工務店を取り巻く現状を見直して、経営戦略やマーケティング戦略を検討する方法に「SWOT分析」があります。
SWOT分析を行うことで個人の弱みを強みに変えたり、工務店の強みをさらに伸ばしたりできます。
この記事ではSWOT分析の目的や手順、工務店が戦略的に活用するための方法を、わたくしDXサービス事業推進部 佐々木舞美がこの機会に解説します。
「工務店の課題を改善したい」「具体的な分析のやり方がわからない」という方は参考にしてください。
図解で解説をしているので、初めての方でも理解しやすくなっています。
工務店に役立つ「SWOT分析」とは?

SWOT分析とは内部環境と外部環境を整理して、経営戦略を検討するための手法です。
分析に使う4つの要素「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字をとって、SWOT分析と呼ばれます。
強み(Strength) | 自社独自の強みやノウハウ |
弱み(Weakness) | 自社が抱える課題 |
機会(Opportunity) | 業界にとって追い風が吹くこと |
脅威(Threat) | 業界に逆風が吹き契約が取りにくくなること |
さらにSWOT分析の4つの要素は、以下のように「プラス」と「マイナス」の要因に分けられます。
プラスの要因 | マイナスの要因 | |
内部環境 | 強み | 弱み |
外部環境 | 機会 | 脅威 |
強みと弱みは工務店に関する事柄なので、ある程度コントロールすることが可能です。
機会と脅威は工務店の外部で起こるため、自社でコントロールすることができません。
工務店を例にしてSWOT分析を当てはめると、以下のようになります。

プラスの要因 | マイナスの要因 | |
内部環境 | 強み (技術力の高さ、地域NNo.1の信頼力) | 弱み (FC展開するノウハウがない、社員の高齢化) |
外部環境 | 機会 (リフォーム市場は堅調に推移、エコ住宅に対して補助金申請が可能となった) | 脅威 (新築住宅の需要減少、大手メーカーのブランド力) |
企業を取り巻く現状を理解したうえで適切に戦略プランを実行すれば、会社の成長や長期にわたる経営が期待できます。
SWOT分析の目的
SWOT分析の目的は自社の現状を把握し、経営戦略やマーケティング戦略につなげることです。
他にも、社員個人の目標設定や新しいビジネスチャンスの分析など、幅広い目的に対して活用できます。
「強み」と「機会」、あるいは「弱み」と「脅威」は混同しやすいですが、SWOT分析では必ずどれかに分類する必要があります。
なぜなら例えマイナスの要因に分類しても、どのようにプラスに変えていくかを検討できるためです。
会社・個人の弱みを少しでも改善できれば、モチベーションの増加やさらなる成長が期待できます。
SWOT分析の5つのステップ
工務店のSWOT分析のやり方を5ステップで解説します。

ステップ1.目的を決める
まずは何のために分析を行うか、工務店の目的を明確にします。
目的が不明確な場合、それぞれの要因を分析できません。
目的は「自社の売上を伸ばす」「新商品・サービスを展開する」など、工務店に沿ったものにしてください。
方向性が定まらなかったりムダに時間がかかったりと、肝心な施策にうまく落とし込めなくなる可能性があります。
また社員同士でディスカッションする際は、地位が高い人や影響力の強い人の意見に流されないことが大切です。
全社員の意見を「平等」に取り入れることで、見落としを防ぎ改善の糸口を見つけられます。
全社員で目的を共有し、SWOT分析へ活かしてください。
ステップ2.外部環境の分析
続いて、工務店の外部環境の分析を行います。
外部環境とは工務店の外で発生する「機会」「脅威」で、自社でコントロールすることができません。
機会の例を挙げると「政府が住宅のゼロエネルギー化を推進している」「ライバル工務店が撤退した」などです。
脅威の例を挙げると「ウッドショックで材料費が高騰した」「新種の病が流行している」などでしょう。
ちなみに、内部環境の分析から始めると外部環境の分析結果により修正が必要になるので、注意してください。
外部環境の動向や変化は工務店にとって機会なのか脅威なのかをよく見極めて、カテゴリー分けを進めてみてください。
ステップ3.内部環境の分析
ステップの3つ目では、工務店の内部環境を分析します。
内部環境は工務店の「強み」「弱み」を意味し、経営に影響を与える重要な要素です。
「強み」を例にすると「自社の認知度が高い」「品質に定評がある」などが挙げられるでしょう。
この際、主観に囚われず、外部環境と照らし合わせながら分析することが大切です。
データや実績を基にしながら、正確な分析を心がけてください。
ステップ4.クロスSWOT分析
SWOT分析の4つ目のステップでは「クロスSWOT分析」を行います。
クロスSWOT分析とはS、W、O、Tの4つの要素を掛け合わせて、4パターンの戦略を導き出す手法です。
- 強み×機会=積極的戦略
- 強み×脅威=差別化戦略
- 弱み×機会=改善戦略
- 弱み×脅威=撤退戦略

それぞれ戦略の具体例を以下にまとめましたのでご覧ください。
強み×機会=積極的戦略
目標達成のために工務店の強みをどう活かすかを考えること。
積極的戦略の具体例 | IT人材の強みを活かして、ブログやSNSで情報発信及び集客を行う |
強み×脅威=差別化戦略
工務店の強みを活かして脅威にどう対処していくかを考えること。
差別化戦略の具体例 | 市場が縮小してもサービスやホスピタリティで選んでもらえることを目指す |
弱み×機会=改善戦略
工務店の弱みをカバーしてチャンスに変えること。
改善戦略の具体例 | SEO対策に力を入れて、ホームページやSNS投稿から集客を狙う |
弱み×脅威=撤退戦略
内部・外部ともにマイナス要因となる場合、リスク緩和や撤退を考えること。
撤退戦略の具体例 | 利益の出る見込みがないことから、新規事業を撤退する |
ステップ5.分析結果の活用
SWOT分析の最後のステップが、分析結果の活用です
SWOT分析で明らかになった事柄を基に、弱みを強みに変えたり強みをさらに伸ばしたりできるかを考えます。
最優先すべきは「強み×機会」から得た積極的戦略です。
自社の目的と照らし合わせて、積極的に市場を切り開いていってください。
工務店が実施する上でのポイント・注意点

ここでは工務店でSWOT分析を実施する上でのポイントや注意点をお伝えします。
目的の洗い出しでは固定観念を出さない
目的の洗い出し作業では、固定観念を入れないように注意してください。
仮に社長が一人で洗い出しを行うと、主観や固定観念が入ってしまいどうしても視野が狭くなりがちです。
固定観念を入れないように、可能な限り社員全員でのディスカッションをおすすめします。
ネガティブな意見や不満点にこそ、改善のヒントが眠っているので、話しやすい雰囲気を作ることも大切です。
固定観念にとらわれず、思ったことは直感的にホワイトボードやノートに記載・コメントしていきましょう。
他のフレームワークを活用する
SWOT分析の4要素を洗い出すため「PEST分析」と「3C分析」の活用をおすすめします。
PEST分析 | 4つの要素を整理して外部環境を分析する。 PESTは「政治(Politics)」「経済( Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」 の頭文字をとったもの。 |
3C分析 | 3つの要素の関係性を分析する。 3Cは「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の頭文字をとったもの。 |
PEST分析の後に3C分析を行うことで、SWOT分析の4要素の精度を高められます。
SWOT分析の理解度を深めて、工務店の経営戦略に役立ててください。
まとめ
この記事ではSWOT分析の目的や手順、工務店が戦略的に活用する具体例についてお伝えしました。
「初めてでSWOT分析のやり方がわからない」という方は、この記事の図解や具体例を参考しながら分析を進めてみてください。
SWOT分析を行うことで工務店の現状を把握でき、成長につながったり長期にわたる経営ができたりします。