企業における経営リソースのなかで、ヒトを効果的に活用できれば経営を大きく後押しできます。
今回は生産性の向上や早期離職の防止、人材育成にも欠かせない「要員計画」について、この記事ではITエンジニアを200名以上抱え、日々エンジニアの要員管理を25年以上経験してきて効率化し、要員管理ツールを開発・運用している弊社、DXサービス事業推進部 佐々木舞美が解説します。
人員計画との違いに管理方法、要員計画表の作り方まで、採用活動や人事異動に関する悩みを解決する内容です。
要員計画の定義

要員計画とは事業計画を遂行するため、必要な人員計画を立てることです。
経営リソースの「ヒト・カネ・モノ・情報」のうち、ヒトを管理するための計画になります。
ヒトに関する計画は、以下の通りです。
- 人材採用計画
- 人材配置計画
- 人事異動
- 能力開発計画
要員計画では人材戦略を明確にした後に、人員数や人件費の予測・計画を行います。
具体的には、以下のような内容を検討します。
「従業員だけか、もしくは業務委託も含めるか」
「人事異動で補えるか否か」
「既存の人材をいつまでに、どのように育成するか」
要員計画は人員数だけでなく、さまざまな観点からベストな人員を策定することが重要です。

要員計画と人員計画・採用計画との違い
要員計画と人員計画の違い
要員計画と人員計画は同義語として扱われることもありますが、厳密には内容が違います。
要員計画 | 事業計画に対して「何人必要か」という「量」を重視する考え方 |
人員計画 | 事業計画に対して「どのような人材が必要か」といった「質」を重視する考え方 |
人員計画は要員計画を決めた後で検討する流れとなり、人員計画は要員計画の中枢に位置します。
要員計画と採用計画の違い
採用計画とは経営方針や事業計画をもとに、採用に関するプランを立案することです。
採用計画では次の項目について具体的に策定していきます。
- 採用人数
- 選考方法(どのように採用するか)
- 採用要件(どのような人員を採用するか)
- 人件費
- 採用スケジュール
採用人数の決定方法は、部門ごとに必要人員を積算する「積み上げ方式」と、総額人件費や事業計画から必要人員を算出する「総枠方式」があります。
なお、採用計画は要員計画と人員計画を踏まえたうえで策定するのが一般的です。
要員計画を立てる目的

生産性の向上
要員計画は適材適所の人員配置をすることで、生産性が向上します。
業務遂行に必要なスキルや実績の保有者、人数もわかることから、業務を効率的に進められます。
また、人員過多・人員不足問題を解消してムダを削除できるのもメリットです。
自身の強みや特性、要望を活かした人員配置は、業務スピードや成果物のクオリティアップに期待できます。
早期離職の防止
要員計画を立てる二つ目の目的は、早期離職の防止です。
経営層や人事部が判断した人員選出では「業務に必要なスキルを保有していなかった」「スキルを業務に活かしきれていない」という問題が起こりがちです。
要員計画は人員のミスマッチを防いで早期離職を防止し、採用コスト削減も実現します。
人員数を算出する2つの方法

要員計画において、従業員の過不足を把握する方法に「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」の2種類があります。
トップダウン方式
トップダウン方式とは経営戦略や利益計画をもとに、適正な人員数を導き出す方法です。
トップダウン方式では次の指標を参考にして、総額人件費として許容できる人員数を算出します。
- 売上高
- 付加価値
- 損益分岐点
- 労働分配率
- 人件費率
トップダウン方式の方程式は以下の通りです。
必要な人員数=(売上高×付加価値率×労働分配率)÷1人あたりの人件費 |
または
必要な人員数=(目標売上高×適正人件費率)÷1人あたりの人件費 |
人件費と採算を考慮して人員を補填するため、予算オーバーになりにくく目標利益をきちんと算出できるのがメリットです。
ボトムアップ方式
ボトムアップ方式は、各部署の業務量をもとに必要な人員数を導き出す方法です。
まずは現場の実態を把握するために、以下の要素について正確なヒアリングを行います。
- 業務内容
- 生産性
- 労働時間
- 人員配置の問題点
ボトムアップ方式の方程式は次のようになります。
必要な人員数=総業務量÷(1人あたりの標準業務量×所定労働時間) |
すべての要望に応えようとすると、人件費が余計にかさんだり予算がオーバーしたりするため、注意が必要です。
トップダウン方式とボトムダウン方式はどちらか一方ではなく、両者をうまく活用し自社に落とし込むことが重要です。
要員計画を策定する4つの流れ

ここでは、実際に要員計画の作り方について説明します。
- 現状把握
- 要員調査
- 要員の調整
- 要員計画の決定と実施
まずは部署や事業所ごとに人員数やスキル、組織での役割といった現状について把握します。
このときタレントマネジメントシステムやスキルマップを採用すると、一箇所にわかりやすく管理できるので便利です。
続いて、各部署にヒアリングを行い自社に必要な要員を調査します。
人員の過不足を調査する際は「トップダウン方式」と「ボトムアップ方式」がおすすめです。
要員は「新卒採用を行うか、中途採用を行うか」など、経営計画に沿って具体的に調査してください。
要員調整は現場と経営層からヒアリングした結果に加え、短期的ではなく中長期的な視点で調整するのがポイントです。
次に調整した要員数を踏まえて「要員計画書」を作成しましょう。
要員計画書は記載漏れやミスを防げる点から、テンプレートの利用をおすすめします。
インターネット上にはフリーテンプレートが存在し種類も豊富なので、自社に合ったものを探してみてください。
要員計画を策定したら、実際に運用開始です。
人員計画の事例(日本マイクロソフト株式会社)
日本マイクロソフト株式会社は、要員計画に力を入れている組織のひとつです。
中長期的な要員計画やKPIではなく、毎年の戦略に基づいて全ポジションの必要性を分析し、人材の再配置を実施しています。
要員計画における年間スケジュール概要は、以下の通りです。
3月上旬 | 次年度の戦略やビジネスのプライオリティ、具体的な目標・課題・実行プランをグローバルで議論する |
5月上旬 | 各国の役員が集結し、各国の事業戦略や人員数の概算値、全体像を議論する |
5月下旬 | 具体的な日本の人員数を日本と本社間で確定する |
6月下旬 | 現社員で補填できるポジション、外部採用で補填すべきポジションを明確化する |
7〜9月 | 社内のオープンポジションに関しては、社内公募制で従業員をマッチングする |
人員構成の多様化が進むなか、求心力・一体感を担保する仕組みとして、会社共通の価値観を非常に重視しています。
なお、同社は2023年1月から、社員の5%にあたる約1万人の人員削減に着手しています。
残酷ですが、時代の流れを読んで戦略的な要員計画を行っていることが伺い知れます。
人員計画の策定に役立つおすすめサービス3選
ようかん
『ようかん』はSES事業者における要員稼働や売上といった情報を、クラウド上で一元管理するサービスです。
要員の稼働状況をリアルタイムで可視化できますし、モバイル対応でいつでもどこでも入力と編集が可能です。
売上は、部署・取引先・プロジェクト・達成率などの条件設定により、あらゆる角度から分析できます。
料金プラン | |
月額費用 | 7,000円/ユーザー |
初期費用 | 30,000円〜 |
カオナビ
導入企業数は約3,300社以上、8年連続でシェア1位を獲得するタレントマネジメントシステムです。
人材ポートフォリオから戦略的育成プランを策定するだけでなく、社員の気持ちをデータとして分析し人事と現場との連携をフォローします。
人員配置シミュレーションでは人件費やスキル値などを可視化し、人員計画の進捗をダッシュボードで簡単に把握できます。
料金プラン | |
ストラテジープラン | 要問い合わせ |
パフォーマンスプラン | 要問い合わせ |
データベースプラン | 要問い合わせ |
fapi
『fapi』はスキル・アサイン管理をリアルタイムで可視化して、提案スピード向上につなげるクラウドツールです。
エクセル形式で出力できる業務経歴書は、フォーマットが統一されているため提案時に形式を整える手間がありません。
要員の検索時間の短縮、スキルシートの自動更新機能によって、受注確度の向上に寄与します。
料金プラン | |
ミニマム | 300円/月・人 |
スタンダード | 400円/月・人 |
プレミアム | 800円/月・人 |
まとめ
この記事では、事業計画の達成に欠かせない「要員計画」について解説しました。
要員計画が重要な理由から管理方法、要員計画書の書き方まで、一連の知識について学べたかと思います。
バラバラになっている社員情報を一箇所にまとめるには、要員管理ツールをおすすめします。
事業計画に必要なスキルや業務経験などを明らかにして、要員計画の策定に役立ててください。