歳以上が占める割合は31.5%なのに対して、建設業は35.9%という高いデータが出ています。
建設業はもっとも高齢化が進んでいる業界であり、住宅業界全体の大きな課題です。
【住宅業界の現状②】業務の属人化
顧客管理やプロジェクト管理をエクセルや紙で管理している企業は多いです。
エクセルや紙による管理は属人化を招くため、業務効率が極端に落ちてしまいます。
人材不足により職人のノウハウや技術を継承する時間がなく、建設現場でも業務の属人が起こっています。
【住宅業界の現状③】資材不足
アメリカや中国で木材の需要が増加していることから、資材不足や資材の高騰が進んでいます。
日本の建築用木材は7割以上を輸入に頼っているのが現状です。
国際的な木材価格の高騰は、住宅価格の値上げなど大きな影響を与えています。
【住宅業界の現状④】コロナショック
住宅に使う資材や設備が調達しにくくなるほどに、コロナウイルスが住宅業界に与えた影響は大きいです。
コロナウイルス感染症は5類に移行してから徐々に落ち着いていますが、まだまだ終わりは見えません。
【住宅業界の現状⑤】新規住宅着工戸数の減少
人口減少にともない、新築住宅の市場規模は減少傾向です。
野村総合研究所の「新設住宅着工戸数予測」によると、着工戸数は2022年度が86万戸でしたが、2040年は49万戸にまで減少する見通しです。
そのため、今後は限られた顧客層の取り合いが加速することが予想されます。
工務店・ハウスメーカーにおける今後の動向
これから、2024年住宅業界の今後の動向について見ていきましょう。
今後の動向を知ることで、住宅会社の課題を把握したり将来の見通しを立てたりできます。
【今後の住宅業界予想①】若者の減少
国土交通省「建設産業の現状と課題(2023年)」によると、29歳以下の従業員の割合は全産業が16.4%なのに対し、建設業はわずか11.5%です。
若者の離職率が高いことも明らかになっており、若者の定着も大きな課題の一つです。
各住宅会社には「新3K(給与・休暇・希望)」で労働環境を改善し、若者の定着率を上げることが求められます。
【今後の住宅業界予想②】時間外労働の上限制限
2024年4月から、建設業では時間外労働の上限規制(新36協定)が適用されます。
時間外労働の上限は原則として「月45時間・年間360時間」までです。
営業担当者は施主との打ち合わせが頻繁にありますし、建築現場で働く人は工期に間に合わせるために長時間労働が常態化しています。
新36協定に違反すると30万円以下の罰金などが課せられるため、業務を効率化して時間外労働に気をつけなければいけません。
【今後の住宅業界予想③】ZEHの提案の増加
今後の住宅業界は、ZEHの提案機会の増加が予想されます。
2025年4月からは新築住宅の省エネ基準への適合が義務化され、2030年にはZEHレベルへの引き上げが決まっています。
環境省、経済産業省、国土交通省が補助事業を行なっていることからも、省エネ住宅は今後のトレンドになりそうです。
【今後の住宅業界予想④】リフォーム市場の拡大
今後2030年までに、リフォーム市場の拡大が予想されています。
メディアの影響をはじめ、SDGsの浸透や給料が上がらないこともリフォーム・リノベーションが進んでいる理由の一つです。
リフォーム市場で生き残るためにも、今のうちから知識や技術力を高めておくことが大切です。
【今後の住宅業界予想⑤】高まる顧客の知識
インターネットや動画サイト、SNSで住宅業界の発信を目にする機会が増えました。
このような背景から、顧客は融資や土地探し、リフォーム関連などの知識が高まっています。
ハウスメーカーや工務店で働く営業担当者は、顧客以上に知識や能力を身につけておきましょう。
【今後の住宅業界予想⑥】インボイス制度
インボイス制度が開始されたことにより、今後は発注側(住宅会社側)の負担増加が予想されます。
なぜなら取引先が課税事業者と免税事業者に分かれるため、別々の会計処理が必要になるからです。
住宅業界は免税事業者の一人親方が多いことから、今後の取引について考える必要があります。
工務店・ハウスメーカーが今後とるべき対策
ここでは、工務店・ハウスメーカーが今後とるべき対策について解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組み
工務店・ハウスメーカーが今後取るべき対策の筆頭が企業のDX化です。
DXとはAIやIT技術、ロボティクスなどを活用して生産性や効率性を高める取り組みです。
すでに大手ハウスメーカーはドローンを使った高所作業やクラウドツールによる情報の一元管理を実施しています。
人材不足問題の解消にもつながるので、積極的に企業のDX化を推進していきましょう。
事業の多角化
今後、住宅会社は市場を見つめ直して事業の幅を広げるのが効果的です。
前述した通り、住宅業界の国内市場は縮小傾向にあるため、海外市場を視野に入れるのがおすすめです。
実際に、大手ハウスメーカーは今後も需要が見込まれるアメリカや東南アジアの市場開拓を進めています。
インターネットを活用した経営
工務店・ハウスメーカーはインターネットをフル活用してください。
なぜなら、近年はSNSやYouTubeの情報で住宅会社を決める人が多いからです。
Webコンテンツでは、施工事例を掲載したりお金の悩みを解決したりする内容がおすすめです。
お客様との距離を縮めることができれば、ゼロから営業をかけるより遥かに成約率が高くなります。
住宅業界の今後の働き方を変革する
住宅業界の働き方を変革するには、インターネットの活用が欠かせません。
ここでは住宅業界の今後の働き方について、2つの事例を紹介します。
【住宅業界の今後の働き方①】テレワークの導入・継続
コロナ収束後でも、テレワークの導入・継続は必要となりそうです。
テレワークは出退勤の準備時間や通勤時間を節約できる分、業務に費やす時間を増やすことができます。
営業担当者は資料をまとめる時間や打ち合わせの準備を簡略化できますし、残業時間の削減にも効果的です。
【住宅業界の今後の働き方②】オンライン商談の導入・継続
オンライン商談もテレワーク同様に、今後の働き方のスタンダードになるかもしれません。
オンライン商談は工務店・ハウスメーカー側と、顧客側の双方にメリットがあります。
工務店・ハウスメーカー側は紙の資料を用意する手間がなく、空いた時間を他の業務に回せます。
顧客側は忙しくて住宅展示場へ行く時間がなくても、オンライン見学会なら気軽に参加できるのがメリットです。
まとめ
今後は新築住宅着工戸数がなだらかに減少するものの、リフォーム市場やエコ住宅市場は伸び代が大きいです。
住宅業界で生き残るにはインターネットの活用とDX化、事業の多角化戦略が必要です。
そのためにも他社より先に動き出し、差別化を図りながら自社の独自性を高めていってください。