スキルマップを有効活用できていますか?
スキルマップは従業員のスキルを可視化して、正確な人員配置や人材育成、人事評価に活用するものです。
この記事ではITエンジニアを200名以上抱え、日々エンジニアのスキル管理を25年経験してきて効率化し、スキル管理ツールを開発・運用している弊社、DXサービス事業推進部 佐々木舞美が導入事例を参考にしたスキルマップの作成手順と、業種ごとに最適な項目例をわかりやすく解説します。
スキルアップに必要な項目を学んで企業成長につなげたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
【導入事例から学ぶ】スキルマップの作成方法

厚生労働省のスキルマップを導入した「株式会社富士通マーケティング」を参考にした、スキルマップの作成方法を紹介します。
富士通マーケティングはコンサルティングや機器販売、ソフトウェア開発などを提供する企業です。
コンストラクション事業本部においては社員の評価視点が「公的資格・ベンター資格」の取得に隔たり、経験や習熟度の正確な評価がされていないのが課題でした。
そのためコンストラクション事業本部では、事業本部全体の技能レベルの把握を目的にスキルマップを導入します。
評価項目を点数方式にしたり能力ユニットごとにレーダーチャートを作成したりして、強みや弱み、課題を可視化しました。
点数方式にしたことで育成強化のポイントが明確化して、効率的な人材育成を実現しています。
スキルマトリクスの導入方法

ここでは、スキルマップ(スキルマトリクス、力量管理表)の代表的な導入方法についてお伝えします。
スキルマップは厚生労働省の「テンプレート」を活用するか「スキル管理ツール」を活用する方法があります。
どちらも自社に合わせてフォーマットの項目を自由に変更できますし、一から作成する必要がないのがメリットです。
エクセルのテンプレートを活用【厚生労働省】
厚生労働省が公開するスキルマップ(職業能力評価シート)のテンプレートは、多くの企業で活用されています。
人材開発や生産管理など19種類の事務系職種と、エステティック業や警備業といった16業種を整備しています。
さらにレベル別の事務系職種テンプレートが用意され、新人からスペシャリストまであらゆる層が対応可能です。
スキルマップのダウンロード用ファイルは、次の5つのシートに分かれています。
- 表紙(使用方法を記載)
- 職業能力評価シート(本体)
- 必要な知識
- 基準一覧(本体の具体的な知識や能力を記載)
- OJTコミュニケーションノート(面談用ツール)
本格的にスキルマップを導入して、スキル管理や人材教育に力を入れたい方は以下からダウンロードしてみてください。
キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード
スキル管理ツールの活用
厚生労働省の職業能力評価シートに対応せず、従業員が50人を超える企業には「スキル管理ツール」が有効です。
スキル管理ツールとは従業員のスキルや能力、業務経験などを一元管理して、人員配置や人材育成を効率化するツールです。
部署を超えてスキルを横断検索したりスキルマップを自動で作成したりするなど、機能性にも優れています。
エクセルのスキル管理は項目の洗い出しや手入力の作業に時間がかかることから、スキルマップの導入をためらう企業も少なくありません。
スキル管理ツールで項目の入力や確認する手間を解消して早期に業務を改善したい方は、検討してみるといいでしょう。
【項目例】業種別・スキルマトリクスのテンプレート
厚生労働省では16種類の業種別に、スキルマップのテンプレートを用意しています。
- エステティック業
- 警備業
- 葬祭業
- ディスプレイ業
- 外食産業
- フィットネス産業
- 卸売業
- 在宅介護業
- スーパーマーケット業
- 電気通信工事業
- ホテル業
- ビルメンテナンス業
- アパレル業
- ねじ製造業
- 旅館業
- ウェブ・コンテンツ制作業
ここでは、電気通信工事業の「職業能力評価シート(施工技能 レベル2)」の項目例を紹介します。
能力ユニット | 能力細目 |
能力開発 | ①能力開発の計画 |
②能力開発の実施 | |
③能力開発の評価及び改善 |
電気通信工事業のスキル項目は37種類にも及び、自社の業務に合わせて項目の変更も可能です。
以下から簡単にダウンロードできますので、ぜひ活用してみてください。
キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード
【職種別】スキルマップの作り方と項目の具体例

人材育成を目的にスキルマップを導入する企業が増えています。
スキルマップを活用すれば現状把握と次に何をすべきかがわかるので、ステップを追って成長が見込めます。
ここでは、職種別にスキルマップの設定方法と項目例についてお伝えします。
営業職・コンサル職のスキルマップ・項目例
営業職・コンサル職のスキルマップを作成すると、成績や個人のモチベーションが向上します。
他者と比較してスキルを伸ばす意欲が生まれ、スキルマップで自身の成長を感じられるからです。
営業職・コンサル職に必要なスキル項目は、顧客管理能力から製品に関する知識、コストや時間の管理まで多岐に渡ります。
営業職のスキル項目例 | 提案力 |
コミュニケーション能力 | |
交渉力 | |
積極力 |
製造業界のスキルマップ・項目例
製造業はスキルマップの導入がもっとも普及している業種です。
営業から生産技術、経理など職種が多様なことから、スキルマップで適切に活用して育成や評価を行うことが望ましいです。
ここでは、新しい設備を導入したり従業員に指示を出したりするスキルが求められる、生産技術職のスキル項目例をお伝えします。
生産技術職のスキル項目例 | コミュニケーション能力 |
生産性や稼働率の評価・検証 | |
精度の測定スキル | |
品質管理 |
ITエンジニア(IT人材)のスキルマップ・項目例
IT業界もスキルマップの導入が進んでいる業界として知られます。
近年はハードスキルに加えてソフトスキルも重視されるなど、ITエンジニアに求められるスキルが多様化しています。
変化のスピードが早い業界なので、必要なスキルを的確に取得して時代に取り残されないように注意しましょう。
システムエンジニアのスキル項目例 | プログラミング能力 |
要件定義 | |
セキュリティ関連のスキル | |
コミュニケーション能力 |
経理など事務職のスキルマップ・項目例
事務系職種は業界や職種によってスキル項目が異なりますが、経理では資産運用や税金関連の知識・能力が求められます。
さらに、お金を取り扱う関係から「正確さ」と「スピード」も重視されます。
スキルマップで項目を設定する際は、FASSや日商簿記など「公的資格」を組み合わせる方法もおすすめです。
経理のスキル項目例 | 原価計算 |
経理業務の推進 | |
経理業務の検証と評価 | |
コミュニケーション能力 |
スキルマップの導入が重要な理由

従業員のスキル向上は企業が成長するための要です。
スキルマップの作成が重要な理由としては以下が挙げられます。
- 誰がどのようなスキルを保有しているか把握するため
- 的確な人員配置を実現するため
- 効率的な人事評価・人材育成につながるため
従業員一人ひとりのスキルを把握することで、不足しているスキルが明確になります。
スキルアップは自身の成長を感じられるだけでなく、業務の幅が広がることでモチベーションアップにもつながるでしょう。
的確な人員配置は成果物のクオリティを高め、短納期化にも期待ができます。
スキルマップの導入は意味がない?
スキルマップは、ただ作成するだけでは効果がありません。
目的を明確にして正しいスキル項目を設定したうえで、活用・運用していくことが重要です。
例えば、スキルマップで評価した後に従業員が何も行動しなかった場合、「ただ評価しただけ」になってしまいます。
具体的にスケジュールを決めてリスキリングや資格取得に向けて行動することで、初めてスキルマップを活用したといえるのです。
まとめ
明確な目的をもとに設定したスキル項目は、正確な人員配置や人材育成、人事評価に役立ちます。
この記事で紹介した厚生労働省のスキルマップテンプレートも活用して、環境に合わせて調整・更新を行なってください。
人材のスキルを底上げして、多様化するニーズに応える企業を目指してください。