昨今、プロジェクトのコスト超過や作業工数オーバーの原因のひとつとして、プロジェクトを管理するPM(プロジェクトマネージャー)のスキルや経験不足がささやかれています。とはいえ、いざ開発メンバーの一人からプロマネの立場にステップアップしたとき、マネジメントに関する教育を十分に受けた経験もなければ戸惑うのは当然です。ネット検索で「プロマネ」と検索すると「なりたくない」「やりたくない」などのネガティブなワードがヒットする始末です。
本記事では、現場の悩みのひとつとして挙げられる「プロジェクトマネージャーの教育」に関する便利な情報を取り上げてゆきたいと思います。
ITエンジニアを150名以上抱え、日々エンジニアのスキル管理・アサイン管理など効率化しながらSESや受託開発などソフトウェア開発のお仕事を25年経験し、多くのプロジェクトマネージャーを育ててきた弊社の経験・ノウハウをもとに、プロジェクトマネージャー(PM)の経験があるDXサービス事業推進部 佐々木舞美が解説いたします!
プロジェクトマネージャー(PM)が育たなくなった背景は? 原因を知って根本的な解決へ

IT業界の市場規模は、世界中がコロナ禍に直面した2020年~2022年を含めても伸び続けており、プロジェクトの数も年々増え続けていることと思います。そのような中で、マネジメントスキルや経験が足りない人員が、プロマネの立場として無理やりプロジェクトに配員されることが少なくないのが現状です。ITの現場では一定の経験年数を迎えると、エスカレーター的に開発メンバーからプロジェクトマネージャー(PM)への転向が求められることが多々ありますが、開発のスキルは身につけることができても、マネジメントスキルを身につける機会を企業側が用意できていないという問題が浮き出てきています。
プロジェクトマネージャー(PM)は、スケジュールや配員(アサイン)の考慮をするために開発の経験が一定以上あることが望ましい上に、スケジュールや金額について顧客と交渉するスキル、開発メンバーとのコミュニケーションスキル、プロジェクト計画書や設計書など、プロジェクトに必要な情報を適切に管理するスキルも求められます。

プロジェクト管理においては、PMBOKのような知識体系があり、IPAではプロジェクトマネージャーの国家資格が用意されています。このように、マネジメント技法についての情報や知識は既に各所から得ることができますが、それらを知識として持っているだけではなく、実際に現場でその知識を活用して経験を積んでゆかなくては真にプロジェクトマネジメントのスキルは身につきません。
新人プロマネの経験不足をカバーする方法のひとつとして、例えばDXツールを駆使するなどしてプロジェクト管理を組織内で標準化することが挙げられます。PMBOKのノウハウに上げられていても、自分で一から作成するにはどうしても慣れが必要なWBSや資源カレンダーを、ツールの力を借りてより簡単に、より効率的に作成することが出来れば、初めてプロジェクトマネジメントを行う人でも業務のハードルが下がります。また、顧客交渉の材料となる情報を営業担当と共有できるツールがあれば、顧客とのコミュニケーションが不得意なPMもスムーズな交渉がしやすくなります。不慣れな業務を無理に任せてプロジェクトが炎上してしまうのを防ぐためにも、ツールの利用はよい先行投資となるでしょう。
プロジェクトマネージャー教育……実際にはどんなことをすればいいの?
プロジェクトマネージャー(PM)は、中堅やベテランと呼ばれるくらいまで開発経験を積んでやっと任命される……といったイメージが強いですが、ここまでで述べた通り、プロジェクトマネージャー(PM)にはマネジメントのスキルが必要であり、実際のところそのスキルが大成するまでには5年、10年と長い年月が必要です。一刻も早くプロジェクトマネージャー(PM)のスキルを持った人材を多く確保したい現状の中で、重要となるのは早いうちからのプロジェクトマネージャーの育成です。この項では、企業におけるプロジェクトマネージャー(PM)の育成方法の見直しや、プロジェクトマネージャー(PM)不足の解消方法について紹介していきます。
プロジェクトマネージャー育成方法① 社内教育にプロジェクトマネジメント研修の導入

既に、オンラインセミナーやeラーニングの受講にてプロジェクトマネジメントの研修を社員に課している企業もあると思いますが、プロジェクトマネージャー(PM)向け研修をプロジェクトマネージャー(PM)となり得る立場の社員にのみ受講可能としている場合も多いのではないでしょうか? 開発メンバーが若手のうちから、のちのちプロジェクトマネージャー(PM)として活躍出来るようになるための芽を育てておくことは、昨今のIT人材不足の現状において非常に重要です。
フォロワーシップ教育は、部下が組織に貢献するための教育のことです。フォロワーシップ教育の中にプロジェクトマネジメントの内容を取り入れることで、目の前の開発業務のみにとどまらず、プロジェクト全体を俯瞰する力が身につき、プロジェクト成功のために主体的に動ける人員に育てることができるでしょう。
いきなり難しい研修から始める必要はなく、「プロジェクトマネジメント基礎」をはじめ、プロジェクトマネージャー(PM)をフォローするための「プロジェクトメンバーリテラシー」のワークショップを開いている研修サービスもありますので、そういったものを活用するとよいでしょう。教育を受ける人材が、最初はプロジェクトマネージャー(PM)のフォローから始まり、その経験を踏まえて自分がプロジェクトマネージャー(PM)になったときの業務イメージがつくように成長していけると理想です。そのためにも、研修の受講記録を段階的に管理できるツールを併用すると、自社内ではどんなプロジェクトマネジメント研修を行っているか、誰がどの程度までスキルを身につけたのかが把握できて便利です。
プロジェクトマネージャー育成方法② 若手とシニア(ベテラン)のタッグによる業務アサイン

社員にプロジェクトマネジメントのスキルを身に着けさせるために研修を活用していくことも重要ですが、その研修を生かすために必要となってくるのが、やはり現場での経験です。とはいえ、若手社員は実際にプロジェクトをマネジメントする機会をなかなか得られません。そこで有効となってくるのが、若手社員とベテラン社員のタッグを組ませる形でのアサインを意識することです。
研修のみでは、いくらプロジェクトマネジメントの手法を学んだとしても、イレギュラーな事案が起きた際にどう対処すればよいか分からなかったり、座学で学んだことを実務でどのように生かせばよいのか悩んだりすることが多々あると思います。そういった場合に、若手にアドバイスが出来るベテラン社員が常に側にいることは、若手のスキルを飛躍させる大きな手助けとなります。現場で起きる様々な課題に、ベテラン社員がこれまでの経験を生かしながら対処していく様を若手が間近で見て、それにならって仕事をする時間が増えれば増えるほど、座学で学んだことが実務に結び付く機会も自然と増えます。
企業としては、研修に時間を割きすぎることなく、若手には実務の中で仕事を覚えてもらいたいという思いも少なからずあると思います。そこで、若手とベテランのタッグを組ませることは非常に有用ですが、その有用性には人員同士の相性も大きくかかわってきます。
ベテランエンジニアの中でも、面倒見のいい人もいれば、職人気質で背中を見て仕事を覚えさせようとするタイプの人もいますし、若手は若手で、上司に積極的に質問できる人も、引っ込み思案でなかなか年上の社員とコミュニケーションを図れない人も居ます。それに加えて、どれほどの経験やスキルを持った社員がいつ頃調達できるのかということがすぐに分からないと、適切な人員配置(アサイン)は難航してしまいます。
そういう時に、人員の経験やスキルや空き状況、そして、性格のタイプにいたるまでを一つのシステムの中で記録し、様々なプロマネや営業が一緒に使えるようなツールがあると大変便利です。たとえば弊社のスキル管理・アサイン管理支援ツールのfapiでは、期間ごとの空き要員を、社員の経験年数やスキル情報はもちろん、性格などの業務経歴書ではあまり見られないような情報も一緒に見ながら確認が出来るので、そういったツールを活用することで、若手とベテランを結びつけるプロジェクトアサイン体制を作りやすくなるでしょう。
プロジェクトマネージャー(PM)不足解消の手段として ― 外部要員の調達(アサイン)
社内のみではどうしてもプロジェクトマネージャー(PM)として十分なスキルを持った人員が調達できない時や、新たなプロジェクトマネージャー(PM)が育ちきるまでの期間は、プロジェクトマネジメントのエキスパートである外部要員を思い切ってアサインすることも一つの手です。自社にないプロジェクト管理のノウハウを学ぶ機会を得ることも出来るでしょう。
ただし、外部要員のスキル評価やコミュニケーションの方法が自社と全く同じということはほぼ無いので、要員の管理が難しくなるリスクがあります。そこで、外部要員の調達管理も、社内のメンバーのアサイン管理体制に組み込めるようなシステムを企業で保持しておくとよいでしょう。そうすることで、例えば開発技術はピカイチだけどマネジメントは苦手……といったベテラン社員と若手を組ませ、さらにそのプロジェクトに外部からのベテランのプロジェクトマネージャー(PM)をアサインするよう要員配置も楽に行えるので、若手と、手本となるベテランのマッチングも一層やりやすくなります。
プロジェクトマネージャー(PM)育成におすすめのツール・サービス一覧

ここまで、プロジェクトマネージャー(PM)育成におすすめの手法を紹介してきましたが、新しい方法を取り入れることになった際には何かと面倒な業務がかさむものです。そこで、企業が新たにプロジェクトマネージャー(PM)育成の組織的なシステムを作っていくときに役に立つツールやサービスをいくつか紹介します。うまく取り入れながら、プロジェクトマネージャー(PM)として活躍できる人員をどんどん育てていきましょう!
①Schoo for Business ―研修サービス
業界最先端のITスキルから、汎用的なビジネススキルまで幅広く網羅したeラーニングで、7,000本以上の授業を提供しています。視聴履歴の管理やオリジナル研修の作成なども可能で、自社ならではの研修システムを作っていくのに大いに役に立つでしょう。
②kakeai ― 上司と部下のコミュニケーションをフォローアップし、活性化するチャットツール
1on1のチャット機能で、マネージャーがメンバー一人一人と向き合い理解する手助けとなるツールです。在宅ワークも増えている現在、上司と部下の密なコミュニケーションを活性化するツールを導入することで、上司のサポート力や対応力を部下が吸収する機会を増やし、未来のプロジェクトマネージャーの育成に繋がることでしょう。
③スキル管理・アサイン管理支援ツールfapi ― Excelで管理していた項目をそのまま再現可能
要員のスキル情報や空き情報を一つのシステムにまとめて検索を可能にすることで、要員のアサインを支援するツールです。Excelで管理していた項目をそのまま再現できるだけでなく、管理項目が自由に設定できることも強みの一つで、例えばアサイン候補者の情報に「性格」などの情報も付与することができるため、先ほど述べたようなベテランと若手をバランスよく組ませた要員配置(アサイン)に大いに役に立つことでしょう。使い方によっては、要員ごとに研修の受講記録を残しておくことも可能です。
まとめ【課題解決】プロジェクトマネージャー不足の課題を解決する方法

いかがでしたでしょうか。
プロジェクトマネージャー(PM)は、「何年も経験を積んだエンジニアがなるもの」というイメージが、若手にも、もしかしたら人員を育成する立場の方にもあるかもしれません。しかし、若手のうちからマネジメント能力育成にも視野を広げることは、将来的にプロジェクトマネージャー(PM)不足の打破に繋がっていく事と思います。マネジメントに関する研修の充実と、ベテランと若手のコミュニケーションが活発な職場環境を作り上げ、今後のIT業界の拡大とプロジェクト数の増加にも円滑に対応できるように、優秀なププロジェクトマネージャー(PM)をたくさん育てていきましょう。
ぜひ、PMBOKに体系化されているプロジェクトマネジメントの基礎を今一度活用するとともに、DXツールなどを駆使して業務を効率化していきましょう。業務の効率化を図ることは、メンバーとの信頼関係を築き、より適材適所に人をアサインしていく楽しさを感じながら、よりよいプロジェクトを作り上げていく手助けになるでしょう。
スキル管理・アサイン管理支援ツール fapi の詳細はこちら