住宅・建設業界は2024年問題や人手不足、職人の高齢化など多くの課題を抱えています。

いま、業界の課題を解決する一手として注目されているのが、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)です。

この記事では住宅・建設業界でBPOの導入が進んでいる理由やメリット・デメリット、今後の動向について解説します。

建設DXにもつながる話なので、BPOの導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。

plantable「言った言わない」

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、自社の業務の一部を一括して専門業者に外部委託することです。

企画・設計段階から外部委託することから、アウトソーシングの中でも外部委託先の自由度が高いといえます。

自社にノウハウのない業務を代行してもらえれば、自社の業務品質の向上やコスト削減といったメリットが生まれます。

BPOとアウトソーシングの違い

BPOとアウトソーシングの大きな違いは、業務に対する「専門性の高さ」と「進め方自体も外部委託する」という点です。

BPO業者によって「デジタルマーケティングに強い」「優れた人材を採用する」など、得意とする業務は異なります。

従来のアウトソーシングは業務を遂行するために、「足りていない一部分だけを外部委託する」というものでした。

BPOは専門性の高い業者に企画・設計から実施までを一括で外部委託し、企業が抱える人手不足や業務効率化といった課題解決に貢献します。

業務効率化の重要性が高まっている現代において、BPOは非常にマッチするサービスといえそうです。

住宅・建設業界にBPOの需要が高まっている理由と今後の動向

住宅・建設業界にBPOの需要が高まっている理由と今後の動向

すでにご存知のとおり、住宅・建設業界は複数の課題を抱えています。

  • 2024年問題(時間外労働の上限規制)
  • 職人の高齢化
  • 労働人口の減少
  • 長時間労働の常態化
  • 後継者不足
  • 若者離れ

人材不足を例に挙げると、2000年に約65万人いた大工は2020年に約30万人になるなど、わずか20年で大工数は半減しています。

参考:大工就業者数の推移|国土交通省

労働人口の減少は歯止めがかからないのが現状で、業務を一任できるBPOは人材不足の解決策として大いに期待がされています。

BPOは欧米を中心にグローバルで人気を高めていて、今後も重要視されるのは間違いありません。

実際にBPO業界全体で見ると、世界的に年平均5.1%の成長が見込まれているのです。

住宅・建設業界がBPO活用のメリット

住宅・建設業界がBPO活用のメリット

住宅・建設業界でBPOを活用するメリットは、大きく3つです。

  • 人材不足の解消につながる
  • 専門的な人材を活用できる
  • 残業時間を軽減できる

人材不足の解消につながる

一般的に会社のリソースには限りがあり、業務もコア業務とノンコア業務に分かれます。

利益に直結しないノンコア業務にリソースが割かれ過ぎると、企業の成長は望めません。

BPOを活用してノンコア業務をアウトソーシングすれば、自社のリソースを増やすことが可能です。

結果として社員はコア業務に集中できるようになり、人材不足の解消や生産性の向上につながるでしょう。

専門的な人材を活用できる

専門的なスキルや知識を持った人材を導入することで、自社のスキル不足を補えます。

住宅・建設業界で考えられる業務の一例としては、以下が挙げられるでしょう。

  • 各種書類作成・申請業務
  • 施工管理アプリの導入・運用サポート
  • 議事録作成
  • 写真台帳管理

例えば施工管理アプリを導入していても使いこなせていない、という企業もあるはずです。

BPOは現場や工程に合わせて、内容のカスタマイズや遠隔でのサポートに適切に対応してくれます。

残業時間が軽減される

BPOに業務を委託することで、残業時間の軽減にも期待できます。

事務作業やルーティン作業などのノンコア業務、中間業務を残業時間中におこなっている企業も多いでしょう。

BPOでセミコア業務やノンコア業務を軽減すれば、残業時間が減り働き方改革に対応できます。

また、社員のライフワークバランスが満たさせることで、エンゲージメントの向上にも期待できるでしょう。

住宅・建設業界がBPO活用のデメリット

ここでは、住宅・建設業界がBPOを導入するデメリットを解説します。

  • 人材の調整・整理が難しい
  • BPO事業者の選定に苦労する

人材の調整・整理が難しい

住宅・建設業界でBPOを導入しても、人材整理が思うように進まない可能性があります。

なぜなら日本の人事は雇用・解雇に関する法律が厳しく、例え経営難でも簡単には解雇できないのです。

実際に労働契約法第十六条では、従業員の解雇に関して次のように定めています。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:労働契約法|e-Gov法令検索

従業員の業務がBPOに代替された場合、解雇理由として不合理と判断されやすいことを考慮しておきましょう。

BPO事業者の選定に苦労する

BPOのようなビジネス支援サービスは、自社の業務をまるごとアウトソーシングします。

BPO事業者との信頼関係は非常に重要な要素で、特に初めてサービスを利用する場合はハードルが高いと感じるかもしれません。

BPOを活用するにあたって、事業者の情報不足は大きな課題です。

「事業者の能力を可視化する」「一覧化して客観的に評価できるようにする」など、企業が選びやすい環境づくりが望まれます。

BPOの契約体系

BPOの契約体系は大きく3つに分かれます。

  • 委任契約
  • 準委任契約
  • 請負契約

契約内容を確認しないと情報漏洩や責任問題が発生する恐れがあるので、契約前に確認することが重要です。

委任契約

委任契約は、法律に関わる業務を取り扱うときのみ結ばれる契約です。

したがって住宅・建設業界をはじめ、BPOにおいてほとんど締結することはありません。

準委任契約

準委任契約は事業会社が作業過程に責任を負う契約で、作業中も自らの責任で管理をおこないます。

代表的な業務は、システム運用やコールセンター業務、コンサルタント業務などです。

準委任契約は業務の遂行が目的で、成果物の完成義務はありません。

そのため、例え成果物が依頼者の要望を満たさなくても、報酬を受け取れるという特徴があります。

準委任契約は両者とも契約途中で解約ができますが、相手側が不利になる場合は訴訟を起こされるケースもあるので注意しましょう。

請負契約

請負契約は委任契約(準委任契約)と違って、仕事の達成を目的に契約を結びます。

成果物にミスや欠陥があれば受託者側が責任を負うことになり、発注者の検品が完了した時点で契約が終了する流れです。

したがって、報酬も仕事の「遂行」ではなく、仕事の「達成」に対して支払われるのが特徴です。

住宅・建設業界BPOのパートナー企業を検討する際のポイント

住宅・建設業界BPOのパートナー企業を検討する際のポイント

BPOのパートナー企業を検討する際は、実績とセキュリティ対策を確認しましょう。

実績は「数」だけではなく「同業種」「地域の導入例」にも目を通し、業務量や品質などの成果から判断します。

また事業規模での実績を知ることで、スタートアップから大企業までの特徴もカバーできるはずです。

他にもセキュリティ品質基準や認証資格を確認して、情報漏洩を確実に防ぐようにしましょう。

情報セキュリティマネジメントシステム規格のISOやJIS、プライバシーマークなどを取得していれば、セキュリティ対策基準が高いと判断できます。

BPOは住宅・建設DX推進を進めるうえでも重要

BPOは住宅・建設DX推進を進めるうえでも欠かせません。

建設DXとはAIやICTといったデジタル技術を用いて、人手不足や職人技の継承といった課題を解決し、生産プロセスに改革をもたらすことです。

例えば自社がICTツールの活用経験に乏しい場合、「運用できる人材がいない」「教育に手が回らない」という事態に陥ります。

BPOの導入で専門知識のある企業へアウトソーシングすれば、コア業務に集中できたり環境変化に柔軟に対応できたりします。

社内で対応できるノウハウが蓄積されていない業務ほど、BPOを利用して建設DXの推進を加速させましょう。

まとめ

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、社内の業務プロセスを一括で外部企業に委託する仕組みのことです。

セミコア業務やノンコア業務を委任することで、自社の業務に集中して残業時間の短縮や品質の向上に期待ができます。

BPOを検討する際は、費用対効果や事業者の実績を十分に考慮することが大切です。

人手不足や2024年問題に早期に対応して、建設DXを加速させましょう。