ISO9001では企業で製造する製品の品質向上のため、力量管理が要求に含まれています。
この記事ではISOの規格(JISQ9001:2015)に基づいて、教育訓練計画・教育訓練記録の概要から立て方、作成時のポイントを解説します。
ISO教育訓練の実施を任された方は、ぜひ参考にしてみてください。
ISO9001でいう教育訓練とは?
ISO9001(品質マネジメントシステム)でいう教育訓練とは、7.2項にある力量のことです。
ISO9001では、力量に関して次の4つを要求しています。
a)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
b)適切な教育、訓練又は経験に基づいて、それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
c)該当する場合には、必ず、必要な力量を身に付けるための処置をとり、とった処置の有効性を評価する。
d)力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する。
出典:JISQ9001:2015 品質マネジメントシステム|日本産業規格の簡易閲覧
簡単にまとめると、教育訓練では「ニーズに応じた実施」「有効性の評価」「文書化して管理」を要求しているのです。
ISO9001の教育訓練計画・教育訓練記録とは?
前述した通り、ISO9001の教育訓練では「ニーズに応じた実施」「有効性の評価」「文書化して管理」が要求されます。
ISO9001の教育訓練計画とは、品質管理の目標を達成するために、業務に必要な力量を明確にして作業者の教育計画を立てることです。
また、教育訓練記録は力量管理を行なった証拠になる、プロセスを残したものになります。
教育訓練記録のフォーマットに決まりはありませんが、内部監査員が確認するので、過不足なくかつわかりやすいものにしましょう。
ISO9001が要求していないこととは?
ISO9001では担当業務に関連しない教育訓練や指導、記録は要求していません。
また、規則(JISQ9001:2015)には、業務に関連しない教育訓練や指導をしてはいけないという記載もありません。
現在、社員の将来を見据えて知識を広げることを目的に、基礎訓練や研修を行っている会社もあるはずです。
将来必要となる教育や訓練を率先して進めることは、担当者の視野の拡大に大きくつながります。
ISO9001でいう力量とは?
ISO9001でいう力量とは、業務を進めるのに必要な能力はあるか、ということです。
具体的にいえば、業務をこなす技能や経験、知識や資格を意味します。
なお、力量はISO9001だけではなく、ISO14001やISO45001などでも求められます。
教育訓練計画の立て方とポイント
ISO9001の要件を満たす教育訓練計画を立てる場合、まずは対象者のニーズや目標を明確にします。
次に教育の内容と方法、評価基準を決めて、計画を策定しましょう。
この際、対象者のレベルの最終目標を設定すれば、逆算して教育計画を立てることができます。
最後に、ISO9001の要件を満たす教育訓練計画のポイントをまとめたので、作成時の参考にしてみてください
- 教育計画の目的を明確にする
- 組織全体で必要な力量を洗い出す
- 重要度や緊急度が高い力量から教育訓練を行うようにする
- 教育訓練計画を表にまとめる
- 定期的な評価と見直しを行う
教育訓練計画の管理にはスキルマップの活用が必須
教育訓練計画の管理には、スキルマップの活用が欠かせません。
スキルマップとは社員が業務を遂行するにあたって、必要な能力を一元管理するツールです。
社員一人ひとりの能力が明確になるので、人材配置や人事評価を効率良く行えるようになります。
これまで教育訓練計画の作成から実施までの力量管理に関する業務は、エクセルや紙で作成するのが一般的でした。
しかしながら、部門や担当者ごとにフォーマットが異なることが多く、組織全体で力量管理を行うのが難しいという問題があります。
集計作業が大変で属人化もしやすく、担当者が異動・退職した際に混乱を招くリスクがつきまとうのです。
近年は企業のDX化が進んでいることもあり、クラウドツールでスキルマップを作成する企業が増えています。
スキルマップ(力量管理表)の作り方
ISOの審査・認証を得るための、スキルマップの作り方を解説します。
- スキルマップ作成の目的を明確にする
- スキル項目を洗い出す
- スキル項目の体系の分類・階層を決める
- スキルの評価基準・評価段階を決める
- スキルマップの作成と定期的な見直しを行う
作り方とISO9001の教育訓練計画・教育訓練記録と併せて、実際に作成してみてください。
ステップ1.スキルマップ作成の目的を明確にする
まずは、スキルマップを作成する目的を明確にしましょう。
目的がわからないままだと、スキル項目の策定に時間がかかったり業務に関連しない内容が盛り込まれたりするからです。
「生産性の高い人材配置を実現する」「公平な人事評価を行う」など、活用シーンを想定しながら目的を決めていきます。
ステップ2.スキル項目を洗い出す
目的を明確にした後は、スキル項目の洗い出しをしましょう。
業務フローや作業マニュアルに加えて、社員へヒアリングを行うと、より精度の高いスキルマップが完成します。
ステップ3.スキル項目の体系の分類・階層を決める
スキル項目を洗い出したら、どのような体系に分類するかを決定します。
業務内容や製品カテゴリーを大項目にして、その下に小項目をツリー形式に並べてみてください。
スキル項目の階層数に制限はありませんが、細かいと管理がしにくくスキルマップが形骸化する可能性が高いので注意が必要です。
したがって、スキル項目の階層数は、2〜3階層程度にとどめることをおすすめします。
ステップ4.スキルの評価基準・評価段階を決める
続いて、スキル項目の評価基準・評価段階を決めます。
スキルマップの評価段階は、一般的に3〜6段階にすることが多いです。
仮に評価段階を4段階にした場合は、評価基準を以下のように設定してみてください。
レベル4 | 他者を指導できる |
レベル3 | 単独で実施できる |
レベル2 | 知識はあるが実施できない |
レベル1 | 理解していない |
ステップ5.スキルマップの作成と定期的な見直しを行う
最後に、これまでの手順を踏まえてスキルマップを作成します。
運用を開始したら、社員からフィードバックを集めておきましょう。
定期的にスキルマップへフィードバックなどを取り入れることで、スキル項目や評価基準の精度が高まります。
製造業やIT業界は求められるスキルが変化しやすいので、潮流に合わせて効果を発揮できるように、更新・調整を繰り返すことが重要です。
スキル管理・アサイン管理ツールfapiでスキル管理を効率化
「fapi」は株式会社エフ・ディー・シーが提供する、スキル管理アサイン管理ツールです。
クラウド型なので低コストで導入でき、リアルタイムにスキル・アサイン状況を把握できます。
これからはITやAI、自動化がより浸透し、新しいスキルや能力を管理する機会が多くなるでしょう。
fapiではエクセル管理のものと同様の項目を反映したり、ツール1つでスキル管理が行えたりと、業務工数の削減に寄与します。
ぜひ1か月間の無料トライアルで実際に触ってみて、業務の効率化や生産性の向上を実感してみてください。
まとめ:【教育訓練とは】 ISO9001の教育訓練計画・教育訓練記録とは?
この記事ではISO教育訓練の内容や教育訓練計画・教育訓練記録の作成方法について解説しました。
教育訓練では社員の力量を把握して、不足しているスキルギャップを効率的に埋めることが重要です。
自社製品の品質を向上するために、スキルマップなどの運用・管理しやすい環境を維持しましょう。