一般的にプロジェクトの予算には限りがあり、プロジェクト発足時に予算を設定します。
仮にプロジェクトを完了したとしても、コストが予算を上回っていた場合は成功とはいえないでしょう。
「コスト管理の基礎知識を知りたい」「赤字プロジェクトを回避したい」というPMの方は多いかもしれません。
この記事では、PMBOKにおけるコスト管理の基礎知識から実施作業までを解説します。
PMBOKを活かしてプロジェクトを「成功」に導きたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
プロジェクトマネジメントとは?

プロジェクトマネジメントとはプロジェクトを計画通りに遂行して、QCDを守ることです。
QCDはQuality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)を表し、プロジェクトにおけるQCDは決まっています。
そのため、QCDをいかにムダなく効率的に管理・運用することができるかが重要です。
プロジェクトマネージャー(PM)には、プロジェクト進行中でもQCDの見直しを行い、バランス調整や適切に再配分する能力が求められます。
PMBOKとは?コスト管理との関係

PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに必要な知識や手法を体系的にまとめたものです。
1987年にアメリカの非営利団体PMIが発表し、PMBOKは現在のプロジェクトマネジメントの国際的標準となっています。
PMBOKガイドは「10の知識エリア」と「5つのプロセス」、「3つのパート」で構成されています。
10の知識エリア | 総合マネジメント |
スコープマネジメント | |
タイムマネジメント | |
コストマネジメント | |
品質マネジメント | |
人的資源マネジメント | |
コミュニケーションマネジメント | |
リスクマネジメント | |
調達マネジメント | |
ステークホルダーマネジメント |
5つのプロセス | 立ち上げ |
計画 | |
実行 | |
監視・コントロール | |
終結 |
3つのパート | 入力 |
ツールと実践 | |
出力 |
なお、本記事で取り上げる「コスト管理」は、PMBOKの10の知識エリアの「コストマネジメント」に該当します。
PMBOKのメリットは、効率的にQCD(品質・費用・納期)を管理できることです。
プロジェクトに応じて必要なプロセスを選択することで、効率的にプロジェクトを進められます。
PMBOK活用の注意点

コスト管理にPMBOKを活用する際は注意点もあります。
ポイントを押さえて、赤字プロジェクトを回避しましょう。
イレギュラーな事態に対応しにくい
近年のビジネス環境は、IT技術の急速な発展によって変化や競争の激しさが増しています。
PMBOKの最新版は2021年発行の第7版となっており、これまで通りのマネジメント方法が通用しないケースがある恐れがあります。
イレギュラーなケースに遭遇した場合は、対処した方法を自社で蓄積・共有しておくことが大切です。
培ったノウハウをPMBOKと組み合わせて、変化の激しい時代に対応していきましょう。
人材に関連する情報は少ない
プロジェクトを推進するのは、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーです。
しかしながら、PMBOKはプロジェクトを推進する人に必要な、スキルや能力について記載がありません。
経験豊富なPM・PLならば、これまでの経験や人間関係を活かしてプロジェクトを進められますが、経験の浅い人は難しい部分があります。
そのため、プロジェクトマネジメント能力に加えて、コミュニケーション能力や問題解決能力、適応力などを鍛えておくことが重要です。
PMBOK(コスト管理・コストマネジメント)の基礎知識

コストマネジメントはPMBOKの一領域です。
PMBOKの第6版ではコストマネジメントを以下のように定義しています。
プロジェクトを承認済みの予算内で完了するためのコストの計画、見積もり、予算化、資金調達、財源確保、マネジメント、およびコントロールを行うためのプロセスからなる |
コストマネジメントの目的は、予算内でプロジェクトを完了することです。
一般的にプロジェクトの予算は決まっているので、限られた予算を使っていかに顧客や消費者のニーズに応えるかが大切になります。
納期を守るのはもちろんですが、PMはQCDのバランスを調整しながらプロジェクトを進める能力が求められます。
PMBOK(コスト管理・コストマネジメント)の実施作業

プロジェクトコストマネジメント(コスト管理工程)のプロセスは「コストマネジメント計画」「コスト見積り」「予算設定」「コストコントロール」の4つの作業に分かれます。
コストマネジメント計画
まずは、コスト管理を行うための方針やルール、手順を決めましょう。
プロジェクト憲章やプロジェクトマネジメント計画書から、予算とコストに関する情報を確認してください。
専門家や関係者から承認を得たら「コストマネジメント計画書」を作成します。
コストマネジメント計画書には以下の項目を記述しましょう。
項目 | 説明 |
コスト見積もりの有効桁数 | スコープや規模に応じた見積もり精度を決める |
コストの測定単位 | 労働時間数、日数など測定に使用する単位を定義する |
組織の手続きとのリンク | コスト管理に使用するWBS要素と会計システムのコードを紐付ける |
コントロールしきい値 | コスト実績の許容範囲を決める |
パフォーマンス測定の規則 | EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)で使われる計算式を決める |
報告形式 | コストに関する報告内容と頻度を決める |
プロセス記述 | このあと行うコスト見積もり、予算設定、コストコントロールのプロセスを定義する |
リソースの確保
以下の資料を確認しながら、プロジェクトに必要なリソースに対して妥当なコストを、定量的に見積もります。
資料 | 確認事項 |
人的資源マネジメント計画書 | プロジェクトに必要な人員、単価、報酬などを確認する |
スコープベースライン | 成果物の情報と、セキュリティやライセンス、契約といった法律関連を確認する |
プロジェクトスケジュール | タスクに割り当てた資源や量、期間を確認する |
リスク登録簿 | リスク対策費を確認する |
ここから、実際に見積もりを行う手法を3つお伝えします。
類推見積もり法
過去の類似プロジェクトに基づいて、コストを相対的に見積もる手法です。
パラメトリック見積もり法
過去の情報と他の変数の統計的関係を使って見積もる手法です。
ボトムアップ見積もり法
タスクや工程から工数を見積もり、それらを積み上げて全体の工数を見積もる手法です。
予算設定
コスト見積もりが終わったら、その見積もりを元にプロジェクト全体の予算を設定します。
プロジェクト・スケジュールを把握しながら時系列に予算配分して、コストベースラインを作成しましょう。
通常、プロジェクトの予算は一度に与えられるものではなく、期間ごとに必要な予算が分割されます。
予期せぬリスクに備えて、余裕を持たせたうえで「プロジェクト資金要求事項」を作成し、予算を要求してください。
コストコントロール
コストコントロールではプロジェクトを監視しながら、コストベースラインとコスト実績の差異を分析します。
分析にはEVM(アーンド・バリュー・マネジメント)を用いて、コストやスケジュール、スコープを統合的に測定します。
結果からコストベースラインの変更が必要になった場合は、迅速に変更要求を行ってください。
なお、プロジェクトにおけるPMBOKコスト管理には「コスト管理ツール(プロジェクト管理ツール)」がおすすめです。
「コスト管理ツール」では、プロジェクトにおけるコストの動きや工数予算・実績を確認できるため、迅速な判断と行動を手助けしてくれます。
まとめ
今回はPMBOKにおけるコスト管理の基礎知識や、プロジェクトに落とし込む実践方法について解説しました。
PMBOKコスト管理は、プロジェクトを予算内で完了させるために欠かせません。
プロジェクトにかかっているコストを明確にしたい方は、コスト管理ツールの導入を検討してみてください。
ヒト・モノ・カネの流れを見える化できるうえ、コストの差異を自動で分析して迅速な判断・行動につなげます。