スキル管理・アサイン管理支援ツールfapi(ファピー)を提供する株式会社エフ・ディー・シーのDXサービス事業推進部 佐々木舞美が、200名以上のエンジニアのスキル管理・アサイン管理を25年以上行ってきた経験をもとに、製造業向けのスキルマップの作り方と無料テンプレートの使い方を解説します。

製造現場では、設備や工程ごとに「誰がどこまでできるか」を把握していないと、欠員時の配置替えや技能伝承が勘と記憶に頼ることになります。この記事では、厚生労働省が無料公開しているテンプレートを製造業向けに使う手順と、スキルマップを作成・管理する目的、運用でつまずきやすい点をまとめました。

製造業のスキルマップとは

製造業向けスキルマップとは?

スキルマップとは、従業員ごとに保有スキル・資格・経験と、その習熟度を一覧にした管理表です。製造業では、工程や設備の操作を縦軸、従業員を横軸に取り、「一人で作業できる」「指導があればできる」などの段階で埋めていく形が一般的です。

呼び方は企業によって異なり、力量管理表・スキルマトリックス・多能工表などと呼ばれることもあります。ISO9001の「力量」の要求事項に対応する記録として、力量管理表の名称で運用している工場も多くあります。

【無料テンプレート】厚生労働省の職業能力評価シートを製造業で使う

【無料テンプレート】厚生労働省の職業能力評価シートの紹介

厚生労働省は、職業能力評価基準にもとづく「職業能力評価シート」を無料で公開しています。生産管理・人事・情報システムなどの事務系職種と、ねじ製造業・電気通信工事業など16業種が対象で、職種・レベルごとにシートが分かれています。

評価は○(一人でできている)・△(ほぼ一人でできている)・×(できていない)の3段階です。ダウンロードして自社の工程に合わせて項目を編集できるので、ゼロから項目を考えるより短時間でスキルマップの初版を作れます。

ダウンロード:職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード|厚生労働省

製造業での使い方:ねじ製造業のシートを雛形にする

業種別シートの中で製造業に直接あたるのは「ねじ製造業」です。自社がねじ製造でなくても、受注・生産計画・加工・検査・出荷という工程の流れは共通する部分が多いため、このシートを雛形にして、設備名や加工名を自社の工程に差し替えるのが近道です。

生産管理や品質管理の間接部門は、事務系職種の「生産管理」シートを組み合わせます。現場スキルと間接スキルを1枚にまとめず、工程別・部門別に分けて作る方が、後の更新が楽になります。

テンプレートを自社用に直す3ステップ

ステップやることポイント
1. 項目の洗い出し工程ごとに作業・設備・資格を列挙する現場リーダーに確認し、抜け漏れを防ぐ
2. 段階の定義○△×のまま使うか、4段階(指導できる〜未経験)に広げるか決める段階の意味を文章で定義し、評価者ごとのブレを防ぐ
3. 更新ルール誰が・いつ・どう更新するかを決める半期ごとの見直しや、資格取得時の即時更新など

作り方の詳しい手順や項目例は、次の記事で解説しています。

製造業がスキルマップを作成・管理する4つの目的

スキルマップは作ること自体が目的ではありません。製造業で導入する目的は、主に次の4つです。

1. 多能工化と技能伝承を計画的に進める

工程ごとに「一人でできる人が何人いるか」が見えると、特定の人しかできない作業(属人化した工程)が一目でわかります。空欄や×が集中している工程から順に教育すれば、多能工化と技能伝承を場当たりではなく計画的に進められます。

2. 欠員・増産時の人員配置を早く決める

急な欠勤や増産で配置を組み替えるとき、スキルマップがあれば代替できる人を名簿から探す必要がありません。ラインごとの必要スキルと保有者を突き合わせるだけで、配置案を短時間で作れます。

3. 教育計画と人事評価の根拠にする

習熟度が段階で記録されていれば、「誰に・どの作業の教育が必要か」が明確になり、すでに習得済みの人に同じ研修を受けさせるムダを防げます。評価の根拠が共有されるため、上司の主観による評価のばらつきも抑えられます。

4. ISO9001の力量管理の記録にする

ISO9001では、品質に影響する業務を行う人の力量を明確にし、必要な力量を持つことを確実にして、その証拠を文書化した情報として保持することが求められます。スキルマップ(力量管理表)はこの記録として使え、審査時の説明資料にもなります。

運用でつまずきやすいポイントと対策

スキルマップは初版を作るより、更新し続ける方が難しい管理表です。製造業で特につまずきやすい点と対策をまとめます。

つまずきやすい点起きること対策
項目の洗い出しに時間がかかる工程数が多いと項目が数百に膨らみ、作成が止まるテンプレートを雛形にし、まず1ラインで作って横展開する
効果が出るまで時間がかかる数か月で「意味がない」と更新が止まる多能工化率など、追う指標を1つ決めて見える化する
評価者によって段階がブレる同じ作業でも△と○が混在する段階の定義を文章で固定し、年1回は評価者で目合わせする
Excelファイルが増えて最新がわからない部門ごとに様式が違い、集計に時間がかかる様式と保管場所を統一し、更新者を決める

特にExcel運用では、コピーを繰り返すうちに「どれが最新か」がわからなくなり、部門をまたいだ検索もできません。拠点や部門が複数ある場合は、様式の統一と更新者の明確化を先に決めておくと形骸化を防げます。

Excel運用に限界を感じたらスキルマップツールを検討する

スキル管理ツール(システム)とは?

スキルマップツール(スキル管理ツール)は、従業員のスキル・資格・経験をクラウド上で一元管理し、スキルマップの作成・更新と、条件に合う人の検索を行えるツールです。様式が統一され、更新履歴が残るため、Excelで起きがちな「最新がわからない」「部門横断で探せない」という問題を解消できます。

当社が提供するfapi(ファピー)も、スキル項目を自由に設計できるスキル管理・アサイン管理支援ツールです。製造業の工程別スキルにも対応でき、IT導入補助金2025の対象になっています。

ツールの選び方と、fapiを含む主要ツールの比較は次の記事にまとめています。導入を検討する際の確認ポイントも解説しているので、あわせてご覧ください。

まとめ:製造業のスキルマップはテンプレートで初版を作り、更新ルールで育てる

製造業のスキルマップは、多能工化・人員配置・教育計画・ISO9001の力量管理に使える管理表です。厚生労働省の職業能力評価シートを雛形にすれば、ゼロから作るより短時間で初版を作れます。

作った後は、段階の定義と更新ルールを決めて運用を続けることが重要です。Excelでの管理に限界を感じたら、スキルマップツールの導入も検討してみてください。