プロジェクトを効率的に進めるため、稼働率の高さを意識している方は多いのではないでしょうか。
しかしながら、稼働率が100%あるいは100%を超えている現場は、注意しなければなりません。
この記事では稼働率の概要と数値に対する捉え方、プロジェクトに最適な稼働率の計算方法を解説します。
適正値の事例や改善方法もお伝えするので、現場の稼働率を高めたい方は参考にしてみてください。
稼働率とは?

稼働率とは本来生産できる量に対してどれだけ生産できたかを、パーセンテージで表したものです。
一言でいうと「作業効率」や「生産効率」となります。
稼働率を算出する目的は、業務の「ムダ・ムリ・ムラ」を発見して改善につなげることです。
もちろん、稼働率は高ければ高いほど理想的です。
稼働率はおもに生産管理の現場で用いられますが、近年はITプロジェクトでも使われるようになりました。
有償稼働率とは?
有償稼働率とは全稼働時間のうち、クライアントからお金をもらって働く時間の割合です。
たとえばプロジェクトのアサインがないときや研修を受けているときは、稼ぎがなく会社から給料をもらっているだけの状態になります。
いつも案件やプロジェクトがあるとは限りませんが、企業側としては有償稼働率をできるだけ増やしたいという思いがあります。
有償稼働率の目標値は企業によって違いますが、90%が1つの目安です。
可動率・占有率との違い

ここでは、稼働率と可動率・占有率との違いを見ていきましょう。
可動率
稼働率 | 作業効率や生産効率を表す指標 |
可動率 | 運転効率を表す指標 |
可動率は機械や設備の運転効率を表す言葉で、おもに生産現場に用いられています。
可動率の計算方法は以下のとおりです。
可動率(%) = 正常に運転した時間 ÷ 総運転時間 × 100 |
機械や設備の可動率が100%に近い状態になると、生産性は向上することになります。
なお、可動率は稼働率と読み方が同じなので、可動率は「べきどうりつ」と呼ばれることが多いです。
占有率
稼動率 | 生産能力に対してどれだけ生産できたかを示す割合 |
占有率 | 顧客対応時間と待機時間に占める顧客対応時間の割合 |
コールセンターのオペレーターは、稼働率に加えて占有率もチェックされることがあります。
一般的に、コールセンターの占有率の適性値は、80%前後とされています。
占有率の計算方法は以下のとおりです。
占有率(%) = (通話時間 + 保留時間 + 後処理時間) ÷ (通話時間 + 保留時間 + 後処理時間 + 待機時間) × 100 |
占有率が低下していると人員過多、占有率が高いと人員不足で業務に負担がかかっている可能性が高いです。
システム開発プロジェクトにおける稼働率

システム開発のプロジェクトにおいても、稼働率は用いられます。
これまでと同様に、生産能力に対してどれだけ生産できたかを示す指標を意味します。
プロジェクトにおける稼働率の計算方法は「生産量ベース」と「稼働時間ベース」の2種類です。
生産量ベース | 稼働率(%) = 実際の生産量 ÷ 生産能力 × 100 |
稼働時間ベース | 稼働率(%) = 実際の稼働時間 ÷ 本来稼働すべき時間 × 100 |
たとえば稼働時間が8時間で実際の稼働時間が7時間だった場合、稼働率は87.5%となります。
詳しくは後述しますが、稼働率は100%を目指しません。
稼働率を計算する目的は勤務時間の多くを占める、不必要な業務やルーティンワークを減らすことです。
仕事のための仕事を減らすことが、稼働率アップにつながるのです。
計算した数値はどのように捉えるべきか?【プロジェクト効率化】

稼働率を求めた際の数値に対して、どのように捉えるべきでしょうか。
稼働率が低いときと高いときの対応方法を理解して、プロジェクト効率化への1歩を踏み出しましょう。
稼働率が低いとき
稼働率が低いときとは、本来の生産能力に対して実稼働が低い状態です。
稼働率が低くなる原因は、次の2つが考えられます。
- 閑散期で仕事が少なく暇な状態が続いているから
- 本来業務に費やすべき時間を使えていないから
基本的に、仕事には繁忙期と閑散期が存在します。
仕事が少ないときは営業に力を入れて、受注案件を増やしプロジェクトを立ち上げることで解決できるでしょう。
一方で、忙しくしているのにもかかわらず、稼働率が低い場合は原因を調査する必要があります。
例えば稼働率が55%しかなかった場合に、残りの45%は何をしているのかを突き止めるのです。
原因を分析して対策を講じることで、プロジェクトが効率化され生産性・利益のアップが見込めます。
稼働率が高いとき
稼働率が高い場合は、本来の生産能力に対して実稼働が高い状態にあります。
繁忙期で仕事が多く、たくさん業務をこなさなければならないときに起こりやすい現象です。
稼働率は100%が理想というわけではなく、100%を超えている場合は特に注意しなければなりません。
稼働率はメンバーの生産能力から割り出される数値ですが、100%を超えるということは通常以上に負荷がかかっていることを意味します。
稼働率の適性は、プロジェクトやその人の立ち位置によって変わることを覚えておいてください。
プロジェクトで前後の工程に待ちが発生?稼働率100%の注意点

稼働率が100%あるいは超えている場合は、その人がボトルネックになり前後の工程に待ちが発生します。
部分的に見ると問題ないように思えても、全体で見ると生産性が低下してしまうので注意しなければなりません。
従業員に強いストレスがかかると、本来のパフォーマンスを発揮できず、最悪の場合は体調を崩す恐れがあります。
従業員が体調を崩してしまうと、他の従業員の負荷がさらに高まり、プロジェクトの進行が困難になるかもしれません。
稼働率は100%ではなく、現場ごとに90%や95%などの適性値を設定することが大切です。
プロジェクト全体を俯瞰して、先を見越した余裕のあるマネジメントを実現してください。

最適なパフォーマンスは稼働率と生産性であわせて考える事で実現

最適なパフォーマンスを実現するためには、稼働率と生産性を同時に考える必要があります。
まずは現状の稼働率を算出して、稼働率が適正かどうかを判断しましょう。
稼働率の適性値は、プロジェクトやその人の立ち位置によって違います。
たとえばプロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダー、プロジェクトメンバーでは業務内容が異なるので稼働率の目安が変わるでしょう。
たとえばトヨタの生産方式では、95%が適正値としています。
稼働率と生産性を確認する方法として有効なのが、生産管理ツールです。
生産管理ツールを導入すると「誰が」「いつまでに」「何をしているか」を可視化できます。
プロジェクトメンバーがどれほど仕事を抱えているかがわかるため、勤務時間内でいかにタスクを効率的にこなせるかを検討できるのです。
まとめ
この記事では、稼働率の概要と計算方法について解説しました。
ITプロジェクトにおける稼働率の求め方は以下のとおりです。
- 生産量ベース:稼働率(%) = 実際の生産量 ÷ 生産能力 × 100
- 稼働時間ベース:稼働率(%) = 実際の稼働時間 ÷ 本来稼働すべき時間 × 100
プロジェクトメンバーに負担をかけすぎないように、稼働率は90%〜95%を目指してください。
メンバー1人ひとりの業務を可視化して、パフォーマンスを最大限に引き出しましょう。