人事管理システムを導入すると情報共有がスムーズになり、スマートな人事労務業務が可能になります。

人事評価のばらつきを抑えたり適切な人材配置を実現できたりすることから、さまざまな企業で導入が進んでいます。

この記事では自社にあったシステムの選び方を、機能の比較ポイントを交えながら解説します。

導入するメリットだけではなくデメリットにも触れているので、システム選びの際の参考にしてみてください。

人事管理システムとは

人事管理システムとは

人事管理システムとは従業員に関する情報を一元管理して、人事・労務・タレントマネジメントにおける業務を効率化するシステムです。

従来の人事管理は手作業やエクセルで行われていましたが、入力に時間がかかったりミスが起こりやすかったりするのが課題でした。

人事管理システムは人事情報ごとに必要な機能が用意されており、総合的な人事管理が可能です。

例えば勤怠管理や給与計算ソフトと連携すれば、給与計算が自動化されて人事部門の業務効率化につながります。

これまでのシステムは大企業を中心に導入されていましたが、近年はコストを抑えたクラウド型が登場し、中小企業でも導入が進んでいます。

人事管理システムのタイプと機能

人事管理システムは、以下のように5つの基本機能を備えています。

人事管理・労務管理入社・退社の手続きや社会保険などの申請を行う
勤怠管理社員の出退勤を管理したり残業時間・休日出勤を管理したりする
給与計算勤怠データをもとに給与を計算する。残業代や所得税、年末調整の処理なども行う
採用管理応募者の情報や採用の進捗状況を管理する
タレントマネジメント従業員のスキルを管理して人材配置の最適化や適切な人事評価につなげる。またリーダー・後継者の育成にも活用される

また、マネーフォワード クラウド人事やSmartHRといった製品は、他システムとの連携機能を備えています。

勤怠データをシステムと連携することで、勤怠データの手入力の負担が軽減され正確な給与計算を行えるようになります。

人事管理システムの選び方や比較ポイント

人事管理システムの選び方や比較ポイント

人事管理システムは、大きく3つのタイプに分けることができます。

  • 人事管理・労務管理を統合したERP型人事管理システム
  • 人事情報の一元管理に特化した人事管理システム
  • 人事評価・タレントマネジメントに特化した人事管理システム

自社の課題と導入目的を整理して、それぞれのシステムの特徴・機能を照らし合わせてみてください。

人事管理・労務管理を統合したERP型人事管理システム

ERP型人事管理システムは人事・労務・給与計算など、複数の業務を1つのシステムで管理できる仕組みです。

複数のシステムを使い分ける必要がなく、データの二重入力や転記ミスが起こりにくいことから業務効率が大きく向上します。

例えば入社手続きで登録した人材情報は、自動的に給与計算や勤怠管理に反映され担当者の作業時間を短縮可能です。

また、法改正や就業規則の変更にも柔軟に対応できる製品が多く、長期的な運用に適しています。

人事情報の一元管理に特化した人事管理システム

人事情報の人事管理システムは従業員の基本情報から保有スキル、異動履歴までの一元管理に特化しています。

情報の検索や更新がしやすく、データの整合性を維持しやすいのが特徴です。

昇進候補者のスキルや評価履歴もすぐに確認できるため、研修計画の策定がスムーズに行えるでしょう。

人事評価やタレントマネジメントが必要なく、人材情報の効率化を優先したい企業に特におすすめです。

人事評価・タレントマネジメントに特化した人事管理システム

人事評価・タレントマネジメントに特化した人事管理システムは、従業員の能力や成果を可視化して配置戦略や人材育成に活用することを目的にしています。

目標管理(MBO)や360度評価などのデータ化により、評価の一貫性と透明性を高められるのが特徴です。

また部署ごとの評価基準や目標進捗をリアルタイムで共有でき、評価のバラつきを防いだり公平な人事判断につなげたりします。

人事評価・タレントマネジメントに特化した人事管理システムは、人材戦略を積極的に進めたい企業におすすめのシステムといえるでしょう。

ソフトを導入するメリット

ソフトを導入するメリット

人事管理システムは日々の業務を効率化して、情報活用の精度を高められます。

  • 従業員情報の共有がスムーズになる
  • 人事労務業務が効率化される
  • 人事評価のばらつきがなくなる
  • 適材適所の人材配置が実現する

ここからシステムの導入で得られるメリットを1つ1つ見ていきましょう。

従業員情報の共有がスムーズになる

人事管理システムを導入すると、営業所や部署をまたいで従業員情報の共有をスムーズに行えます。

役職の変更や異動直後の連絡先はリアルタイムで反映され、営業や総務など複数の部門間で同じ情報を参照可能です。

結果として社内の連携ミスが減り、業務スピードを維持できます。

特に多拠点展開やリモートワークを採用している企業は、迅速かつ正確な情報共有が業務効率化に大きく影響します。

人事労務業務が効率化される

人事管理システムは勤怠管理や給与計算、社会保険手続きなどの人事労務業務を自動化できます。

例えば勤怠データをシステムに取り込むと、残業時間や有給残日数が自動で計算され、給与や社会保険の処理にも反映されます。

普段の担当者の負担が減るだけではなく、繁忙期でも業務の正確性を保てるでしょう。

人事評価のばらつきがなくなる

人事管理システムの活用で評価基準や評価プロセスが統一され、組織や担当者ごとの評価のばらつきを抑えられます。

システムを利用せず担当者の独断や採点方法が統一されていない状況下では、評価が公平でないケースも多いです。

一方でシステムが提供する評価シートで過去の評価履歴を参考にすれば、担当者が変わっても一貫した評価が可能になります。

評価結果はグラフ化して比較することもできますし、透明性の高い評価体制は従業員のモチベーションアップにつながります。

適材適所の人材配置が実現する

人事管理システムに集約した情報をもとに、適材適所の人材配置を実現できます。

従業員のスキルや特性などを考慮することで、新規事業の立ち上げをスムーズにしたり成果物の品質を高めたりできるのが利点です。

さらに従業員の満足度が向上すれば、離職防止にも大きな効果をもたらします。

ソフトを導入するデメリット

人事管理システムは多くのメリットをもたらしますが、以下のような注意点も存在します。

  • 導入・維持にコストがかかる
  • 教育やマニュアルの策定が必要になる

特にコスト面や運用体制の整備は、中小企業にとって大きな課題になり得ます。

ここでは、導入前に把握しておくべきデメリットについて見ていきましょう。

導入・維持にコストがかかる

人事管理システムは初期導入費用や月額利用料、保守費用などが発生します。

クラウド型の場合はオンプレミス型より初期導入費用は抑えられますが、ユーザー数が増えるたびに利用料も増加する仕組みです。

仮にデータ移行やカスタマイズ、保守運用の外注サービスを利用する場合は、相応のコストも発生します。

そのためサポート費用をはじめ、システム障害などで失われる機会損失コストやインシデント復旧コストなども確認しておくことが重要です。

教育やマニュアルの策定が必要になる

教育時間やマニュアルの整備が必要なのも、人事管理システムのデメリットといえます。

特にこれまで紙やエクセルで管理していた企業は、業務フローや操作方法の変化に慣れるまで時間がかかるかもしれません。

またシステムに新機能が追加されたり仕様が変更されたりした際には、マニュアルの更新や社内研修が必要になります。

まとめ

人事管理システムは、自社の課題や目的に合わせて適切なタイプを選ぶことが大切です。

  • ERP型は人事労務管理を統合的に管理できる
  • 一元管理に特化したシステムは情報精度の高さと検索性に強みがある
  • タレントマネジメント型は人材育成や配置戦略を高度化する

人事管理システムは、中小企業にとっても業務効率化と戦略的人材活用を実現する有用なツールです。

自社の現状と将来像を踏まえて最適なタイプを選択して、教育やマニュアル策定にも注力しましょう。