「リソースマネジメントとは?」と聞かれた際に、きちんと答えることができますか?
リソースマネジメントはプロジェクトを成功に導くために、避けては通れない取り組みです。
この記事ではリソースマネジメントの重要性や種類、管理方法について日々エンジニアのリソース管理を25年以上経験してきて効率化し、リソース管理ツールを開発・運用している弊社・佐々木舞美がわかりやすく解説します。
限りあるリソースを最大限に活用してプロジェクトを完遂したい方は、ぜひ参考にしてください。
リソースマネジメントとは?

リソースマネジメントとはリソースを適切に分配して、プロジェクトを成功させるための管理手法です。
プロジェクトに必要なリソースは、業界や企業によって全く違います。
必要なリソースを見極めて過不足なく分配することで、プロジェクト成功(=利益確保)の確率を高められるのです。
日本語訳でのリソースマネジメントとは?
リソースは「経営資源」、マネジメントは「管理」を表すことから、日本語訳でのリソースマネジメントとは経営資源管理となります。
ビジネスにおけるリソースとは、以下の要素で構成されます。
- ヒト
- モノ
- カネ
- 時間
- 情報
これらに加えて、ノウハウや知的財産といった無形資産が含まれることもあります。
なお、リソースの中でもヒトを管理する「ヒューマンリソースマネジメント」がもっとも重要です。
ヒューマンリソースとマンパワーの違い
ヒューマンリソースとは類義語にあたるのがマンパワーです。
マンパワーは「人によって生み出される労働力」を意味します。
厳密な括りはありませんが、ヒューマンリソースとマンパワーが使われる用語の業界は異なります。
IT業界や金融業界はヒューマンリソース、医療・看護業界はマンパワーと覚えておくといいでしょう。
リソースの不足とはどういうことでしょうか?

通常、一つのプロジェクトに使えるリソースは決まっています。
リソース不足とは、プロジェクト進行中にヒトやカネなどのリソースが枯渇することです。
IT業界では時間やエンジニアが足りなくなり、プロジェクトが納期に間に合わないことを「炎上プロジェクト」といいます。
人材の欠員が長引くと他の従業員への業務負担が増加し、業務の属人化や人材の離職を招く恐れがあります。
あらかじめリソースには余裕を持たせておき、問題が発生した際の対応方法を検討しておくことが重要です。
リソースが不足する原因
リソースが不足する原因は大きく2つです。
- 計画に必要なリソースを把握していない
- プロジェクト進行中のリソースの動きを把握していない
「ヒト」「モノ」「カネ」「時間」「情報」の状況は、絶えず変化しています。
このため、リソースの動きをリアルタイムで把握・管理する取り組みが求められます。
必要なリソースを明確化して、プロジェクト進行中にリソースの動きを把握したい場合は「リソース管理ツール」が有効です。
リソースマネジメントが重要視される理由

どの企業もプロジェクトでは「コスト削減」「短納期化」「品質確保」を重視します。
プロジェクトに充てられるリソースは決まっています。
ヒトや時間、情報などを管理しなければ、人件費がかさんだり無駄な業務が増えたりする可能性が高まるでしょう
リソースマネジメントは「コスト削減」「短納期化」「品質確保」を実現するために欠かせない取り組みなのです。
リソースマネジメントの種類とは?
一般的に、リソースマネジメントとは次の5つの要素に分類されます。
ヒトのマネジメント | スキルや業務経験、プロジェクトの参画経験などを管理する |
モノのマネジメント | 材料や設備、重機にソフトウェアなど仕事に関連する道具を管理する |
カネのマネジメント | メンバーの給与や開発資金、融資などを管理する |
情報のマネジメント | 顧客情報やノウハウなどを共有して業務効率を向上するマネジメント方法 |
時間のマネジメント | 限られた時間内で最大限の成果を上げるためのマネジメント方法 |
リソースは、企業やプロジェクトによって求められる「質」や「量」が異なります。
的確なリソースマネジメントとは「自社のリソースをカテゴリーごとに明確化すること」から始まります。
方法から考えるリソースマネジメントとは?
リソースマネジメントとはどのような管理方法があるのでしょうか。
ここでは、リソースマネジメントの代表的な管理方法を一覧にまとめました。
チームリソースマネジメント(TRM) | メンバー一人ひとりの特性を理解して能力・モチベーションを引き出す方法 |
ヒューマンリソースマネジメント(HRM) | 人材を経営資源として捉えて有効活用する方法 |
クルーリソースマネジメント(CRM) | ヒトやモノといった全リソースを活用して業務遂行能力を向上する方法。主に航空管制や消防の現場で活用される |
WBS | タスクを細分化してプロジェクトの全体像を把握する方法 |
タレントマネジメントシステム | 個人情報や異動履歴などの情報から人員配置・人材育成につなげるシステム。主に経営層や人事部で活用される |
リソース管理ツール | スキル管理やアサイン管理を最適化するシステムで主に現場で活用される |
用語は似ていますが意味はそれぞれ異なるため、自社に合ったリソースマネジメント方法を採用してください。
おすすめ書籍から学ぶリソースマネジメントとは?

ここでは「書籍から学ぶリソースマネジメントとは?」という疑問にお答えします。
機長のマネジメントーコックピットの安全哲学「クルーリソースマネジメント」
飛行中に緊急事態が発生した際に、機長と副操縦士はどう決断して行動するのかをまとめた書籍です。
クルーリソースマネジメントは高度で的確な判断・行動をとるための訓練プログラムで、全日空で導入されています。
「限られたメンバーをどう有効活用するか」を知りたい経営者におすすめです。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
世界で一番読まれた経営学書『マネジメント』を題材にした、高校生が甲子園出場をめざす青春小説です。
マネジメントを基礎から学べるうえ、面白いストーリーに惹き込まれて最後まで飽きずに読み進められます。
マネジメントの捉え方から考え方、行動の仕方まで経営者必読の一冊といえます。
PMBOK人的資源マネジメントの重要性
PMBOKとはプロジェクトマネジメントの知識やノウハウをまとめた資料で、人的資源マネジメントはPMBOKに含まれる領域の一つです。
PMBOK人的資源マネジメントのメリットは、プロジェクト達成に必要なチームを育成してパフォーマンスを高められることです。
成果物の出来はチームに左右されることから、チーム作りを体系的にまとめたPMBOK人的資源マネジメントは、有効性が非常に高いと言えます。
なお、PMBOK人的資源では、顧客やスポンサーといったステークホルダーもチームの一員と定義しています。
リソース不足を防ぐポイント

研修やセミナーを活用する
研修やセミナーでリソースマネジメントを学ぶことで、リソース不足を防げます。
書籍を使って自主学習もできますが、解決できない問題や不明点が生まれることもあるでしょう。
研修やセミナーを活用すればリソースマネジメントを体系的に学べますし、行動に落とし込むことで理解をより深められます。
スキルマップを作成する
スキルマップとは人材のスキルを一覧にして、人員配置・人材育成に活かす手法です。
習熟度に合わせて「数値」で評価を行い、誰でも客観的にスキルレベルを把握できます。
プロジェクトアサインにスキルマップを活用すれば、短納期化や品質の担保が期待できます。
コミュニケーションをとる
リソース不足を防ぐには、日頃からのコミュニケーションも大切です。
急な欠勤が出た際に「メンバー全員が知らなかった」という事態は、しばしば発生するものです。
日常的にコミュニケーションが取れていれば、仕事の優先順位が決めやすかったりすぐにフォローに回れたりするでしょう。
まとめ
今回は、実務者が「リソースマネジメントとは?」について簡単にまとめました。
リソースマネジメントとはヒトやモノ、情報といった経営リソースを適切に分配して、プロジェクトを効率的に進めることです。
課題を乗り越えながら徐々にステップアップして「短納期化」と「品質向上」を目指してください。