スキル管理で従業員のスキルを可視化すれば、適切な人材配置によって業務効率化、利益率アップが期待できます。
スキル管理には「スキルマップ」を活用しますが、特別な知識がなくてもエクセルで作成可能です。
この記事では、ITエンジニアを200名以上抱え、日々エンジニアのスキル管理を25年経験してきて効率化し、スキル管理ツールを開発・運用している弊社、DXサービス事業推進部 佐々木舞美がエクセルでスキルマップを作成する方法と項目例、厚生労働省のスキル管理テンプレートを紹介します。
スキル管理に特化した専用ツールもお伝えするので、自社に力量管理を取り組みたい方は参考にしてください。
スキル管理の基本

スキル管理は社員のスキルや資格を一元管理して、最適な人材配置の実現や人事評価につなげることが目的です。
一元管理のおかげで部署やチーム内のスキルバランスを調整できますし、スキルの底上げ(人材育成)を行うこともできます。
スキル管理をしていなければ、プロジェクトを立ち上げるたびに従業員のスキルや業務経験を確認しなければなりません。
スキルの把握に時間がかかれば業務をスムーズに回せませんし、納期に間に合うかなどの目処も立たないでしょう。
スキル管理では「力量管理表(スキルマップ)」の作成が重要になります。
スキルマップは社員のスキルや能力を段階評価して、最適なアサインや的確な力量評価につなげられます。
さらにスキルマップは「ISO9001」を取得する際にも提出が必要です。
ここからスキル管理をエクセルで行う方法とスキルマップの作成手順を公開しますので、書き方を参考にしてみてください。
スキル管理をエクセルで行う方法

スキル管理をエクセルで行う場合は「力量管理表(スキルマップ)」を作成します。
スキルマップとは、従業員一人ひとりのスキル・資格・能力の習熟度を評価したシートのことです。
No | スキル名 | スキルの説明 | 社員A | 社員B | 社員C |
1 | スキルA | スキルAの説明 | 4 | 1 | 3 |
2 | スキルB | スキルBの説明 | 2 | 3 | 3 |
3 | スキルC | スキルCの説明 | 1 | 5 | 3 |
図のように習熟度を数字で表すと現状を把握でき、アサインを最適化したり教育訓練に活用したりできます。
なお、スキルマップは力量表、力量管理表、スキルマトリックスとも呼ばれます。
スキル管理・アサイン管理支援ツール fapi の詳細はこちら
エクセルの力量管理表(スキルマップ)の作り方
ここでは、エクセルによるスキルマップの作成手順を4ステップで紹介します。
エクセルの知識がなくても作成できますので、ぜひ真似をしてみてください。
- 力量管理表(スキルマップ)の作成目的を明確化する
- スキル階層を策定する
- 評価基準を策定する
- 力量管理表(スキルマップ)を定期的に更新・調整する
力量管理表(スキルマップ)の作成目的を明確化する
エクセル作業に入る前に、スキルマップを作成する目的を明確にしてください。
スキルマップは目的によって羅列する関連項目が変わります。
適材適所の人材配置、公平な力量評価、スキルマップを活用した人材育成など、導入目的を組織内で決めておくことが大切です。
スキル階層を策定する
業務に必要なスキルをすべて洗い出したら、エクセルにツリー形式で一覧化します。
スキル項目の選定は業務フローを思い浮かべながら、適度に分解して割り振りましょう。
製造業のスキル管理例 | |
スキル | スキル細目 |
研磨 | |
研磨加工 | 部品の組み立て |
検査 |
スキル管理の粒度を細かくしすぎると複雑になり、使われなくなる可能性が高いので注意してください。
スキル管理の項目数は「30以下」、階層数は「2〜4程度」にとどめるのがおすすめです。
(図では「スキル」「スキル細目」の2階層になっています)
評価基準を策定する
次に、スキルの習熟度に合わせて評価基準を策定します。
3〜6段階が標準的ですが、細くしすぎると評価が難しくなるので「4〜5段階」に抑えてください。
力量管理表(スキルマップ)を定期的に更新・調整する
エクセルでスキルマップを作成したら、そこで終わりではありません。
定期的に更新や調整をかけて、常に最新のスキル管理を行う必要があります。
最新のスキル管理の可視化はシームレスなアサインと正確な力量評価、弱点を補うための人材育成につながります。
スキルマップ項目例(システム開発・製造業)
ここではシステム開発と製造業に分けて、エクセルのスキルマップ項目例を紹介します。
スキル項目は業務フローを思い浮かべながら、適度に分解して割り振りするのがポイントです。
スキルマップ項目例(システム開発)
- ソフトウェア開発スキル
- コーディング力
- システム開発能力
- エラー対応力
- 顧客理解力
- コミュニケーションスキル
エンジニアはプログラミングスキルだけではなく、ユーザーの意図を先回りして考える「顧客理解力」が重要になります。
また、ユーザーの悩みを聞き出せるように、積極的にコミュニケーションを図るスキルも必要です。
スキルマップ項目例(製造業)
- 生産管理スキル
- 研磨加工スキル
- 検査スキル
- スケジュール管理能力
- フォークリフトの資格
- 危険物取扱者の資格
製造業やソフトウェア開発企業はスキル管理がもっとも普及している業界です。
専門性の高い業務が多いため、適切に力量を評価して業務へ活用することが重要です。
業務内容や製品によってスキル管理は大きく変わるので、社員同士で議論を重ねたうえで項目を決定してください。
【無料ダウンロード】スキルマップテンプレート(厚生労働省)
厚生労働省が公表している「職業能力評価シート」の中から、情報システム(レベル1)のスキルマップテンプレートを紹介します。(一部表示が異なります。ダウンロードしたものはそのままエクセルで利用可能です。)
能力ユニット | 能力細目 | 職務遂行のための基準 | 自己評価 | 上司評価 | コメント | |
①ビジネスや社会経済の一般動向の習得 | 政治経済動向、一般常識などの基本的事項や関係するビジネス分野の知識の習得に取り組んでいる | |||||
ビジネス知識の習得 | ②会社の仕組みの理解 | 会社の事業領域や組織形態や組織構造について概要を理解している | ||||
③ビジネスマナーの習得 | 会社の経営理念や社是・社訓等の内容を理解し、可能な範囲で実践している | |||||
①PCの基本操作 | PCの基本的な操作方法を身につけ、セキュリティに留意して適切な使用をしている | |||||
PCの基本操作 | ②ワープロソフト、表計算ソフト等の活用 | ワープロソフト、プレゼンテーションソフト、表計算ソフト等を用いて、見やすい事務文書、表・グラフ作成を行っている | ||||
③情報の検索・加工と整理 | 電子メールの活用やインターネットを使った情報検索を支障なく行っている |
評価の基準は3段階で判定可能です。
- ○ :一人でできている(下位者に教えることができるレベルを含む)
- △ :ほぼ一人でできている(一部、上位者・周囲の助けが必要なレベル)
- × :できていない(常に上位者・周囲の助けが必要なレベル)
そのほかの職種のテンプレートは「職業能力評価シート」のページからダウンロードして利用してください。
システム開発企業や製造業がスキル管理をエクセルで行うデメリット

従業員数が多いとスキル管理が頻雑になりやすい
エクセルによるスキル管理は、ほとんどが手作業です。
製造業やソフトウェア(システム)開発企業のように従業員数が多くなりがちな環境では、スキル管理に時間や手間がかかります。
また従業員数が100人を超えるとエクセルの動作が重くなりやすく、スキルの把握に時間がかかるでしょう。
使いにくいスキル管理シートは敬遠され、作り直しや形骸化の恐れがあることを覚えておいてください。
スキル管理が最新の状態かわからない
エクセルによるスキル管理は、日常的かつ手作業で情報を更新する必要があります。
スキル情報が最新でなければ、効果的なアサインや適切な力量評価を行うことはできません。
そのため、各部署の担当者へ確認が必要だったりプロジェクトの進行が滞ったりするなど、経営に大きな支障が出ます。
スキル保有者を横断検索できない
エクセルでスキル管理をする場合、基本的に部門を超えてのスキル検索はできません。
最適なスキル保有者を探すためにちまちまと確認作業を行う必要があり、手間と時間がかかります。
【エクセル比較】スキル管理ツールに備わっている機能とは?
スキル管理に特化した「スキル管理ツール」は、エクセルに比べて多くのメリットがあります。
- スキル管理が容易
- 横断管理でスキル保有者を見つけやすい
- ファイル破損の恐れがなくセキュリティが高い
- ISOの監査に対応できる
スキル管理ツールはスキルや能力、力量評価の表記が統一なので、分析や検索が容易に行えます。
エクセルと違って部門を横断できるうえ、ワンクリックで検索可能なので業務効率を大幅に改善できるでしょう。
また、最適な人材配置をドラッグ&ドロップだけでシミュレーション可能で、担当者の負担を軽減します。
スキル管理ツールによってはスキルマップを自動で作成できますので、ISO監査の前に慌てることもありません。
スキル管理ツールを導入する際は、ぜひ「IT導入補助金」も活用してください。
最大350万円までの補助が受けられますので、忘れずに申請することをおすすめします。
【無料トライアル】スキル管理・アサイン管理支援ツール fapi

『fapi』はエンジニアのスキルを管理してプロジェクトアサインを強力にサポートするクラウドサービスです。
システム開発会社だから実現できた使いやすいUIと管理項目の自由度の高さ、登録データの集計・分析で課題を解決に導きます。
ここでは『fapi』の導入で実際に改善できた、実例の一部を紹介します。
業務内容 | 今まで | fapi導入後 | 改善率 |
提案候補者の検討 | 60分 | 5分 | 92%削減! |
エンジニア情報の更新 | 30分 | 10分 | 67%削減! |
Excelと比較して業務工数を大幅にカットできるので、業務負荷を軽減したり仕事の受注率を上げたりすることが可能です。
なお、Excelで100人を超えるスキルを管理すると、作成や更新が頻雑になり時間がかかってしまいます。
正確なスキル管理を基にプロセスをしっかりと構築したい方は、無料トライアルで業務の効率化や生産性の向上を確かめてみてください。

まとめ
この記事ではスキル管理の重要性と、エクセルでスキルマップを作る方法についてお伝えしました。
スキルマップは適切な人事配置と正確な力量評価、ISOに提出するなど多くのメリットをもたらします。
ただし、従業員数が多い製造業やシステム開発業は「スキル管理ツール」がおすすめです。
ワンクリックで簡単にスキル保有者を検索したりシミュレーションで最適な人材配置を実現したりできます。