ITエンジニアや社員のスキル管理ツールfapi(ファピー)を提供する株式会社エフ・ディー・シーのDXサービス事業推進部 佐々木舞美が、要員管理で使う人件費と必要人数の計算方法を解説します。200名以上のITエンジニアのスキル管理・アサイン管理を25年以上行ってきた経験をもとに、実務でそのまま使える形に整理しました。
「人件費は利益の何パーセントまでなら健全なのか」「来期は何人まで採用できるのか」。要員管理の計算で先に人数を決めてしまうと、人件費が利益を圧迫しやすくなります。この記事では、人件費をどの指標と比べるべきか、必要人数を逆算する計算式と計算例、見落としやすい費目までを順番に整理します。
人件費は利益の何パーセント?結論は「利益ではなく付加価値と粗利で見る」

結論からいうと、人件費を「利益の何パーセントにすべきか」に一律の正解はありません。実務では営業利益ではなく、売上高・売上総利益(粗利)・付加価値のいずれかを分母にした比率で人件費の水準を判断します。
| 指標 | 計算式 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 売上高人件費率 | 人件費 ÷ 売上高 × 100 | 売上に対して人件費が重すぎないかを大まかに確認する |
| 売上総利益人件費率 | 人件費 ÷ 売上総利益 × 100 | 粗利の中で人件費をどこまで負担できるかを見る |
| 労働分配率 | 人件費 ÷ 付加価値 × 100 | 生み出した価値のうち人件費に回した割合を見る。業種比較に向く |
要員管理の計算で迷ったら、まず売上総利益人件費率で採算を確認し、次に労働分配率で還元水準を確かめる流れが実務的です。売上高だけを基準にすると、外注費や仕入れの比率が高い業種ほど人件費率が低く見え、原価構造の違いが隠れてしまいます。
労働分配率は、中小企業庁が「企業が生み出した付加価値額のうち、どれだけが労働者に分配されているかを表す指標」と定義しています。人件費の範囲は、財務省の法人企業統計では「役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費」です。他社や統計と比較するときは、この集計範囲をそろえてください。
出典:中小企業庁「2020年版 中小企業白書」第2部第1章第1節/財務省「法人企業統計調査 年次別調査(令和6年度)」
人件費率の目安は業種で大きく変わる
売上高人件費率は、情報通信業や専門・技術サービス業のように人が価値を生む労働集約型の業種ほど高く、卸売業や製造業のように仕入れや設備の比率が大きい業種ほど低くなります。同じ「人件費率20%」でも、業種が違えば意味はまったく異なります。
自社の水準を判断するときは、中小企業庁が毎年公表する「中小企業実態基本調査」で同業種の平均を確認し、業界平均そのものより自社の比率が数年でどう推移しているかを重視してください。
要員管理の計算に使う2つの方式

必要人数の計算方法は、人件費の上限から逆算する「トップダウン方式」と、現場の業務量から積み上げる「ボトムアップ方式」の2つに分かれます。
| 方式 | 計算式 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| トップダウン方式 | (売上高 × 付加価値率 × 労働分配率)÷ 1人あたり年間人件費 | 人件費予算を守りやすく、目標利益を確保しやすい | 現場の業務量と乖離し、人員不足になることがある |
| ボトムアップ方式 | 総業務量(時間)÷ 1人あたり年間所定労働時間 | 現場の実態に即した人数を出せる | 部署ごとに多めに見積もりやすく、人件費が膨らみやすい |
ボトムアップ方式の計算例を挙げると、年間の総業務量が40,000時間、1人あたりの年間所定労働時間が2,000時間なら、必要人数は40,000 ÷ 2,000 = 20人です。業務量の見積もりが甘いと人数が膨らむため、部署ごとの申告値は必ず実績と突き合わせます。
実務では、トップダウン方式で出した「上限」とボトムアップ方式で出した「必要数」を突き合わせ、差分を業務効率化・配置転換・採用・外注のどれで埋めるかを決めます。この記事では、人件費と利益の関係が見えやすいトップダウン方式を中心に計算手順を解説します。
人件費から必要人数を逆算する計算手順【計算例つき】

①1人あたりの年間人件費を出す
まず、要員を1人増やしたときに年間でいくらかかるかを把握します。計算式は「年間給与+賞与+法定福利費+各種手当+採用費の按分+教育費の按分」です。
採用費や研修費を別勘定にしている会社でも、要員管理の計算では実質コストとして合算しておくと、採用後の負担を見誤りにくくなります。
②人件費に使える総額(許容人件費)を決める
次に、目標とする売上総利益から「残したい利益」と「人件費以外の固定費」を差し引き、人件費に充てられる総額を決めます。労働分配率を使う場合は「付加価値 × 目標労働分配率」で求めます。
③必要人数を逆算する
最後に「許容人件費総額 ÷ 1人あたり年間人件費」で必要人数の上限を求めます。
【計算例】売上高5億円、付加価値率50%、目標労働分配率60%、1人あたり年間人件費600万円の場合
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 付加価値を求める | 5億円 × 50% | 2.5億円 |
| 許容人件費総額を求める | 2.5億円 × 60% | 1.5億円 |
| 必要人数を求める | 1.5億円 ÷ 600万円 | 25人 |
この25人が「利益計画を守れる人数の上限」です。ここにボトムアップ方式で出した必要数を重ね、上限を超える分は業務効率化や外注で吸収できないかを検討します。
計算から漏れやすい人件費の項目

計算上は利益が出るように見えても、次の費目を落とすと実際の人件費は膨らみます。要員管理の計算では、月額給与のフル稼働前提ではなく、年間総額と稼働率のぶれを織り込んでください。
| 費目 | 見落としやすい理由 | 要員計画での扱い |
|---|---|---|
| 賞与 | 月額給与だけで見積もりやすい | 年間総額で反映する |
| 法定福利費 | 給与と別集計になりやすい | 1人あたりコストに合算する |
| 採用費 | 人事予算として分離されやすい | 採用人数で按分して加える |
| 教育費 | 育成部門の予算に埋もれやすい | 立ち上がり期間の投資として含める |
| 待機コスト | 稼働率の計画が甘いと見えにくい | 低稼働の想定月を入れて保守的に置く |
とくにSESや受託開発では、案件の切れ目に発生する待機と、配属後の立ち上がり教育が利益計画とのずれを生む最大の要因です。たとえば年間人件費600万円のエンジニアが2か月待機すると、それだけで約100万円が売上に結びつかない人件費になります。
要員管理の計算精度を上げる3つのポイント

人数ではなくスキル単位で見る
同じ25人でも、上流工程に強い人材が足りないのか、保守運用の要員が不足しているのかで打ち手は変わります。人数の計算とあわせて、職種・スキル・配属時期まで落とし込むことで、採用・育成・再配置のどれで埋めるかを判断できます。
3パターンで試算し、月次で見直す
売上と稼働率を「強気・標準・保守」の3パターンで置くと、採用上限のぶれ幅が見えます。年度初めに1本の計画を作って終わりにせず、受注の増減や退職、単価改定が起きるたびに許容人件費と配置計画を月次で更新してください。
案件・スキル・稼働を同じ基準で管理する
利益計画に合う人数を出せても、案件に適切な人材を割り当てられなければ収益化は進みません。案件情報、保有スキル、現在の稼働状況を同じ画面で見られる状態にしておくと、計算結果をそのまま配置に落とし込めます。
まとめ
人件費を利益の何パーセントにするかは業種や原価構造で変わるため、一律には決められません。要員管理の計算では、売上総利益人件費率で採算を見たうえで労働分配率で配分の妥当性を確認し、「許容人件費総額 ÷ 1人あたり年間人件費」で必要人数の上限を出す流れが実務で使いやすい考え方です。
採用費・教育費・待機コストまで含めて計算すれば、人数計画と利益計画のずれを小さくできます。算出した人数を実際の案件に配置していく段階では、スキルと稼働状況を一元管理できるアサイン管理ツールの活用が有効です。選び方と主要ツールの比較は以下の記事で解説しています。
要員計画の算出方法・人件費に関するよくある質問(FAQ)
- Q要員計画と人員計画の違いは何ですか?
- A
策定する「目的」とフォーカスする視点が異なります。要員計画は事業計画の達成に必要な「量(何人必要か)」を重視して決定するのに対し、人員計画は要員計画をもとにどのような人材を採用・配置するかという「質(どんな人材が必要か)」を計画します。
- Q要員数や適正人員数を算出・計算する方法にはどのような種類がありますか?
- A
主に経営戦略や目標利益から必要な人員を導く「トップダウン方式」と、各現場の業務量から求める「ボトムアップ方式」があります。さらに精度の高い適正人員数を割り出すために、損益分析方式や業務分析方式などを組み合わせて算出するのが効果的です。
- Q事業計画における適正な人件費率(売上高人件費率)の目安はどのくらいですか?
- A
業種や企業規模によって適正水準は大きく異なるため、一律の目安はありません。情報通信業や飲食サービス業のような労働集約型の業種は高く、卸売業や製造業は低くなる傾向があります。中小企業庁「中小企業実態基本調査」などで自社業種の平均を確認し、労働分配率の推移と併せて判断することが重要です。
- Q人件費削減や適材適所の人員配置を進めるためのポイントは?
- A
従業員一人ひとりの作業時間やスキル・稼働状況を正確に把握・可視化することがポイントです。業務のムダを省いて所定外労働を減らすとともに、個人の強みに合ったプロジェクトへ適材適所にアサインすることで、生産性の向上と人件費の最適化を両立できます。
- Q要員計画やアサイン調整を効率化するためのおすすめツールはありますか?
- A
Excel管理から脱却し、リアルタイムでスキルや稼働状況を一元管理できる「スキル管理・アサイン管理ツール(fapiなど)」の活用がおすすめです。部署を横断したスキル検索や要員選定の工数を大幅に削減でき、スピーディーで精度の高い要員計画・アサイン調整が実現します。


