設計事務所の経営を長続きするには、設計技術だけではなく適切な経営ノウハウや知識が必要です。
この記事では設計事務所が生き残るための8つの経営課題と、具体的な4つの戦略的構造を解説します。
設計事務所に欠かせない顧客の「信頼獲得」につながる、DXツールも紹介します。
設計事務所の経営とは?

設計事務所の仕事は顧客の要望を聞きながら建物や設備の設計を行い、設計通りに工事が進んでいるか確認することです。
多くの経営者が下積み時代に設計技術を身につけて、独立・開業する流れとなるでしょう。
設計事務所はいくら設計技術があっても、経営が成功するとは限りません。
初歩的な経営の知識として売上や費用(経費)、利益について正しく理解する必要があります。
基本的な知識を身につけることで、経営に関連する意思決定やコントロールが可能となるのです。
設計事務所が生き残っていくための経営課題8つ

労働環境の整備
設計事務所の経営課題の1つ目は、労働環境の整備です。
建設業界は以前、3K(きつい・汚い・危険)と呼ばれる時代がありました。
年収が他の業界の平均より低かったり、離職率・転職率が高かったりしたのです。
しかしながら、2015年に国土交通省と日本経団連が新3Kを唱えたことで、徐々に労働環境や企業構造に変化が見られます。
新3Kとは「給料が良い」「休暇が取れる」「希望が持てる」を指します。
設計事務所に従業員を定着させ採用者を増やすためにも、労働環境の整備は無視できない課題です。
コロナによる新規受注数の減少
新型コロナウイルスが世界中で流行して、設計事務所の建築受注数は大幅に減少しました。
対面による打ち合わせや住宅見学などが、避けざるを得ない状況に陥ったからです。
建設業界では営業との打ち合わせや電話連絡など、アナログな業務が多く残っています。
デジタル化への遅れは新規受注数の低下を招いた、もっともわかりやすい事例の1つといえます。
建築ニーズの変化
スーモカウンターが公開する「コロナ禍における注文住宅建築意向の変化」では、コロナ禍だからこそこだわった、またはこだわりたい場所として「洗面」や「ワークスペース」が上位に挙がっています。
コロナ禍以前はキッチンやリビングにこだわりたい人が多かったことからも、建築ニーズは大きく変化したといえるでしょう。
時流に乗った経営戦略が立てられるかどうかは、設計事務所が生き残っていくために必要な課題の1つです。
新型ウイルスの流行は極端な事例かもしれませんが、建築ニーズは大きく変わることがあることを覚えておきましょう。
参考:スーモカウンター「コロナ禍における注文住宅建築意向の変化」
BIM・AI技術による仕事の変化
設計事務所の経営課題の4つ目は、BIM・AI技術による仕事の変化です。
BIMとは3Dの建築モデルを作成して設計から施工、維持管理までの業務を効率化する仕組みです。
国土交通省は公共事業にBIMを取り入れることを明らかにしており、今後は民間事業でのBIMの普及が予測されます。
したがって、BIMに対応したPCやソフトウェアへの多額の投資が必要です。
また、設計AIの進歩も目覚ましく、BIMと同様に対応は必須といえます。
設計AIは過去の膨大な建築事例を参照して、風土や気候にあった住宅建築を提案するものです。
カーボンニュートラル達成に向けた省エネ設計への対応
環境省は2050年までに、CO2(二酸化炭素)を排出実質ゼロにする目標を掲げ、住宅建築物の省エネ化を推進しています。
具体的な対応策として、建築物の断熱性能の強化や高効率設備の導入、ZEH・ZEBなどが挙げられます。
カーボンニュートラルは世界的に取り組みが進んでいるため、設計事務所も技術的な対応が不可欠です。
人材不足・働き方改革の遅れ
建設業界は深刻な人材不足が続いており、働き方改革に対応できないなどの悪循環に見舞われています。
働き方改革とは時間外労働の上限規制や給与・社会保険の充実を目的とする取り組みです。
前述したとおり、建設業界は長時間労働、低賃金、離職率の高さなどが問題視されています。
このような状態が長引くと会社の存続が難しいことから、人材確保と労働環境の改善が課題となります。
少子高齢化への対応
少子高齢化の影響により、年間の新築住宅着工戸数は減少傾向です。
野村総合研究所によると2022年度の着工戸数は86万戸でしたが、2040年度は55万戸まで落ち込むとされています。
少子高齢化は設計事務所が解決できる問題ではありませんが、家族構成などに合わせて適切な提案を行う必要があるでしょう。
出典:野村総合研究所「2023~2040年度の新設住宅着工戸数」
デジタル化の遅れ
設計事務所の経営課題の8つ目は、デジタル化の遅れです。
建設業界は対面での打ち合わせや職人の高齢化といった理由から、アナログ業務が多い構造になっています。
人材不足で若手の教育時間が取れないという問題もあり、人材教育にも影響が出ています。

設計事務所の経営課題を解決する方法

企業ブランディングの強化
現代は多くの商品・サービスが溢れており、設計事務所も数え切れないほど存在します。
あらゆる情報がオープンになっていますが、顧客側は設計事務所の違いがわからず「どの企業にするか」悩む方が多いです。
情報過多の時代で自社が選ばれるためには、以下の企業ブランディングの強化が望まれます。
- 自社独自の設計デザインの提供
- 顧客の立場にたった提案と設計
顧客の悩みを解決して「信頼」できるという企業イメージを確立するために、努力の継続が重要です。
Webサイト・SNSの運用
設計事務所の経営を安定させるには、マーケティング(集客)戦略の強化が欠かせません。
なぜなら、ほとんどの顧客がWebサイトや口コミサイトの情報を頼りにして、訪問や問合せを行うからです。
Web上での情報発信は、もっとも自社を知ってもらうきっかけになります。
Webマーケティングにはいくつか種類がありますが、まずはホームページの見直しから始めてみてください。
場合によっては、プロのコンサルタントに依頼するのも1つの手です。
時代に合わせた事業展開
時代に合わせた事業展開は、設計事務所にとって重要な経営戦略となります。
例えばコロナ禍では衛生意識の向上やテレワークの普及によって、洗面所やワークスペースのニーズが増加しました。
今後は少子高齢化に合わせて、中古住宅市場やリフォーム・リノベーション市場が盛り上がると考えられています。
このように「市場で求められていること」に着目ができると、依頼が絶えない設計事務所になる可能性が高いです。
業務のデジタル化やDX
どの設計事務所においても、業務のデジタル化やDXは必須です。
特に人材不足で悩む企業であれば、業務を効率化することで少ないスタッフで業務を回せるようになり、課題解決につながります。
ビデオチャットツールを活用すれば打ち合わせの準備時間を節約できますし、BIMを導入すれば設計から維持管理までの業務効率化も可能です。

建築事務所向けDXツール(つながる家づくり‐plantable‐)

plantableは建築設計事務所、顧客、施工業者の間で起こる「言った言わない問題」を解決するDXツールです。
情報の伝達ミス・漏れは、作業のやり直しや顧客の信頼を損ねるなど、大きな問題につながります。
「設計事務所や建築現場が人材不足」「残業時間を減らせない」と悩む経営者の方は、業務の効率化を強くお望みかと思います。
組織と顧客間との認識のズレをなくし、案件の受注数増加、利益率アップを実現したい経営者の方は、ぜひplantableをお役立てください。
記事まとめ
本記事では設計事務所が生き残る8つの経営課題と、4つの戦略的構造を解説しました。
これからの時代に生き残る設計事務所は、時代の変化に柔軟に対応して顧客の立場にたった提案ができる設計事務所です。
本記事を参考に課題と向き合い、設計事務所のホームページの見直しや業務効率化ツールの導入から始めてみてください。