建築業界においてBIMの活用は広がっていますが、まだ様子見を続ける企業は少なくありません。
BIMは建築設計に用いられる、革新的なソフトウェアとして注目を集めています。
この記事ではBIMの概要やメリット・デメリット、3D CADとの違いをわかりやすく解説します。
普及率や活用事例も紹介するので、DX化を進めている企業の人はぜひ参考にしてみてください。
BIM(ビム)とは
BIMとはBuilding Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略で、直訳すると「情報を持った建築模型」です。
3Dの建築モデルを作成して設計から施工、維持管理までの業務を効率化できます。
3Dモデルに加えて、壁や柱などの各パーツに属性情報を付与できるのがポイントです。
属性情報とは主に以下を指します。
- 品番
- 数量
- コスト
- 2D
- 3D形状
- 寸法
- 素材
- 性能
BIMの特徴は3Dモデルと平面図などの2次元図面が連動していることです。
そのため、変更点が瞬時に全てのデータに反映されるため、2Dと3Dの行き来がスムーズになります。
情報を持った3Dモデルを作成して、設計から施工までの維持管理に活用することで、建物ライフサイクルの想定や耐久性のシミュレーションが可能です。
非常に高度な知識と技術力が求められますが、国土交通省は公共事業にBIMを取り入れるとしていることから、今後は民間事業でもBIMが普及するでしょう。
なお、BIMの代表的なソフトは以下の通りです。
- Autodesk Revit
- Autodesk BIM 360
- ArchiCAD
- VectorWorks
- Rebro
BIMとCADそれぞれの普及率は?

国土交通省によると、BIMを導入(BIMソフトとBIMを活用できるコンピュータ等を購入済み)している企業は、2022年12月時点で48.4%でした。
日本はまだ導入段階にあり、普及のためのきっかけが作られ始めたところといえるでしょう。
日本でBIMの普及が遅れている理由は、以下が挙げられます。
- BIMツールの開発の遅れや導入費用が高いから
- 技術者が不足しているから
- 設計から施工、維持に至るまでの業界の足並みが揃わないから
- 共通プラットフォームの整備が遅れているから
一方で、BIMの概念はアメリカが発祥とされており、BIMを実現するソフトウェア・ツールの開発が積極的に進められています。
また「fabcross for エンジニア」が実施した調査(2020年)では、機械CADの2D CADの導入率は55.0%、3D CADの導入率は67.2%でした。
2D CADの導入率が高いのは従業員数100人以下の中小企業で、特にAutoCADの使用率が高いことがわかっています。
CIMや3D CADとの違い
CIMはconstruction information modeling(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の略です。
BIMとCIMとの違いは対象となる分野で、BIMは建設工事、CIMは土木工事を対象にしています。
なお、国土交通省は建設分野全体で3次元化を意味するとして、2018年から両者を統合して「BIM/CIM」としました。
3D CADとは平面図などの2次元図面を作ったうえで、別途3Dモデルを作成するもので、モデルと図面が連動していません。
そのため設計変更があるたびに3Dモデルと2次元図面の両方を修正しなけらばならず、時間がかかってしまうのが難点です。
一方のBIMは初めから3Dモデルで作成して2次元図面とも連動しているので、瞬時に変更点が反映されるという違いがあります。
BIMでできること

ここでは、企業の導入率が高いソフトウェア「Revit」をもとに、BIMでできることを紹介します。
3Dモデルの作成
初めから3Dモデルで作成するので、正確な意思疎通ができます。
例えば平面図の長方形が描かれていると、三角柱なのか四角柱なのか、あるいは四角錐なのかはわかりません。
3Dモデルで作成することで誰が見ても共通の図形を認識できるようになり、勘違いをなくせるのが強みです。
また、建物外観を3Dモデルで作成した場合、外壁を透かして構造体を表示することもできます。
モデルを作り直さず「見たいもの」だけを表示させるので、短時間での理解につながるでしょう。
ビューを作成する
ビューとは平面図や断面図、詳細図などの3Dビューと2Dビューのことです。
BIMの平面図は3D空間の中で横方向に切断し、上から見たり下から見たりできるのが特徴です。
ビューの表示を調整すれば、さまざまな図書の作成が行えます。
さらに柱は赤色、梁を青色などに設定して、ビューテンプレートとして保存することもできます。
集計表を作成する
BIMモデルでは、ソフトウェアの中で集計表を作成可能です。
集計表とはBIMモデルを構成する各要素を表形式で集計して、表示する機能を意味します。
BIMモデルとリアルタイムで連動していて、モデルを修正すれば集計表も修正され、集計表を修正すればモデルも修正される仕組みです。
集計表を仕上げ表や部材表に使った際に、モデルとの不整合が起こらないというメリットがあります。
導入で得られるメリット・デメリット

ここではBIM導入によるメリット・デメリットを簡単にまとめました。
これからBIMを導入する場合は、メリット・デメリットをしっかりと把握しておくことが大切です。
BIMの導入で得られるメリット
- 完成形がイメージしやすく社内の意思決定や合意形成がスムーズになる
- 設計変更が即時的に反映されるため、複数案を比較・検討しやすい
- 家具の配置や照明の効果などを初期段階からシミュレーションできる
- 設計図書館での整合性が取りやすくなる
- 正確な図面作成とスムーズなスケジュール進行で施主の印象が良くなる
BIMの導入によるデメリット
- 費用が高く導入が難しい
- 図面から見えない部分もきちんと設計する必要がある
- ソフトウェア同士の互換性が不完全になっている
- データ容量が大きいのでハイスペックなパソコンが必要になる
BIMを活用した事例
ルミネ横浜
ルミネ横浜営業部オフィスの移転・リニューアルに活用された事例です。
入居したまま2か月で改修を行う短納期のプロジェクトでしたが、BIMの3Dモデルのおかげで実際に近い見え方で完成形をイメージ共有できました。
内装や什器の見え方も把握しやすく、デザインの方向性の合意が得られやすくなったり効率的にプロジェクトが進められたりしたのです。
参照:オフィス移転・リニューアルにおけるBIM活用事例(ルミネ様)|アナログ株式会社
玉川組
2018年からBIM/CIMの本格活用を始めた玉川組では、ベテランが中心となりCivil 3DやRevit、InfraWorksなどのソフトを使用しています。
ある土木技術者はBIM/CIIMという言葉がなかった2005年から、Civil 3Dを活用していたのです。
結果として、プロジェクトの合意形成やICT土木における生産性向上の成果をあげました。
BIM/CIMの活用は若手が中心に思われがちですが、ベテランの知識と経験も存分に活かせることがわかる事例といえます。
参照:シニアパワーがBIM/CIM活用を引っ張る玉川組|AUTODESK
まとめ:【BIMとは?】建築BIMとは? 3DCADとの違いをわかりやすく解説
今回は建築設計に革命をもたらしている、BIMについて解説しました。
BIMは建築物のデータベースを設計から施工、維持管理まであらゆる工程で情報活用を行う仕組みです。
世界的にみても、民間事業で普及が進むことは間違いありません。
1日でも早く導入して先行者優位に立てるように、情報のアンテナは切らさないようにすることが大切です。