特定の担当者以外は、業務の流れや進捗を把握できていないことがある・・・
といったお悩みはありませんか?
実は、住宅業界は上記のような状況が起こりやすい業態でもあります!
工務店の経営者さんや営業担当者さんから、脱属人化を目指したいが具体的にどうすればよいのか、情報共有の助けになるツールの導入を検討しているなどのご相談が弊社によせられます。
同じような課題を感じている工務店さんの疑問・不安を少しでも解消し、業務の脱属人化に向けての一助になればと思い、今回の記事を作成致しました。
弊社は、1997年から25年以上システム開発を専門に業務効率化や生産性の向上、近年では脱属人化のお手伝いなど住宅・建設業界に限らず多くの企業をサポートしてきました。
工務店と共同でシステムを開発・運用している経験やノウハウ・実績をもとに、わたくし、DXサービス事業推進部 佐々木がこの機会に解説します。
属人化とは?

属人化とは、ある業務の手順や進捗状況などを特定の担当者しか把握しておらず、社内に情報が行き届いていない状況のことを指します。
業務の属人化が定着すると、人材に起因するリスクが高まっていきます。例えば、担当の変更や不在によりお施主様への対応が十分にできない、言った言わないなどの認識のズレが起きてしまうことが挙げられます。
企業全体としてではなく、個々人の力量に頼ることになるのです。
属人化の原因(工務店業務が属人化しやすい理由)
属人化が起こる原因として、以下の3つを挙げます。
- 業務の専門性が高いため
- 人手不足・業務量が多いため
- 情報共有のフローが整っていないため
住宅業界には、これらを課題としている工務店・住宅ビルダー様が多くいらっしゃるため、属人化に陥りやすい業界であると考えられます。
業務の専門性が高いため
専門性が必要な業務は、一般的に他者への教育に時間を要し、ハードルが高いです。そのため、属人化が起こりやすい傾向にあります。
一貫して同じ担当者が業務を進めることで、統一した品質を担保できるといった利点もあります。また、即戦力となる高い知識やスキルを持つ人材を雇用することは容易ではなく、コスト面の観点からも、既にスキルを持つ人材に頼ってしまうことが多いです。
結果として、業務担当者が熟練した技術を習得していく一方、他の社員がスキルを身につける機会を失ってしまいます。
人手不足・業務量が多いため
住宅業界全体として「人手不足」が慢性的な課題となっています。
これにより、一人当たりの業務量が増え自身の仕事に忙殺されているため、同僚や後輩に教育・共有を行っている時間がありません。そのため、担当している業務を誰かに託すことができず、自分で行うことになります。
結果として、属人化に拍車をかけ、業務が終わらないため労働時間が長くなっていくという悪循環を生み出すことになるのです。
知識や情報の共有には、教える側の時間的・体力的・精神的余裕がなくてはなりません。
脱属人化のためには、この負のループを断ち切る必要があるでしょう。
情報共有のフローが整っていないため
企業全体として、情報共有の仕組みが整っていないことも原因の一つです。
例えば、ファイルの保管場所やお施主様からの要望管理の仕組み・営業進捗報告など決まりがなければ、個人の裁量で管理することになります。
結果として、リアルタイムの情報共有の場はありません。都度、担当者に確認するのは手間だからと聞かずに終えてしまうのです。
また、情報・ノウハウ共有といった業務は、直接的な業績とは関わりが薄いため、後回しになる傾向が高いです。
人事評価の面でも、高い評価を得にくい傾向にあります。ノウハウ共有や社内教育にメリットを感じてもらいにくいことが、属人化に拍車をかけているとも考えられます。
そのため、社内制度や評価体制から見直していく必要があるかもしれません。
工務店業務の属人化デメリット
では、業務が属人化されることによって、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

工務店業務の属人化デメリット①:担当者の負担が大きくなる・業務が滞る
属人化のデメリットの一つ目は、担当者の負担が大きくなる・業務が滞ることです。
「業務が属人化している=代わりがいない」と捉えることができます。
特定の担当者のみが具体的な業務内容を把握している場合、その業務は必然的にその担当者が遂行するという状況になります。つまり、業務がどんなに溜まっていても誰かに託すことができず、負担が膨らんでいくのです。
また、担当者が休暇を取得した場合には、対応漏れや遅延が起こりえます。
他の担当者が同様のクオリティで業務ができないため、お施主様や協力会社に迷惑をかけるリスクがあるのです。
工務店業務の属人化デメリット②:ナレッジが共有されない
属人化のデメリットの二つ目は、ナレッジが蓄積されないことです。
ナレッジとは、Knowledgeをカタカナ表記した和製英語で、一般的に知識や知見、情報を意味します。一方、ビジネスシーンでは、企業などの組織にとって有益な知識・経験・事例・ノウハウなど付加価値のある情報のことを指します。
社員が業務上で得た知識やノウハウは、個人の中に蓄積されていきます。例えば、「このお施主様は夕方の方が連絡を取りやすい」「トラブルを防ぐには、写真や図面を使って口頭だけでなく履歴にも残すべきだ」等、経験を重ねていくことで得るコツがあるでしょう。培ったその知識をまた業務(経験)の中で活かしていくことで知識はさらに深まり、新たなナレッジへと変化を遂げます。そのサイクルが繰り返されることで、個人の中に自然とナレッジが蓄積されます。
しかし、この業務が属人化状態である場合、他の担当者がその情報を知るすべがないため、そのナレッジが有効活用されることはなく個々人の中にとどまってしまうのです。
工務店業務の属人化デメリット③:人的ミスや不正に気付かない
属人化のデメリットの三つ目は、人的ミスや不正に気付かないことです。
担当者以外は、業務状況を把握できていないため、ミスや不正があっても上司・先輩・同僚がフォローできない場合があります。
トラブルは、信頼に関わります。素早い対応が期待されます。
信頼を築くのは大変ですが、失うのは一瞬です。
また、前述したように属人化の業務には、自分の代わりとなる担当者がいません。
他に知識や経験のある人材がいないのであれば、多少のミスはごまかせると考える人がいてもおかしくないのです。
工務店業務の属人化デメリット④:社内の風通しが悪くなる
属人化のデメリットの四つ目は、社内の風通しが悪くなることです。
同様の業務を行う担当者が複数人いる場合、そこには必ずコミュニケーションが生まれます。しかし、業務が属人化した状態では横のつながりが希薄になる可能性が高いです。
なぜなら、情報を共有する必要がないからです。個人で業務を把握していればそれで良いという社風では、改善に向けた意見や新しい業務に挑戦したいという声も出にくくなってしまいます。
また、自身の裁量で業務を進めることができるため、その方がよいと考える人もいるでしょう。
工務店業務の属人化デメリット⑤:正当な評価を得られない
属人化のデメリットの五つ目は、正当な評価を得られないことです。
属人化の状態では、上司が業務内容を正しく把握できません。そのため、どのように業務を進めているのか、どのような成長が見られたのかなどの判断ができず、適切な評価を得られません。
また、評価基準も曖昧になるため、主観での評価となってしまいます。
これらは、社員の不満にも繋がり、モティベーションが低下してしまいます。
【脱属人化】工務店業務の属人化を解消するメリット

【脱属人化】工務店業務の属人化を解消するメリット①:業務の質・生産性が向上する
脱属人化による業務の質の向上が期待できます。
個々が蓄積してきたナレッジを全社員で共有できるようになれば、個人ではなく組織にナレッジが蓄積されていきます。これらを更に各々が経験に活かすことで新しいナレッジが生まれます。十人十色の気づきが生まれ、変化が生まれます。
これらをまた共有するというサイクルを繰り返すことで、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
脱属人化は、特定の担当者でなく、個々の能力の底上げにつながります。結果的に、組織全体としての業務の質・生産性が向上していくのです。
【脱属人化】工務店業務の属人化を解消するメリット②:ミス削減・対応が速くなる
脱属人化とは、会社全体・部署・チームごとに業務状況の確認できる状態であるといえます。そのため、ミスや不備があった時に気づきやすく、それに対するリカバリーにも素早く対応できます。
また、事前に相談・報告・連絡がしやすい状況を作ることができるため、事前にミスを防ぐことができます。担当者が休暇などを取得し他の社員が代理で対応する場合でも、対応遅延・認識のズレといったトラブルが起きにくくなります。
【脱属人化】工務店業務の属人化を解消する③:マネジメントがしやすくなる
マネジメントの目線で見ると、進捗状況が見える化されるため管理がしやすくなります。
本人に毎度確認する手間が省けるため、上司や先輩側からアドバイスやフォローを促すことができます。今どのあたりまで話が進んでいるのだろう、問題はないかなといった心配事が減るため、より自身の仕事にも集中できるようになるでしょう。
また、若手社員側の目線で見ても、一人で担当していた業務を上司・先輩に確認しながら、仕事を進めることができるため、安心感があります。情報やコツを共有してもらいながら業務を進めることで成長スピードが速まり、業務の効率化が期待できます。
【脱属人化】工務店業務の属人化を解消する④:社内の風通しが良くなる
社員間での情報共有・状況確認が活発になり、コミュニケーションが生まれます。横のつながりが強くなることで、アドバイスや質問をしやすい環境を作ることができます。
また、一人では気づくことができなかった改善に向けた意見や新しい業務に挑戦したいという声が上がりやすくなることが期待できます。
脱属人化は責任を分散させることに繋がり、一人当たりにかかる負担が減るので、労働環境の改善にもつながります。
【脱属人化】工務店業務の属人化を解消する方法
属人化の対義語は、標準化です。
一般的にある業務を特定の担当者に依存することがなく、全ての社員が把握・再現できるような状態にすることを意味します。

社内制度や業務の見える化をする
まず、初めに取り組むべきことは、属人化している業務の洗い出しです。
担当者にヒアリングしながら、1つ1つ業務プロセスを書き出すことで業務フロー全体を客観視できます。細かいタスクの部分まで可視化することで、どの部分が属人化に繋がっているかを把握することができます。
- 業務の目的
- 業務の手順
- ナレッジ(知見・ノウハウなど)
- ファイルの保管場所
- 成果物の水準
などを可視化することで、後の改善作業がスムーズに行えます。
あくまでも、初心者に教育するつもりで細かく情報を整理していく必要があります。
業務フローを見直し、仕事の責任を分散させる
複雑化してしまった業務を整理し、余計な作業を省くことでシンプルな業務フローへの改善を目指します。手順をフローチャートへ落としていく段階で、本当に必要な作業なのか検討していくことで標準化しやすくなります。
また、仕事の責任が特定の人物に偏っていないかを合わせて見直す必要があります。
責任の分散をすることで、若手社員のモティベーション向上も期待できます。
業務フロー・情報共有を標準化する
業務の属人化を解消するには、業務の進め方を記載したマニュアルの作成が必要です。マニュアルは誰が担当しても一定水準以上の業務を行えるよう、手順の詳細を書くだけでなく、ナレッジやファイル保管のルールなども書いておくといいでしょう。
しかし、初めから網羅的な情報を記載したマニュアルを作成することには、かなりの時間と労力がかかります。
見直した業務フローを基に、まずはシンプルにを心がけてみてください。
マニュアル作成の基準は、初めて見た人でも一定の品質が保てるようにすることです。
改善点・ルールを社内に浸透させる
業務の標準化を終えたら、それらを社内に浸透させていく必要があります。
まずは、誰でもその情報にアクセスできるプラットフォーム(環境)を整える必要があります。情報共有のためのツールを検討する等、なるべく負担にならない手段を選ぶことがポイントです。ハードルを下げること、これが改善に向けた取り組みには重要なポイントです。
初めはどうしてもトップダウンでの始動になる傾向にあります。企業目線のメリットだけでなく、社員目線でのメリットを伝え積極的に取り入れてもらう制度や仕組みを整えていくことが、重要となってきます。
工務店業務の脱属人化のポイント・注意点

業務の仕組みはできるだけシンプルにする
標準化を図るときには、できるだけシンプルな仕組みを確立していくことがポイントです。
業務フローの複雑化した部分を削り、可能な限り簡素化させます。今の業務をそのまま引き継ぐという考えではなく、業務をより効率化できないかを念頭に脱属人化を進めていくことで、根本的な課題解決に繋がります。
初めの段階から厳しいルールを作り、完璧なマニュアルを構築する必要はありません。実際に担当する現場の声を取り入れながら、少しずつプラッシュアップさせていけば良いのです。
PDCAサイクルを回す
属人化解消のための取り組みは一度実施すれば終わりではなく、PDCAサイクルを回していくことが不可欠です。
可視化された課題に対する計画(Plan)を実践してみて(Do)どうだったか、検証(Check)し、次に必要な改善(Action)へと繋げていきます。これらを繰り返すことで、より精度の高い標準化が進み、属人化が解消されていきます。
見直しをせず放置をしていると、新たな属人化が生じます。例えば、マニュアルやノウハウなどの情報は、方針転換や細かなルール変更により、情報が古くなってしまうことがあります。
そのため、定期的に見直す機会を設け、日々情報をアップデートする必要があるのです。
システム・ツールを導入する
脱属人化を進めていく上では、ITツールの活用することも重要になってきます。
脱属人化に向けた取り組みの中で最も難しいのは、ナレッジ(知見・ノウハウなど)の共有です。各個人が業務上で得た知識や経験、ノウハウなどの付加価値を持つ情報を、誰でも自由にアクセス可能な状態にする必要があります。
とはいえ、一から仕組みを構築しようとすると時間的・体力的にも負担が大きくなります。
そこで、ITツールなどで時間短縮を図りながら、労力のかけどころを調整していくことで、集中できるようになるでしょう。繰り返しになりますが、初めはハードルを下げることが社内に浸透させるためのポイントです。
ツールを選定する際の基準としては、できるだけ業態・業務フローに沿いながら情報共有できる仕組みであることが望ましいです。
情報共有ツールの助けを借りながら、属人化解消に向けた取り組みを試みてはいかがでしょうか。
工務店業務の脱属人化に役立つオススメツール3選
ナレッジ(知見・ノウハウなど)、図面やファイルなどの共有に役立つ情報共有ツールを3つ紹介します。

MEGA|Mega Limited
MEGAとは、データをオンライン上に保管・管理・共有できるクラウドストレージです。
大容量のファイルやフォルダをアップロードできることが特徴で、個別の連絡先を登録することでチャットやオンラインミーティングを実施することも可能です。共有ファイルへのアクセス権限を制限することができるため、お施主様や協力会社様との共有時にも便利です。
料金:ビジネス版(最小ユーザー数3名・3TBの基本ストレージ・転送 ):月額 ¥2,242※ ~
ユーロレートにより変動あり
Chatwork|Chatwork株式会社
Chatworkとは、メール・電話・会議に代わるビジネスチャットツールです。Chartworkユーザーであれば、社内外のメンバーとメッセージのやり取りをスムーズに行うことができます。グループを作成することでチーム・案件ごとなど、複数人での会話を進めることが可能です。ワード・エクセルなどのオフィスファイルや画像ファイルなどをアップロードでき、データは一覧で閲覧できます。
料金:ビジネス版(年間契約):月額¥500 / 1D ~
plantable|株式会社エフ・ディー・シー
plantableとは、お施主様との新しいコミュニケーションの形を提供する工務店のためのコミュニケーションアプリです。住宅業界・工務店特化のアプリで、お施主様ごとの情報・進捗状況を一覧で確認でき、工務店全体の現状をリアルタイムで把握できます。
また、お施主様とのやり取りは全社員と共有されます。別途、保存場所を用意する必要がなく、plantableでやり取りを行うことで、自然とナレッジや図面などの共有ができることが特徴です。
料金:(最小ユーザー数5名)月額 ¥30,000 ~
【脱属人化】属人化解消の成功事例
社員同士・お施主様間の情報共有をスムーズに
鳥取県を基盤とした工務店「株式会社ホームズ」の事例です。
スタッフ・お施主様の間の情報共有・打ち合わせや要望の記録方法を課題に感じ、「つながる家づくり-plantable-」を導入しています。
お施主様とのチャット内容を一つのプラットフォームに記録として残し、全社員と共有できるようになったことで、打ち合わせがスムーズになっています。営業、設計、コーディネーター、工務がそれぞれの必要な情報をいつでも確認しやすくなったことで、業務時間の短縮に成功しました。
まとめ【工務店の業務は属人化しやすい!?脱属人化を図る方法を徹底解説】
いかがでしょうか。
脱属人化を図るためのポイントをまとめます。
- 業務を可視化し課題を洗い出し、業務フローをできるだけシンプルにする
- PDCAサイクルを回し、より精度の高い標準化を目指す
- デメリデジタルツールの導入で、情報共有できる仕組みをつくる
脱属人化のためには、多少時間を要しますが、デジタルツールなどをうまく活用することで、効率よく進めていくことが期待できるでしょう。
弊社工務店、住宅メーカー向けコミュニケーションアプリ『つながる家づくり-plantable- 』は、社員同士・お施主様間の情報共有・コミュニケーションの全てを1つのプラットフォームに集約しているため、別途仕組み作りをする必要がありません。資料をご確認ください。