ITエンジニアや社員のスキル管理ツールfapi(ファピー)を提供する株式会社エフ・ディー・シーのDXサービス事業推進部 佐々木舞美が、200名以上のITエンジニアを抱えSES事業を25年以上続けてきた立場から「SESとビジネスパートナー」を解説します。
SES企業の多くが、自社のエンジニアだけでは顧客の要望に応えきれず、協業できるビジネスパートナー(BP)を常に探しています。一方で「SESとBPの関係がよく分からない」「パートナーとして取引を始めるには何が必要か」という相談も増えています。
この記事では、SESの基本と派遣との違いを押さえたうえで、SES企業がビジネスパートナーを募集する理由、BPとして取引を始める流れ、パートナー選定で見られるポイントを整理しました。SES営業を始めたばかりの方、パートナー開拓を担当する方は参考にしてください。
SESとは

SES(System Engineering Service:システムエンジニアリングサービス)とは、ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用といった業務に対して、エンジニアの技術力を提供するサービスです。
請負契約が「完成したシステム」を納めて対価を得るのに対し、SESは「エンジニアの労働(技術支援)」そのものを提供して対価を得ます。契約形態は準委任契約が一般的で、エンジニアが顧客のオフィスに常駐して働くケースも多くあります。
SESとSEの違い
表記が似ていますが、SESはサービス(契約形態)の名前、SE(System Engineer)はシステムの設計・開発を行う技術者の名前です。「SEがSES契約で顧客先の開発に参加する」という関係になります。
SES事業の仕組みや収益構造は、以下の記事で詳しく解説しています。
SESと派遣契約の違い

SESと派遣は、どちらも「自社のエンジニアが顧客先で働き、労働の提供で対価を得る」点が共通しています。最大の違いは指揮命令権の所在です。
| 比較項目 | SES(準委任契約) | 派遣契約 |
|---|---|---|
| 指揮命令権 | SES企業(所属企業)にある。顧客は直接指示できない | 派遣先(顧客)にある |
| 必要な許可 | 特別な許可は不要 | 派遣元に労働者派遣事業の許可が必要 |
| 同一部署での就業期間 | 契約で定める | 有期雇用の派遣社員は原則同一の組織単位で3年が上限 |
| 顧客側のメリット | 必要なスキルのエンジニアを必要な期間だけ確保しやすい | 直接指示ができ、自社社員に近い形で業務を進められる |
| 提供側の注意点 | 顧客が直接指揮すると偽装請負とみなされるおそれがある | 許可の取得・更新と派遣法の遵守が必要 |
SESでは顧客がエンジニアに直接指揮命令を行うと「偽装請負」と判断されるリスクがあります。指示は所属企業の責任者を通す、という線引きを顧客と共有しておくことが重要です。
SESにおけるビジネスパートナー(BP)とは

SES業界でビジネスパートナー(BP)とは、案件に対して自社エンジニアだけでは人数やスキルが足りないときに、エンジニアを提供してもらう協業先の企業を指します。「協力会社」「パートナー企業」とも呼ばれます。
SESの案件は、元請けのSIerから一次請け・二次請けのSES企業へ、さらにそのBPへと広がる形で成立しています。規模の大小を問わず、多くのSES企業がBPとの協業を前提に事業を組んでいます。
BPとして取引する側のメリット
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 案件の獲得ルートが増える | 自社の営業力だけでは届かない顧客の案件に、パートナー経由で参加できる |
| 待機エンジニアを減らせる | 自社案件が途切れても、パートナーの案件で稼働を確保できる |
| エンジニアの経験の幅が広がる | 異なる業種・技術の案件に参加でき、スキルアップにつながる |
SES企業がビジネスパートナーを募集する理由

SES企業がBPを常に募集しているのには、構造的な理由があります。
1. エンジニア不足が続いている
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年)では、2030年に最大約79万人のIT人材が不足すると試算されています(参考:経済産業省 IT人材需給に関する調査 調査報告書)。
顧客が求めるスキルと経験を持つエンジニアを、自社の採用だけで揃え続けるのは難しく、BPとの協業で供給力を補う必要があります。
2. 案件ごとに必要なスキル・人数が変わる
SESの案件は、言語や工程、必要人数が案件ごとに異なります。自社エンジニアだけで全てに対応しようとすると、案件が重なった時期に対応できず、逆に案件が少ない時期には待機が発生します。
BPのネットワークがあれば、自社で足りないスキルや人数をパートナーから補い、顧客の要望に「対応できません」と答える機会を減らせます。
3. 顧客との取引を失わないため
顧客からの引き合いに応えられない状態が続くと、次の相談は別のSES企業に行ってしまいます。提案できる要員の母数を保つことは、既存顧客との取引を維持するうえでも重要です。
SESのリスクと、BP取引で注意すべき点

SES事業には、BPと取引する場合も含めて次のようなリスクがあります。
| リスク | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 偽装請負 | 準委任契約なのに顧客やパートナーがエンジニアに直接指揮命令している状態 | 指揮命令の経路を契約時に明確にし、現場にも周知する |
| 待機コスト | エンジニアの案件が決まらない期間も給与は発生する | 自社案件とBP案件の両方で稼働先の選択肢を持つ |
| 多重下請け | 階層が深くなるほど単価が下がり、情報伝達も遅れる | 取引先との階層を把握し、できるだけ上流と直接取引する |
| 帰属意識の低下 | 客先常駐が長引くと自社への帰属意識が薄れ、離職につながる | 定期的な面談やスキル管理でキャリアを会社として把握する |
ビジネスパートナーとして取引を始める流れ

SES企業とBPとして取引を始める一般的な流れは次のとおりです。
- パートナー募集窓口から問い合わせる(会社概要・得意分野・エンジニア数を伝える)
- 面談で、対応可能な技術領域・工程・単価帯・契約条件をすり合わせる
- 基本契約(業務委託基本契約・秘密保持契約)を締結する
- 案件情報の共有を受け、要員のスキルシートを提出して提案する
- 顧客との面談を経て、案件ごとに個別契約を結び稼働を開始する
パートナー選定で見られるポイント
SES企業がBPを選ぶ際は、エンジニアの人数だけでなく次の点を見ています。
| ポイント | 見られる理由 |
|---|---|
| スキルシートの精度と提出スピード | 顧客への提案は早い者勝ちになりやすく、要員情報をすぐ出せる会社は重宝される |
| 得意な技術領域・工程の明確さ | 「何でもできます」より「この領域なら即戦力」のほうが案件を振りやすい |
| 契約・法務面の理解 | 指揮命令や再委託の扱いを理解している会社は、偽装請負などのリスクが低い |
| エンジニアの定着率 | 稼働中の離脱は顧客からの信頼を損なうため、長く働いてもらえる体制が評価される |
とくにスキルシートの精度と提出スピードは、最初の取引で信頼を得るうえで大きな差になります。要員のスキルと稼働状況を社内で一元管理しておくと、引き合いに即日で応えられます。
株式会社エフ・ディー・シーのビジネスパートナー募集

株式会社エフ・ディー・シーでも、ソフトウェア・Webシステムの設計開発、ネットワークの構築・運用などの事業にご協力いただけるパートナー企業を募集しています。
SES事業を25年以上続けてきた会社として、契約条件や指揮命令の線引きを明確にした取引を心がけています。協業の可能性がある企業様は、以下のフォームからお問い合わせください。
まとめ

SESは、エンジニアの技術力を提供して対価を得るサービスで、派遣との最大の違いは指揮命令権が所属企業にある点です。IT人材の不足が続く中、SES企業は自社エンジニアだけでは顧客の要望に応えきれず、ビジネスパートナーとの協業を前提に事業を組んでいます。
BPとして取引を始めるなら、得意領域を明確にし、スキルシートを早く正確に出せる体制を整えることが、最初の信頼につながります。SES企業との協業をお考えの方は、パートナー募集窓口への問い合わせから始めてみてください。

