超高齢化社会がもたらす「2025年問題」が、すぐそこまで迫っています。深刻な人手不足に悩まされる工務店・ハウスメーカーは、「住宅の2025年問題」にも対応しなければなりません。
この記事では2025年問題がもたらす課題や「2024年問題」「2025年の壁」との違い、具体的な対応策についてお伝えします。2025年問題は新たなビジネスチャンスとも言えるので、この記事でしっかり解決策を学んでいってください。
工務店の2025年問題とは

一般的に、2025年問題とは超高齢化による「働き手不足」や「後継者不足」といった問題のことです。
内閣府の「高齢白書(2022年版)」によると、2025年に国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人は75歳以上という驚くべき予測がなされています。
その一方で、工務店に関連する2025年問題というのも存在します。
ここでは工務店の2025年問題を4つ紹介しますので、概要を確認してみてください。
【工務店の2025年問題①】新築住宅・非住宅の省エネが義務化される
2025年4月以降から、新築住宅・非住宅の省エネ基準への適合が義務化されます。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けたもので、新しい住宅は以下の基準を満たす必要があります。
外皮基準 | 住宅の外壁やドアなどの気密断熱性能を評価する基準 |
一次エネルギー消費量基準 | 住宅が1年間で消費するガスや電気といったエネルギー量に関する基準 |
工務店は省エネ基準へ対応するとともに、顧客へ新しい価値提供を考えなければなりません。なお、2030年にはすべての新築住宅をZEHレベルへ引き上げることが決まっています。
【工務店の2025年問題②】4号特例が縮小する
2025年4月からは「建築確認・検査」「審査省略制度(4号特例の縮小)」の対象範囲が変更となります。
新4号特例で変更される一例は以下のとおりで、工務店は適切な対応が必要です。
改正前 | 改正後 |
4号建築物 | 「新2号建築物」か「新3号建築物」 |
延べ面積500㎡以下 | 延べ面積200㎡以下 |
最高軒高9m以下 | 軒高制限なし |
最高高さ13m以下 | 最高高さ16m以下 |
「確認申請書・図書」を提出(新2号建築物の場合) | 「確認申請書・図書」「構造関係規定等の図書」「省エネ関連の図書」を提出(新2号建築物の場合) |
いわゆる4号特例の条文がなくなり、新3号建築物によって4号特例を縮小する形となっています。
【工務店の2025年問題③】空き家率が増える
超高齢化社会は、空き家率の増加を招きます。原因は住人が亡くなって空き家になること、住人が高齢者施設に移ることです。
また、若者が地方から都市へ流れてしまうのも、空き家率が増加する一因でしょう。
2024年には「相続登記の義務化」がスタートします。相続不動産の売却件数が増加し、不動産価格の下落が懸念されるのも2025年問題のひとつです。
【工務店の2025年問題④】労働人口の減少と後継者不足
人材不足と後継者不足も、工務店の経営者を悩ます大きな問題のひとつです。
国土交通省「建設産業の現状と課題(2023年)」によると、建設業で55歳以上が占める割合は「35.9%」と、非常に高齢化が進んでいることが伺えます。一方で29歳以下の従業員の割合は「11.5%」しかおらず、高齢化と若者不足が浮き彫りとなりました。
さらに帝国データバンクの「後継者不在率動向調査(2021年)」では、「61.5%」の企業が後継者不足に悩まされていました。他業界と比べるとどの数字も非常に高水準であり、工務店を存続させるためにも早急かつ戦略的な対策が必要です。
出典:「建設産業の現状と課題」|国土交通省
「後継者不在率動向調査(2021年)」|帝国データバンク
2025年問題と「2024年問題」「2025年の壁」との違いは?

2025年問題と「2024年問題」、「2025年の壁」の違いをまとめました。
2025年問題との違いが明確になれば、工務店がとるべき対策方法が見えてきます。
2024年問題
2024年問題は働き方改革が実施される2024年4月までに、住宅業界が解決すべき「労働環境問題」です。
工務店に影響のある課題は主に二つです。
時間外労働に規制がかかる(新36協定) | 時間外労働は原則「月45時間・年間360時間(特別条項を除く)」まで |
賃金の引き上げ | 月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金が50%アップ。同一労働同一賃金もスタート |
工務店の業務は打ち合わせや工期の関係上、長時間労働が常態化していました。2024年問題を克服するためには、業務を効率的に回して生産性を向上し時間外労働の時間を少しでも減らす工夫が大切です。
2025年の壁
2025年の壁はレガシーシステムから脱却できなければ、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生するというものです。
レガシーシステムとは経済産業省の「DXレポート」で示唆された、複雑化・ブラックボックス化された古いシステムを意味します。「DXレポート」によると、日本企業の約8割がレガシーシステムを抱えていることがわかっています。
使い勝手が悪くセキュリティに不安があるシステムは、業務効率やDX推進への大きな足枷です。
出典:「DXレポート」|経済産業省

工務店が今すぐ対策すべき理由

2025年問題の背景には木材・エネルギー価格の高騰や新型コロナウイルスの流行、耐震性の見直しがあります。近年は1月でも4月並みの気温を観測したり天災に見舞われたりするなど、安心して暮らせる「住宅」の需要が高まっています。
働き方改革が実施されることからも、業務の進め方や人材のニーズが大きく変わるタイミングです。今すぐ2024年問題に対応しないとあっという間に2025年問題を迎えることから、少しでも早く動き出す必要があるのです。
2025年問題の対策法
工務店にとって「2025年問題」は悪いことばかりではありません。単に制約や義務が増えるだけでなく、新しいビジネスチャンスと捉えて積極的に取り組む姿勢が求められます。
ここでは2025年問題に向けて工務店ができる対策方法をお伝えします。
省エネ基準を満たす建築工法を導入する
工務店ができる2025年問題対策のひとつ目は、省エネ基準を満たす建築工法の導入です。
高断熱・高気密を満たす設計や工法によって、住宅のエネルギー効率がアップして2025年問題の基準がクリアしやすくなります。他にも再生可能エネルギーを使った設備や高性能な断熱材などを活用して、エネルギー効率の底上げを図ります。
DX推進指標で現状を把握する
DX推進指標は工務店のDX化に向けて、現状や課題を共有し共通認識を持ってアクションにつなげるツールです。
経済産業省が策定したDX推進指標ではDX化に重要な、35項目がまとめられています。現状と課題を把握できれば、工務店としてどう対策を立てていくかが見えてきます。工務店のDX化を進める際は、以下のページを参考にしてみてください。
経済産業省: | DX推進指標 |
お客様へベネフィットを伝える
2025年問題は住宅価格の上昇を招くことから、お客様離れるが懸念されています。
お客様の心を掴んで「選ばれる工務店」になるため、お客様目線に立ってきちんとベネフィットを伝えてください。
耐震性の良さを伝えるときは「震度7の地震が来ても我が家が一番安心です。お子さんが世帯を持っても末長く暮らせます。」といった具合です。
工務店が明るく2025年を迎えるためのポイント
工務店が2025年問題をクリアするためのポイントをお伝えします。

工務店のDX化を推進すること
工務店はクラウドツールの導入によって業務の効率化や利益率のアップに期待できます。工務店向けのクラウドツールには、以下のような種類があります。
- 業務効率化ツール
- 工数管理ツール
- 顧客管理ツール
- メッセンジャーアプリ(工務店と顧客間)
- WEB会議ツール
業務を補助する体制を一日でも早く整えることで、2025年問題に対応し新しいビジネスチャンスを掴む可能性も高まります。

工務店DXにおけるクラウドサービスの重要性・課題やおすすめのサービスをご消化します。
戦略的にIT人材を育成すること
2025年問題に対応するためも、必要なスキルを見極めて積極的にIT人材を育成しましょう。人材の再教育や新しいスキルの獲得(リスキリング)によって、事業の成長が見込めたり離職率を抑えたりできます。
まずはスキルマップを作成し、従業員のスキルや業務経験、ノウハウの可視化から始めてみてください。
まとめ
工務店2025年問題に備えた対策法と心構え課題新基準
今回は工務店が直面する「2025年問題」について、課題と対策ポイントをお伝えしました。
各工務店やハウスメーカーとの差別化が難しくなる以上、お客様の要望に対してコストバランスを見ながら最適な提案をする力が求められます。多角的な人事戦略と並行し業務効率化や顧客管理に役立つツールにも目を向けて、積極的に対策を進めてください。
弊社工務店、住宅メーカー向けコミュニケーションアプリ『つながる家づくり-plantable- 』は、お施主様とのつながりをより強いものに、理想の家づくりの打合せをひとつのtableを囲んでお話しするように気軽に、工務店、住宅メーカー様に寄り添い課題解決をお手伝いします。お気軽にご相談ください。
