建築士資格は社会的な信用が高かったり就職・転職で有利だったりするものの、ウッドショックや建築資材の高騰などによる住宅業界の課題から、将来どうなるのかと不安になる人は多いはずです。
この記事ではネット上で「食えない」とか「オワコン」というネガティブワードが出てくる理由と、実は建築士が将来安泰と言える理由を解説します。
記事の後半には建築士の将来設計に役立つ、身につけるべきスキルをお伝えします。
「一級建築士は食えない?オワコン?仕事がなくなる?」と言われる理由

「一級建築士は食えない?オワコン?仕事がなくなる?」と言われる理由は、大きく3つが考えられます。
【理由①】少子高齢化による需要の減少
少子高齢化の影響を受け、新築住宅着工戸数は年々減少しています。
野村総合研究所の発表では、2022年度の着工戸数が86万戸に対し、2040年度は55万戸まで落ち込むとされています。
住宅の需要が減ることは、建築士の需要が減ることを意味します。
また、商業施設や賃貸マンションなども減少するため、将来が不安になる人が多いのが現状です。
【理由②】AI技術の進歩
建築士の仕事がなくなる理由の2つ目は、AI技術です。
単純作業や積算、図面作成といった業務内容をこなせるため、仕事なくなると捉える建築士も多いことでしょう。
AIはさまざまな業界や企業へ導入されていますが、自己学習能力が大きな特徴のひとつです。
回数を重ねるごとに仕事の精度やスピードが向上して、人間では思いつかないアイデアを生み出すこともあります。
参考:日経クロステック
【理由③】BIMの導入
建築士の仕事がなくなる理由の3つ目が、欧米を中心に導入が広がるBIMです。
BIMは建物ライフサイクルの想定が可能で、設計から施工、維持管理までの業務を大幅に効率化することができます。
耐久性のシミュレーションもできるなど、革新的なツールとして注目されており「仕事がなくなる?」と思う建築士は少なくありません。
建築士の需要や仕事がなくなるとはならない理由

AIやBIMによって建築士の仕事がなくなると思う人は多いですが、建築士の需要はなくなりません。
建物は人間が生きるうえで欠かせないものであり、その建物には建築士が欠かせません。
ここでは建築士の仕事がなくなるとならない理由について、3つお伝えします。
建て替えの建築士の需要があるため
日本の建物やインフラは老朽化が進んでいて、建て替えには建築士の力が必要です。
一般的にインフラの寿命は50年程度と言われ、建て替えや改修がされないまま放置されているインフラの数は7,000件を超えています。
日本は地震や豪雨などの自然災害が多いことから、建て替えや修繕の頻度が高いのが特徴的です。
これらの事情を考慮すると、建築士の需要はまだまだ続くと言っていいでしょう。
参考サイト:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221206/k10013913441000.html
新築の建築士の需要があるため
新築住宅着工戸数は年々減少しているものの、ゼロにはなりません。
新築住宅を購入したい若年層、高齢者向けマンションやリゾート施設など、まだまだ建築士の力は求められています。
解体の建築士の需要があるため
人口減少や人手不足により、空き家や老朽化したままの建物が増えています。
建て替えが難しい建物や廃墟同然となっている建物は、解体工事が必要です。
建築士は解体とは無関係に思えますが、解体の計画を進めたり現場の安全を確保したりする役割があります。
空き家問題が全国的に問題視されている背景から、建築士の仕事なくなるという心配は不要ともいえます。
【将来設計】今後の建築士に求められるスキルとは?

建築士は「仕事がなくなる」と不安に思うだけではなく、将来を見据えて資格や経験を積み重ねる必要があります。
ここでは建築士の将来設計ともいえる、今後必要な知識や経験について解説します。
建て替えやリフォーム関連の知識・スキル・経験
今後の建築士に求められるスキルのひとつ目は、建て替えやリフォーム関連です。
SDGsへの取り組みから、リフォーム・リノベーションを行う人が増えています。
野村総合研究所の発表によると、リフォーム市場規模は今後もわずかに成長を続け、2040年には8兆円台後半となる見込みです。
「給料が上がらない」「家庭環境が変化した」なども、建て替えやリフォームが進む理由のひとつでしょう。
建て替えやリフォーム関連のスキルやセミナーや書籍、経験から学んでください。
バリアフリー関連の知識・スキル・経験
国内で急激に高齢化が進んでいることからも、バリアフリー関連の知識は必須です。
バリアフリーに関する法律や規則を学んで実際に設計に落とし込み、実務経験を積み重ねることが大切です。
段差が少ないなどハード面だけではなく、安心・安全でセカンドライフが楽しめるソフト面も考慮した住宅設計力が問われます。
エコハウス関連の知識・スキル・経験
環境問題やSDGsは世界中で注目されている背景から、建築士にはエコハウス関連の知識・スキルが求められます。
エコハウスは地球にやさしいだけではなく、水道光熱費が低いという施主にとってもメリットが多いです。
エコハウスの知識はWebサイトや各種セミナーから得たり、設備業者から学んだりして習得を目指します。
ITリテラシー(デジタルリテラシー)関連の知識・スキル・経験
ITリテラシーなくして建築士は務まりません。
生産性を上げるものに業務の手助けをしてくれるものなど、IT技術は目まぐるしく進化しています。
ビデオチャットを使ったオンライン見学会、リモート打ち合わせが浸透したのも、IT技術が発展したおかげです。
好奇心を持って新しい技術に触れる習慣を身に付ければ、ITリテラシーを大きく高められます。
ヒアリングスキルやコミュニケーションスキル
施主の理想的な家づくりを実現するためには、ヒアリングスキルやコミュニケーションスキルが欠かせません。
施主の悩みやニーズに応えられるのは、AIではなく人間である「建築士」にしかできません。
ヒアリング力を伸ばして、地域の特性や風土を活かした住宅設計を心がけてください。
また、コミュニケーション力が高まると仕事の依頼が増えて、年収アップや独立につながります。
多くの人脈を構築すること
いくらデジタル化が進んでも、人間関係が希薄になってはいけません。
時代が変わっても仕事を運んできてくれるのは「人」です。
多くの人脈を築ければ、キャリアアップや収入アップ、仕事が紹介される機会が増えるのです。
働き方が多様化しても、横のつながりを広げる重要性は変わらないといえます。
AI技術やデジタルツールを活用しDX化によって業務変革を起こす

建築士が生き残る方法として覚えておきたいのが、AI技術やデジタルツールを活用した業務改革です。
当記事でお伝えした通り「建て替え・新築・解体」の面からも、建築士の仕事がなくなるという事態は当分訪れません。
AIやBIMは建築士の業務効率化に大いに役立つため、活用しない手はありません。
AIにはルーティン作業をお願いして、自分は別の作業に時間を費やせます。
BIMは各ソフトに分断されていた情報を一つに集約することで、設計や施工などの業務が正確かつスピーディーにこなせるようになります。
このように、建築士はAI技術やデジタルツールに仕事を取られるのではなく、活用して業務を進めることが重要です。
建設DXによって業務改革を起こし「一級建築士は食えない?オワコン?仕事がなくなる?」という事態を回避してください。

まとめ
この記事では建築士のネガティブワードがネット上で飛び交う理由と、そうならない理由について解説しました。
結論から言うと、今後も「建て替え・新築・解体」の需要があるため建築士は安泰です。
AIに仕事を奪われることもなく、うまく活用することで建築士の新しい道を切り開くことができます。
コミュニケーション力を高める事とITリテラシーを高める事で業務の幅が広がり、新規受注につながるなど大きな恩恵を受けられます。
自分の将来設計を見つめ直して、セミナー参加などできるところから始めていきましょう。