どの業界でも労働人口の減少が大きく取り沙汰され、建設業界も例外ではありません。
人手不足は地方の中小建設業者で顕著化していて、対策は性急の課題です。
人材を確保できなければ業務の遂行は難しく、最終的には倒産に追い込まれる可能性があります。
今回は建設業における人手不足の原因と具体的な解決策について解説します。
建設業の将来性もお伝えするので、企業を明るい方向に持っていきたい経営者様は、参考にしてみてください。
建設業を巡る就業者数と倒産数の推移

国土交通省の「建設業を取り巻く現状と課題について(令和6年11月)」によると、建設業就業者数は1997年のピーク時の685万人から、2023年は約30%減少した483万人です。
また、東京商工リサーチの調べによると、2024年の建設業の倒産数は1,924件で、2015年以降の10年間で最多を記録しています。
負債総額が高くなっていることもわかっており、建設業の苦境が続いていることが伺えます。
人手不足が理由の倒産件数は180件、前年比1.4倍と他業種より高い水準です。
ここから、建設業で人手不足が進む原因を詳しく解説します。
建設業で人手不足が深刻化している原因
高齢化
国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によると、建設業就業者の55歳以上は35.5%、さらに60歳以上が占める割合は25.7%と高齢化が進んでいます。
60歳以上が全体の4分の1以上を占めていることになりますが、10年後には大半の人材が退職しているのです。
全産業における55歳以上の割合が31.2%なことからも、建設業では高齢化率が高いことが伺えます。
若者離れ
若者離れも、建設業の人手不足につながる原因の1つです。
近年、インターネットの普及により、新しい業種・職業が増えています。
そのため建設業のような長時間労働や肉体労働、危険な業務を伴う仕事は、若年層から敬遠されがちです。
実際に厚生労働省の「新規学卒者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、建設業における新規高卒就職者の3年以内の離職率は43.2%でした。
4割以上が3年も経たずに辞めてしまうことから、若年層の定着率の低さが伺えます。
給与水準が比較的低い
建設業の給与水準は他業種より低く、人手不足に拍車をかけています。
厚生労働省の「令和6年 賃金構造基本統計調査」によると、建設業の平均年収は約357万円でした。
一方、国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査結果」では民間平均給与が約460万円となっており、建設業の年収が平均より低いことがわかります。
建設業の平均年収は前年比0.8%と微増ですが、まだまだ平均給与には届かないのが現状です。
外国人労働者が減少傾向
円安の影響を受けて、外国人労働者が減少しています。
ドル建て換算すると日本の賃金は減少傾向にあり、外国人労働者からするとわざわざ日本で働くメリットが薄れているのです。
外国人建設技術者の賃金はここ数年月額20万円程度で推移していましたが、ベトナムを例にすると月額15万円程度に上昇しているのです。
日本と海外との賃金差が少なくなっているため、この状態が続くと外国人労働者はますます少なくなる可能性があります。
人材派遣を利用できない
建設業では事務・営業・施工管理職を除き、人材派遣が認められていません。
そのため、他の業種のように人手不足を人材派遣で補うことができないのです。
実際に職業安定法32条では、土木・建築業における「現場作業」への求職者の紹介が禁止されています。
建設業における人手不足対策

工期を適切に設定する
工事受注者は発注者から提案された工期を確認して、適切に工期を設定する必要があります。
労働時間の是正は従業員の離職離れを防止し、働き方改革にも対応できるからです。
工期を設定する際は過去のプロジェクトから工期を算出して、詳細な計画を立てると良いでしょう。
人材教育に投資する
現代は機械技術・デジタル技術が急速に進化しており、業務量や求められるスキルの水準が高まっています。
人材育成に投資すれば、生産性が向上して人手不足対策に大きな効果が見込めます。
社員に成長機会が与えられないと企業の生産性は改善されず、ゆくゆくは競争から取り残される可能性が高いです。
必要な知識やスキルを明確にしたうえで教育プログラムを設計し、場合によっては多能工の育成も検討すべきでしょう。
またプロジェクト管理システムやビデオ会議ツール、機械の遠隔操作などを用いて、生産性向上につなげる必要があります。
建設業界・企業のイメージを改善する
建設業界や企業のイメージアップを図ると、若年層の取り込みや離職防止の効果に期待ができます。
建設業界は「危険な仕事が多い」「長時間労働が蔓延している」と思われがちです。
ところが近年は国が先立って、労働環境の改善に向けた取り組みを多く進めています。
作業着をカラフルでオシャレにしたりSNSで情報を発信したりと、企業側も積極的に魅力を発信していることが多いです。
労働環境が改善されれば人材の定着率がアップするため、人手不足対策に大きく貢献するでしょう。
建設業の将来性

建設業の需要は増加している
国土交通省の「令和6年度(2024年度) 建設投資見通し 概要」によると、2024年度の建設投資は73兆200億円と、前年度比2.7%増になる見込みです。
実際に、2015年ごろから建設投資額は右肩上がりになっており、建設業の需要が拡大していることがわかります。
そのため、国も企業も人手不足対策に本腰を入れなければ、作業者1人当たりの負担が増加してしまいます。
需要と供給のバランスが乱れないように、今後も人手不足対策は重要な課題といえるでしょう。
企業の買収・合併が活発化している
近年の建設業界では、企業の買収・合併も行われています。
なぜなら調達・運営コストの削減や技術力の向上、新規市場の開拓につながるからです。
経営陣はビジョンを明確にしたうえで、柔軟かつ多面的なアプローチが求められます。

まとめ
建設業の人手不足問題を解決するためには、ITツールによる業務効率化や人材育成が急務です。
賃金の改善や業界のイメージアップは、企業単体で臨むには難しいところがあります。
ITツールの導入は教育にこそ時間がかかるものの、従業員の負担を大きく減らすことができます。
エンゲージメントが高まれば離職防止にも期待できるうえ、これまでより少ない人数でより多くの業務をこなせるようになるのです。
ITツールは無料トライアルを実施している製品もあるので、自社の状況に合わせてうまく活用することをおすすめします。