建設業や工務店では職人の高齢化に若者離れと、人手不足が止まりません。
仕事の受注が入っても、人手不足で泣く泣く断った経験がある方も多いのではないでしょうか。
2024年4月には労働環境の見直しで残業時間に上限が設けられることから、今のうちから時間を最大限に活用して業務を行うことが求められます。
当記事では工務店で人手不足が深刻化する原因と、職人たちが直面している現状についてデータを用いて解説します。
人手不足を解消する具体的な改善方法と気をつけるべきポイントをお伝えするので、工務店の経営者は参考にしてください。

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【工務店】人手不足が深刻化する背景

工務店で人手不足が深刻化する背景には、4つの原因が関係しています。

工務店人手不足が深刻化する背景

【人手不足の原因1】大工の減少と職人不足

国土交通省が公表した「大工就業者数の推移」によると、2000年に約65万人いた大工は2020年に約30万人にまで減少しています。
大工はたった20年で半減しており、年代別で見ると39歳以下の減少が進んでいることがわかりました。
少子高齢化で働き手の絶対数が減っていることも、工務店の人手不足や人材確保の難しさにつながっています。

参考:大工就業者数の推移|国土交通省

【人手不足の原因2】人材を取り巻く環境問題

かつて建設業は「きつい」「汚い」「危険」の3Kと呼ばれ、労働環境が問題視されていました。
当時、子どもを建設業界に入れたくないと考える親が一定数いたため、現代の人材不足につながっているのも事実です。
しかし近年は国土交通省が「給与」「休暇」「希望」の新3Kを推進し、国が発注する工事に関してはゆとりのある工期が設定されています。

【人手不足の原因3】後継者不足

飲食店の廃業やウッドショックによる資材高騰の影響から、工務店の廃業が続いています。
コスト圧縮のために経理から顧客の獲得まで、工務店の社長一人で対応するケースも珍しくありません。
経営が難しかったり大工の若者離れが進んでいたりと、後継者の育成を行えない工務店も多いです。

【人手不足の原因4】職場・現場にDXが浸透していない

職場や建築現場にDXが浸透しないのも、人手不足が進む要因の一つです。
すべて手作業で業務を遂行するのは非効率なので、うまくデジタル技術を取り入れる姿勢が望まれます。
結果的に辞職を選ぶ従業員も多く、人手不足が解決しない状態が続いています。

データで読み解く!
工務店・建設業界における大工・職人・若者の現状

工務店が抱える大工・職人・若者の悩みについて、データを元に紐解いていきましょう。

職人の高齢化と若者離れ

国土交通省「建設産業の現状と課題」によると、2023年(見通し)全産業の55歳以上が占める割合は31.5%、建設業は35.9%であることから高齢化の進行が見てとれます。
29歳以下の従業員の割合は全産業で16.4%に対し、建設業は11.5%しかおらず、若者が極めて少ないことがわかります。

建設業就業者の高齢化の進行

出典:建設産業の現状と課題|国土交通省

人材の賃金問題

工務店をはじめ建設業界では、労働時間の長さに対する賃金の低さが問題視されてきました。
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、大工の平均年収は約378万円。
国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査結果」では、給与所得者の平均年収が約433万円と公表されており、大工の年収が他の業種より低いことがわかります。
現場で雨が降ったり大型連休になったりすると工事を行わないことも多く、収入が不安定になる要因の一つになっています。

参考:令和2年賃金構造基本統計調査|厚生労働省
令和2年分 民間給与実態統計調査結果|国税庁

新築住宅着工数は減少傾向にある

野村総合研究所の「新設住宅着工戸数予測」によると、着工戸数は以下のように推移すると分析されています。

  • 2022年度・・86万戸
  • 2030年度・・74万戸
  • 2040年度・・55万戸

人口減少に伴い新築住宅着工数もなだらかに減少傾向です。
しかしリフォーム・リノベーション市場はテレワークの定着化や団塊ジュニア世代からの需要の高まりで、2030年までに上昇すると予想されています。

参考:新設住宅着工数予測|野村総合研究所

工務店の具体的な人手不足の対処法

工務店の人手不足を解消する具体的な対処法を、5つお伝えします。

工務店の具体的な人手不足の解消方法

【人手不足の対処法1】若手の育成方針・教育環境を見直す

人手不足を解決する鍵となる若者は、積極的に育成しましょう。
新人でも即戦力になってもらえるように工務店で業務マニュアルを作成し、相談しやすい雰囲気をつくることが大切です。
一昔前までは「職人の仕事を目で盗む」「怒鳴られながら仕事を覚える」というのが当たり前でした。
今ではパワハラと言われかねないので、工務店は現代にマッチした「仕事を楽しめる環境づくり」を整えていく必要があるでしょう。

【人手不足の対処法2】労働環境や労働条件を改善する

建設業は2024年4月から時間外労働時間の上限が原則月45時間以内、年360時間以内となります。
そのため、長時間の残業に悩んでいた方も、1日の残業時間が2時間程度まで抑えられるでしょう。
週休二日制も実現すれば、工務店で働く人たちの負担軽減やワークライフバランスに期待できます。
3K(きつい・汚い・危険)といった労働環境を改善し、人手不足を解消する企業努力も必要です。

【人手不足の対処法3】ICTで業務効率化

人手不足を解消するため、ICTで業務効率化を図る工務店が増えています。
ICTは「情報通信技術」を意味し、インターネット上で情報共有やコミュニケーションをとる技術です。
ICTを活用すればいつでもどこでも顧客管理や現場の進捗を確認できますし、アプリで図面や工数の確認が可能です。
工務店で作業する必要がなく対面でなくても業務をこなせることから、業務効率の大幅な改善が見込めます。
スマホやタブレットも使えれば業務時間を短縮できるため、従業員の負担軽減離職防止につながります。

【人手不足の対処法4】建設DXの推進

DXとはデータやデジタル技術を使ったツールを活用して、ビジネスモデルに変革をもたらすことです。
工務店でも徐々に導入が進んでおり、業務効率化に成功した一例は以下のとおりです。

クラウドサービスの活用顧客管理や見積もり作成などの工務店業務をツールに一本化して、生産性および利益の向上をサポート
バーチャル展示場の導入スマホで部屋の間取りや導線を確認できる。導入コストの低さと商談に進めやすい点がメリット
建設用ロボットの導入鉄筋の結束作業や天井向けの墨出し・穴あけ作業などを行い人員削減や生産性の向上に期待できる

建設DXの導入は大工や職人の負担を軽減し、本来の業務に注力できるようになります。

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【人手不足の対処法5】採用ターゲットを広げる

人手不足の解消には、外国人労働者や女性、ミドルエイジなど採用ターゲットを広げるのも手です。
なぜなら男性の若い人材ばかりにターゲットを絞ると、求人応募者が限られるからです。
ホームページやSNSで求人広告を出す際は「この工務店で働きたい!」と思われる投稿を意識しましょう。
例えば大工やベテランの職人のインタビュー記事、工務店のイメージが伝わりやすい写真や動画がおすすめです。

人手不足を改善するポイント

工務店の人手不足を改善するポイントを3つお伝えするのでぜひ実践してください。

人手不足を改善する方法

ICTや工務店DXはすぐに浸透しないと理解しておくこと

工務店のなかには、パソコンに触れたことがないという大工や職人も多いでしょう。
ICTや工務店DXの導入は人手不足の解消に欠かせませんが、浸透するまで時間がかかることを覚えておいてください。
工務店側は大工や職人に対して導入の意図をしっかりと説明し、少しでも早く操作などに慣れてもらえる支援が必要となります。

建設キャリアアップシステムを導入すること

建設キャリアアップシステムとは職人のキャリアを可視化して、適正な評価と賃金を上げることが目的の制度です。
国土交通省は2024年4月までに全技能者の登録を実現し、適切な人事配置や労働力の確保を目指しています。
スキルや経験に応じて賃金が上がるため、賃金面を不安視していた人の悩みを払拭できます。

多能工な人材育成をめざすこと

工務店の人手不足を解決し、大工としてのスキルアップを目指せるのが「多能工」です。
多能工とは一人で複数の業務をこなせる人材を意味し、マルチタスクともいわれます。
近年の新築住宅は施工技術や素材が進化していることから、昔と比べて格段に工事がしやすくなりました。
ところが、リフォーム工事では「木組み」といった新築工事とは異なる高度な技術や知識が必要です。
多能工な人材育成は人手不足だけではなく、これから増加するリフォーム工事にも対処できるようになります。

まとめ
工務店の人手不足問題!具体的な対策方法と業務改善のポイント

この記事では人手不足の一言では片付けられないくらい、工務店が抱える課題を明らかにしました。
建設業や工務店が早急に取り組むべき対策方法は、ICTおよび工務店DXです。
慣れるまで多少時間はかかるものの、仕事のための仕事がなくなり本来の業務に集中できる労働環境が手に入ります。
業務効率化に成功した後はリフォーム工事に対応できる「多能工」の育成を推し進めてください。

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