昨今、DXという言葉をよく耳にします。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響も相まって、住宅業界でもDXの需要は高まっています
そのため、住宅業界・工務店におけるDXとはどういったものなのか、具体的に何をすればよいのかと、工務店の経営者さんや営業担当者からご相談が弊社によせられます。

同じような課題を感じている工務店さん・住宅営業の担当者さんの疑問・不安を少しでも解消し、DXに向けて一歩を踏み出す一助となればと思い、今回の記事を作成致しました。

弊社は、1997年から25年以上システム開発を専門に業務効率化や生産性の向上、近年ではDX化のお手伝いなど住宅・建設業界に限らず多くの企業をサポートしてきました。

工務店と共同でシステムを開発・運用している経験やノウハウ・実績をもとに、わたくし、株式会社エフ・ディー・シー DXサービス事業推進部、佐々木が舞美がこの機会に解説します。

詳しくは、弊社コーポレートサイトをご覧ください。

背景には、少子高齢化や新型コロナウイルス感染症の拡大、新規着工数減少に伴う市場の縮小などの環境の変化があります。DXに向けた動きは、大企業に限らず、社員数が少ない、あるいは個人経営の工務店も関わっています。

工務店向けDX調査用チェックシートダウンロード

住宅業界・工務店、住宅メーカーのDX

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称です。
経済産業省が発表した『DX推進指標とそのガイダンス』では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用し て、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

参考:DXレポート2 中間取りまとめ(概要)|経済産業省

つまり、単純にデジタルツールを導入するだけでなく、顧客起点の価値を生み出す事業やビジネスモデルへの改革を通して、その根本にある課題を解決することを目的としているのです。

住宅業界・工務店、住宅メーカーにおけるDXとは?

では、住宅業界・工務店、住宅メーカーにおけるDXとは何を指すのでしょうか。

住宅業界は、少子高齢化や新型コロナウイルス感染症の拡大、新規着工数減少に伴う市場の縮小などにより環境が激しく変化しています。蓄積してきた営業・設計・施工などのノウハウ顧客情報・図面などのデータデジタル技術を活用し、施主・社会が何を求めているかに着目し、住宅営業の一連の流れや社内での情報共有、既存のシステムなどを見直し、組織、プロセス、企業文化・風土を変革することを指します。

また、それによって新しいビジネスの価値を生み出していくこと、他工務店、住宅メーカーとの差別化を図り、市場に生き残る工務店になることを目的としています。
つまり、DXは工務店や住宅メーカーが抱えている問題を根本的に解決していくことにつながります。

住宅業界の課題 工務店、住宅メーカーがDXを推進すべき理由

前述したように、DXとは各企業が抱える根本の課題解決を目的としています。
近年住宅業界が抱える課題と照らし合わせ、住宅メーカー・工務店がDXを推進すべき主な理由として、以下の4つを挙げます。

住宅業界の課題 工務店、住宅メーカーがDXを推進すべき理由

工務店・住宅メーカーの人手不足・業務の属人化

住宅業界全体として「人手不足」が慢性的な課題となっています。
これにより、一人当たりの作業量が増え、対応漏れや対応遅れといったトラブルが発生、さらに業務が増えるといった負のループが起きています。

また、業務の属人化(ある業務の手順や進捗状況などを特定の担当者しか把握しておらず、社内に情報が行き届いていない状況)により、人材に起因するリスクが高まってきています。例えば、担当の変更や不在によりお施主様への対応が十分にできない、言った言わないなどの認識のズレが起きてしまうことが挙げられます。

これらを解決することができるのが、DXです。ビジネスチャンスを逃さないためにも、デジタル技術を活用しビジネスモデルを変革することによって、人手不足を解消することができます。

コロナ期間を経てのオンラインへの適用・移行

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、営業活動が大きく制限されました。
現在でも、打ち合わせなど対面で行っていたこともオンラインに切り替える、訪問回数を極力減らすなどの変化が見られます。また、コロナ期間中に施主側がオンラインに適用し、コミュニケーション手段が移行してきている傾向も見られます。

よって、オンライン化に向けた業務フロー・システムの見直しが必要となっています。
また、働き方にも変化があります。各社在宅勤務を推奨する等の取り組みが行われ、社員同士の情報共有の方法についても見直しが必要な状況となっています。

資材高騰・市場の減少傾向

日本では2021年初め頃から表面化してきたウッドショックやウクライナショックにより資材・物価の高騰が顕著です。ピーク時と比べると落ち着いてきたと言えますが、2023年現在も明確な見通しが立っておらず、コロナ禍以前の水準に戻るまでにはまだ時間がかかると見られています。また、新築着工戸数が減少傾向にあり、市場全体が縮小しています。

これらの課題を解決するためには、建材費以外で適正な粗利確保を目的とした生産性向上が必須となります。特に働く「人」に対する生産性の向上はコストダウンに直結します。詳しくは、後述しますがDXによる業務効率化で「人」に対するコストダウンを図ることができます。

購買行動・ライフスタイルの多様化

インターネットやSNSの普及により、消費者の購買行動、企業とのコミュニケーション手段が多様化しています。
若者を中心とした、デジタルに慣れ親しんでいるこれからの世代に合わせたコミュニケーションの手段を今のうちから確立していくことは、今後の市場を生き残る上で重要な鍵となっています。

コミュニケーションの多様化に対応する1つの方法として、デジタルツールの活用が挙げられます。選択の幅を広げることは、新たなビジネスチャンスの機会となるのです。

以上の理由から、今後工務店が競争力をつけ市場を生き残るために、既存の体制やシステムの見直し・新規デジタルツールの導入検討などのDXを推進することが不可欠です。
少数精鋭で勝負する中小の工務店であっても、同様の課題を抱えていることから、DXの推進は必須と言えます。

住宅業界・工務店DXコミュニケーションアプリplantable

住宅業界・工務店、住宅メーカーDXのメリット

住宅業界・工務店、住宅メーカーDXのメリット

① 業務効率化

住宅業界・工務店、住宅メーカーのDXメリットの一つ目は、業務効率化です。

デジタルツールなどの活用により、一人当たりの業務負担を軽減させ、対応漏れ・遅れといったトラブルを未然に防ぐことができます。また、それにより多くの案件を抱えている社員のストレスを軽減し、社員のやる気・満足度の向上に繋がります。

② インサイドセールスの増加

住宅業界・工務店、住宅メーカーのDXメリットの二つ目は、インサイドセールスの増加が見込まれることです。

インサイドセールスは、内勤営業つまりオンラインでの営業を指します。

インサイドセールスの役割は、見込み顧客へ電話やメール、チャットツールなどを活用して相手とのコミュニケーションを深め「より有望な顧客」へと育てることです。

前述したように、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、住宅業界でも打ち合わせをオンラインに切り替える動きがみられます。顧客とのコミュニケーションの幅を広げることは、新しいビジネスモデルを構築するチャンスとなります。

③ 人手不足の解消

住宅業界・工務店のDXメリットの三つ目は、人手不足の解消です。
住宅業界全体の課題の一つに、「人手不足」が挙げられます。

DXの代表的な方法であるIT・デジタルツールの導入は、煩わしいひと手間を軽減させ、効率の良い業務を手助けすることで、「人」にかかるコストを削減することができます。
新しく人を増やすのではなく、現状の業務フローを見直し効率化することは、まさに少人数で仕事をこなす工務店にとって、必須なのではないでしょうか。

④ 顧客満足度の向上

住宅業界・工務店のDXメリットの四つ目は、顧客満足度の向上です。

施主との良い関係を築くために重要なことは、「信頼」です。
住宅業界・工務店は、顧客との関わりが多く、コミュニケーションは工務店にとって課題の一つに挙げられます。そんな顧客とのやりとりの中で最も印象に残るのは、良かったことよりも良くなかったこと、つまりネガティブな部分です。
例えば、双方の認識が合わず「思っていたものと違う」、「伝えたはずなのに」といったトラブルです。

DXを通して人の手で行ってきたことをデジタルツールに置き換えることで、顧客とのトラブルを減少することができます。結果的に、顧客満足度の向上に繋がるのです。

住宅業界・工務店、住宅メーカーDXのデメリット

住宅業界・工務店、住宅メーカーDXのデメリット

① 投資(ランニングコスト)が必要

DXを推進していく方法として、IT・デジタルツールの導入が主流となっています。そのためには、初期費用・ランニングコストがかかります。また、効果を実感するまでに時間がかかる可能性もあるため、経営戦略を立てづらい点がデメリットであるといえます。

② 社員からの反対

新しい方法(デジタルツール等)を導入することは、従来の仕事の進め方・やり方に慣れている社員にとってはめんどうであり、必要ないと反対されてしまう可能性があります。

デジタルツールを導入したとしても、社員が使ってくれないのであればまたゼロにもどってしまいます。
それらを避けるためには、経営層が率先して利用・使い方をレクチャーする必要があります。また、浸透するまでに多少時間がかかることも想定しておく必要があるかもしれません。

ここまで、住宅業界・工務店のDXにおけるメリット・デメリットを見てきました。
最初から全ての業務フローをデジタルに置き換えるとなると、上記のデメリットが強く働きます。まずは、小さな一歩からDX化を始めてみてはいかがでしょうか。

住宅業界・工務店、住宅メーカーのDX成功事例

住宅業界・工務店、住宅メーカーのDX成功事例

ここからはDXを成功させた住宅メーカー・住宅ビルダー・工務店の成功事例を紹介いたします。

① デジタル改革を加速、住宅業界を牽引しDXで新たな価値を創出

全業務デジタル化を目標に掲げ、DXに力を入れている「竹中工務店」の事例です。
グループの成長戦略の中核として、働き方・生産性改革を急速に進めています。

具体的には、クラウド環境に「建設デジタルプラットフォーム」を開発し運用をしています。このプラットフォーム上で建設に関わる一連のプロセスにおけるプロジェクト業務や、人事・経理等、事業に係るすべてのデータを一元管理し、BI(企業に蓄積された大量のデータを集めて分析・可視化するためのツール)やAI等を用いたデータの可視化・分析・推測など高度なデータの利活用を推進しています。

参考:竹中工務店の建設DXソリューション | 竹中工務店

② お施主様に合わせた接客方法で、受注棟数を伸ばす

茨城県を基盤とした地域密着型の工務店「にのみや工務店」の事例です。
顧客満足度の向上・失注率の改善を目的として、工務店向けコミュニケーションアプリ「つながる家づくり-plantable-」を導入しています。

顧客情報や図面・書類など顧客に関する情報を一つのプラットフォームに集約し、一元管理しています。施主とのやり取りが見える化されたことにより、社内共有や情報管理がスムーズになり、社員の負担を軽減させています。
結果として、顧客満足度の向上につながり、失注率の80%削減に成功しました。

住宅業界・工務店のDXセミナー

いきなりDXツールを導入していくことはハードルが高い、まずは質問・相談をしてみたいという方は、セミナーに参加してみてはいかがでしょうか。

弊社でも、毎週金曜日5社限定の小規模な工務店様向けのDXセミナーをオンラインにて開催しております。

住宅業界・工務店のDXまとめ
【住宅業界・工務店のDXとは?工務店がDXを推進すべき理由】

いかがでしょうか。
今回の内容をまとめます。

  • 住宅業界・工務店、住宅メーカーのDXは、デジタル改革を通して根本にある課題を解決することを目的としている
  • 環境・市場の変化を対応するために、小規模の工務店であってもDX推進が必須である
  • メリット・デメリットを踏まえたうえで、小さな一歩から始めていくことが成功につながる

DXは、単にデジタルツールを導入することが目的ではありません。
現状ある課題を解決するために、デジタル技術を活用するのです。

弊社工務店、住宅メーカー向けコミュニケーションアプリ『つながる家づくり-plantable- 』は、お施主様とのつながりをより強いものに、理想の家づくりの打合せをひとつのtableを囲んでお話しするように気軽に、工務店、住宅メーカー様に寄り添い課題解決をお手伝いします。お気軽にご相談ください。

つながる家づくりplantable_紹介動画