建設業界の入金サイクルは複雑で、資金繰りの悪化や倒産・破産が起きやすいといわれています。
このページでは工務店が倒産を選択する理由や、経営における課題について解説します。
工務店が黒字倒産する理由や、倒産・破産を防ぐための対応策も見ていきましょう。
工務店・ハウスメーカーが倒産を選択する理由

工務店・ハウスメーカーが倒産する理由は、いくつか考えられます。
帝国データバンクの「全国企業倒産集計2023年報」によると、2023年に発生した建設業者の倒産件数は1,671件でした。
前年比で38.8%と急増しており、コロナ禍前の2019年(1,414件)を上回っています。
深刻な資材高騰や人手不足に伴う建設コストの上昇が原因で、ほかの業種の増加率と比較しても一番増加した結果になりました。
ここから、工務店・ハウスメーカーが倒産する理由について、詳しく見ていきましょう。
着工数の減少
工務店が倒産を選択する理由の1つ目が、着工数の減少です。
国土交通省の「建築着工統計調査報告」によると、2024年1月の新設住宅着工戸数は58,849戸でした。
前年同月比で7.5%減となり、8ヵ月連続の減少です。
近年は中古住宅や空き家を活用する動きが活発化しており、住宅のリノベーションに対する補助事業も増えています。
与信力の低下と資金繰りの悪化
ウッドショックや半導体不足の影響で、受注している工事を進められない工務店が増加しました。
その結果、資金繰りの悪化と与信力が低下して倒産に追い込まれるケースがあります。
与信力が低いと、資材の発注を依頼しても拒否されることがあります。
「住宅が完成できず入金がない」「発注している部材費を支払えない」といった問題が起こり、黒字倒産や破産につながるのです。
利益の減少
受注契約済みに関しては、ウッドショックなどで建築費が増大しても、途中から増額請求することは難しいです。
原価上昇分を売価に反映できなければ、利益が減少して工務店の経営は困難となります。
人材不足
工務店が倒産を選択する理由の4つ目が、人材不足です。
建設業は全業界の中でもっとも高齢化が進んでいて、若年層の人材不足が深刻化しています。
これから団塊世代の職人が大量に引退したら、人材不足がさらに加速することが想像できるでしょう。
また、多くの情報に囲まれて育った若手には、座学やOJTによる育成がマッチしており、育成に時間がかかるという問題もあります。
後継者不足
後継者がいなければ、たとえ経営が波に乗っていても事業を畳まなければなりません。
帝国データバンクの発表によると、2023年の全業種の後継者不在率は過去最低の53.9%でした。
出典:全国「後継者不在率」動向調査(2023年)|帝国データバンク
ファミリー経営が厳しいと感じる工務店経営者の方は、第三者への事業引き継ぎも検討してみてください。
工務店経営の重要な課題

ウッドショックの影響
2021年3月頃から続くウッドショックは、工務店経営に大きな影響をもたらしました。
コロナ禍の労働力不足による輸送遅延や輸送費の高騰、オーストリアの輸出規制などが重なり、木材価格は大幅に高騰しています。
コロナ禍は徐々に落ち着きを見せていますが、木材価格が元通りになるにはまだ時間がかかりそうです。
資材不足による影響
新型コロナウイルスが流行した2020年頃から、リモートワークが普及してアメリカ・中国を中心に新築住宅が急増しました。
他にもロシア・ウクライナ戦争による資材不足で、着工を延期せざるを得ない工務店が増えています。
工事計画が滞っても人件費などの経費はかかるため、住宅の引き渡しが遅れるほどに資金繰りは厳しくなっていきます。
資材高騰による影響
ウッドショックの影響を受けて、資材価格が高騰しています。
しかしながら、すでに建築中の顧客に対して増額請求するのは、難しいのが現状です。
また、相談中や商談中の見込み客に資材高騰分を売価反映すると、顧客離れのリスクがあります。
資材高騰は工務店にとって、経営危機に追い込まれるほどの難しい選択を迫ってきます。
人材不足
建設業界は職人の高齢化や若者不足、後継者不足と、常に人材不足に悩まされています。
国土交通省「建設産業の現状と課題(2023年)」によると、29歳以下の従業員の割合は全産業の16.4%に対して、建設業はわずか11.7%しかいません。
これから団塊世代の職人が大量に退職すると、人材不足で倒産する工務店が増える恐れがあります。
国土交通省と日本経団連が唱えた新3Kを皮切りに、工務店への人材定着が望まれます。
黒字倒産とは?

倒産する建設業者のうち、およそ半数は黒字倒産といわれています。
工務店の黒字倒産とは、帳簿上は黒字にもかかわらず経営が破綻することです。
工務店が黒字倒産する主な原因は、以下の4つです。
- ウッドショック
- 半導体不足
- 資金不足
- 人材不足
工務店が黒字倒産するもっとも大きな原因となるのが、資金繰りの悪化です。
その理由は工務店をはじめとする、建設業界の入金サイクルの複雑さにあります。
- 契約時の着手金
- 中間時の中間金
- 引き渡し時の残金
建築途中の件数が多いと経費がかさみますし、債務を自社で返済できずに金融機関から借り入れもできなければ、資金ショートが起こるのです。
建設会社が倒産・破産を防ぐために取り組むべき対策

キャッシュフローを最低でも3ヶ月先まで把握
工務店の倒産・破産を防ぐためにも、キャッシュフローは最低でも3ヶ月先まで把握しましょう。
どんぶり勘定で実態との乖離がある場合は、管理方法を改める必要があります。
受注後の物件は、ある程度の見込みが付けられる段階でフローに組み込んでおくことで、突然の資金ショートを防げます。
資金繰り表で3ヶ月先のリスクを把握して、金融機関に相談したりファクタリングを利用したりするなどの、対策を行いましょう。
入金スケジュールの把握・管理
入金予定を管理できるアプリを使って、2、3ヶ月先までの入金スケジュールを把握・管理します。
同時に、顧客に対して期日通りに入金を促すことも大切です。
アプリに入金予定日を登録しておけば、どの顧客が予定に対して未入金であるかを一目で確認できます。
一物件ごとの予算と実行差異の確認
予算と実績に大きな差異があると、工務店の利益が予測できません。
営業や現場、財務など部門ごとに分析をすることで、課題が見つかりやすくなります。
また、リアルタイムで予実管理を実施して、差異が大きくなる前に修正することも重要です。
業務の効率化
工務店の倒産を防ぐ対策として、業務の効率化は欠かせません。
工務店では2024年4月から働き方改革が始まり、社員の残業や休日出勤に頼りにくい状況といえます。
業務のムダ・ムリ・ムラを少しでも減らすために、システムの導入や自動化を検討するのも良いでしょう。
例えば現場状況を共有できるアプリならば、自宅にいながら進捗を確認したり指示を出したりできます。
業務負荷の大きい部署や職種を把握する
業務負荷の大きい部署や職種を把握できれば、それぞれの課題や問題点の対策を見出せます。
実際に、部署や現場の状況を把握しきれていないという工務店経営者の方も、多いかもしれません。
工務店の課題や問題点を浮き彫りにして、いかに少ない人数で業務を行えるか検討してみてください。

工務店経営をクラウドサービスで課題解決

工務店の経営をサポートするツールの1つに、クラウドサービスがあります。
例えば顧客管理や進捗管理、予実管理などを一本化して、業務効率を飛躍的に高めることができます。
工務店の倒産・破産を少しでも防ぐために、デジタルの力を借りることを検討してみても良いでしょう。
業務効率化・人材不足をカバーできる打ち合わせ効率化アプリ【つながる家づくり‐plantable‐】とは?

plantableは工務店と顧客間で、図面共有・情報交換をして打ち合わせを効率化できるアプリです。
「次の打ち合わせまで結論が出ない」「早めに発注をかけたい」という経験は、きっとあるはずです。
plantableでは図面にコメントを残して、要望や問題点といった情報を簡単に共有できます。
打ち合わせ回数はもちろん、打ち合わせ時間や準備時間の短縮にもつながるので、業務工数を減らしたり人材不足をカバーできたりします。
設計や見積もりを考える時間を増やせるので、より充実した提案を行いたいという方にもおすすめです。
まとめ
工務店は、つなぎ出費が長期間におよぶことがあるため、黒字倒産が起きやすいです。
そのため収支状況をリアルタイムで把握して、長期的な資金繰り計画を立てることが重要です。
工務店の倒産リスクを少しでも抑えたい方は、業務効率化・人材不足をカバーできる「plantable」を検討してみてください。