近年、新型コロナによる住宅受注の減少やウッドショックによる調達難など、工務店を取り巻く環境は激しく変化しています。
さらに、人口減少や顧客のニーズが変化していることから、工務店は経営戦略を見直す岐路に立たされているのです。
この記事では工務店が直面する厳しい経営状況と、具体例を交えた自社が生き残るための経営戦略5選をお伝えします。
「経営戦略の方法がわからない」「経営戦略で利益を出したい」という経営者は参考にしてください。

弊社は、1997年から25年以上システム開発を専門に業務効率化や生産性の向上、近年ではDX化のお手伝いなど住宅・建設業界に限らず多くの企業をサポートしてきました。

工務店と共同でシステムを開発・運用している経験やノウハウ・実績をもとに、わたくし、株式会社エフ・ディー・シー DXサービス事業推進部、佐々木舞美がこの機会に解説します。

詳しくは、弊社コーポレートサイトをご覧ください。

工務店の厳しい経営状況

日本の国内の工務店は、厳しい経営状況に瀕しています。
ここでは、工務店が抱える4つの課題についてお伝えします。

工務店の厳しい経営状況

高齢化による人材不足

工務店をはじめ建設業界では、高齢化による人材不足が長く続いています。
近年は着工戸数以上に技能者が減るペースが早まっていて、人材不足が顕著です。
かつて建設業界は「3K(きつい、汚い、危険)」と揶揄された時代がありました。
人材の確保が難しかったこともあり、今日の人材不足につながったといっても過言ではありません。
仮に入社しても一人前になる前に退職する社員が非常に多く、工務店は人材育成がまともにできなかった時代だったのです。
大手ハウスメーカーなら人材育成に時間やコストをかけられますが、地方工務店はそうはいきません。
従業員が働きやすい環境を提供し、モチベーションやエンゲージメントが向上する経営戦略が求められます。

廃業率の高さ

工務店の廃業率が高い理由が「新型コロナの影響」と「社長の高齢化と後継者不足」です。
帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産(2021年)」の動向調査によると、建設・工事業の廃業率は第2位となっています。主な原因は飲食店の休業や廃業、ウッドショックによる資材高騰・調達難です。
また、帝国データバンク「全国社長年齢分析(2019年)」では、建設業の社長の平均年齢が59歳と記されています。
中小の工務店では新規顧客の開拓から経理まで、社長一人で対応するケースも珍しくありません。
このまま経営を続けても後継者の育成や独り立ちが見込めず、廃業する事態に陥ってしまうのです。

参考:新型コロナウイルス関連倒産(2021年)|帝国データバンク
   国社長年齢分析(2019年)|帝国データバンク

資材高騰・物価の高騰

日本では2021年初め頃から表面化してきたウッドショックやウクライナショックにより資材・物価の高騰が顕著です。ピーク時と比べると落ち着いてきたと言えますが、2023年現在も明確な見通しが立っておらず、コロナ禍以前の水準に戻るまでにはまだ時間がかかると見られています。

これらの課題を解決するためには、建材費以外で適正な粗利確保を目的とした生産性向上が必須となります。特に働く「人」に対する生産性の向上はコストダウンに直結します。

新築住宅着工数の減少

野村総合研究所が発表した「新設住宅着工戸数予測」によると、着工戸数は以下のように推移すると分析されています。

  • 2022年度・・86万戸
  • 2030年度・・74万戸
  • 2040年度・・55万戸

2040年度の55万戸は2022年度の86万戸と比較して、実に「36%」もの減少が予測されています。
加えて近年は新型コロナの影響や、ウッドショックによる資材高騰や調達難も大きな課題となっています。
新築住宅着工数の減少と人口減少は防ぐことが非常に難しいため、いつどこで会社が淘汰されてもおかしくない状況と言えるでしょう。
工務店が生き残るためには、課題を細分化して考え時代にマッチする経営戦略が欠かせないのです。

参考:新設住宅着工戸数予測|野村総合研究所

工務店が生き残る経営戦略5つ

工務店が厳しい状況でも生き残れる、5つの経営戦略についてお伝えします。
「経営戦略の方法がわからない」「経営戦略で利益を出したい」という方は参考にしてください。

工務店が生き残る経営戦略5つ

経営戦略1.集客方法を「Web集客」に切り替える

一つ目の経営戦略は「Web集客」にリソースを注ぐことです。
Web集客に集中する理由は、ほとんどの顧客がWebサイトや口コミサイトの情報を頼りに工務店を決めているからです。
具体的な集客方法として自社ホームページやWeb広告、SNS運用を活用してターゲットにアプローチする方法があります。
Web集客の方法はいくつか種類がありますが、先ずは目に留まってもらうためにSEO対策やMEO対策から始めてください。
また、スマホで閲覧したときにきちんと文章や画像が表示されるかどうかも、忘れずに確認しましょう。

経営戦略2.工務店経営に関するオススメ本3選

経営戦略として、工務店の経営方法について学べる書籍を読むことをおすすめします。
自社の課題と照らし合わせながら何度も読み返して、経営戦略のポイントを実践していきましょう。

あなたの会社が90日で儲かる! 神田 昌典(著)

1999年の発売ながら、今なお売れている名著です。
著者の神田昌典氏は日本を代表する国際的マーケッターであり、本では「営業側主体の営業」へ転換することが述べられています。
「無駄に時間をかけず、売り上げを飛躍的に伸ばすマーケティング法とは何か?」その答えが見つかります。

2代目工務店社長の住宅イノベーション 瀬口 力(著)

著書の瀬口力氏は熊本県に本社がある、小さな地方工務店の社長でした。
父の死をきっかけに受け継いだ工務店の売り上げは当初1億円程度でしたが、2022年6月期では137億円にまで一気に拡大。
YouTubeチャンネルの開設や3Dプリンター住宅の開発など、旧態依然とした業界にイノベーションを起こした取り組みについて学べます。

企業存在価値の創造 品質経営 竹中工務店TQM推進室(編)

「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という経営理念で歩んできた竹中工務店が贈る、品質経営の方法論が学べる一冊です。
これからTQMを導入したい工務店や経営システムの質を強化したい工務店など、企業永続を目指すヒントが満載です。

経営戦略3.強みを打ち出して選ばれる理由をつくる

工務店が持つ強みを応用して、選ばれる工務店になることを目指す経営戦略です。
例えば住宅建築だけにこだわらず、自社の技術力を駆使してオリジナル家具を販売してみるのもいいでしょう。
技術料のアピールが認知度アップにつながり、独自性を身につけることで地域でポジショニングを取ることができます。
また、インテリアを「自社ブランド家具」に統一して建売販売することで、新たな集客方法になる可能性が高いです。
事業領域の拡大は簡単に成功するものではありませんが「地域で選ばれる工務店」を目指すため、大切な経営戦略の一つです。

経営戦略4.コストを削減して利益率を高める

工務店の経営戦略4つ目は、コストを削減して利益率を高めることです。
コストの削減はお客様へより良い品質の商品を安価で提供でき、自社に利益も残りやすくなります。
具体的には資材の仕入れ先を見直し、同程度の品質でより安い製品に切り替えてコストを抑えます。
顧客満足度が向上すればリピーターにつながり、住宅のリフォームやお友達紹介に発展する可能性が高いです。
また、自社の業務を見直して、工数のムダや品質のバラつきを改善しましょう。
業務の改善には「コミュニケーションツール」や「工数管理ツール」がおすすめです。
生産性が高まれば工期短縮となりユーザー満足度が向上し、市場で生き残るための重要な経営戦略となります。

経営戦略5.オンラインセミナーの開催

工務店主催で開催するセミナーも、集客に効果的な経営戦略です。
住宅購入に関する顧客の悩みを解決するため、オンラインセミナーを開催するのもおすすめです。
顧客にとってもっとも大きな壁となる「お金」の問題。
「住宅ローンは組めるのか」「きちんとローンを返済できるのか」など、悩みをきちんと解決することが求められます。
セミナーでは信頼のおけるファイナンシャルプランナーにお願いして、プラン提示やフォローをしっかり行なってください。
顧客の不安を解消できれば、工務店の信頼感アップや成約率のアップに期待できます。

【まとめ】経営戦略をしっかり立てて課題を一つ一つクリアしよう

本記事では日本の厳しい経営状況と、新しい時代を生き抜く経営戦略5選についてお伝えしました。
経営戦略はWeb集客・DX化に力を注ぎ、旧態依然とした集客方法や業務から脱出する必要があります。
新たな経営戦略と並行してDXツールを活用し業務工率を見つめ直し、ムダのない人材起用も推し進めてください。