スキル管理シートは従業員のスキルを明確にして、プロジェクトや人材育成を効率的に進めるために必要な取り組みです。

本記事ではスキル管理シートを導入するメリットや作り方、有効活用するためのポイントを解説します。

Excelやスプレッドシートでの管理に限界がある理由もお伝えするので、スキル管理シートを効果的に活用したい方はぜひ参考にしてみてください。

スキル管理シートとは?

スキル管理シートとは?

スキル管理シートとは、従業員のスキルや能力をデータ化して、一覧にした表のことです。

部門ごとの上司もしくはPMが、従業員に業務を遂行するスキルが備わっているかを一目で確認できます。

スキル管理シートを導入すると、適切な人材配置や人事評価が可能となります。

なお、スキル管理シートの呼び方はスキルマップやスキル管理表、力量管理表など企業や組織によってさまざまです。

ISO9001の取得にはスキル管理シートが必須

ISO9001は世界中で普及しているマネジメントシステム規格で、製品やサービスの品質を高めることを目的に定められています。

ISO9001を取得するためには従業員の力量を明確化する証拠として、力量評価表・スキルマップ(力量管理表)・教育訓練計画表の提出が必要です。

そのためISO9001を取得するためには、必然的にスキル管理シートの導入および定期的な更新が求められるのです。

スキル管理シートを作成するメリット

適切な人材配置につながる

従業員のスキルや資格、業務経験などをもとにした、適材適所の人材配置が実現できます。

スキル管理シートを導入していない企業では、上司の勘や経験に頼ることも珍しくありません。

アサイン調整や新規プロジェクトのアサイン時にも、適切な人材をスムーズに探し出せます。

スキル評価が公平になる

人材配置と同様に、上司の主観でスキル評価を行なっている現場は少なくありません。

スキル管理シートで保有スキルを定量化することで、公平な判断を下せるようになります。

従業員の評価が正当になり、不平・不満の解消やエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

人材育成計画が立てやすくなる

スキル管理シートは、従業員一人ひとりの保有スキルやスキルレベルを明らかにします。

時代やニーズに合わせて、具体的で効果的な育成計画が立てられるのがメリットです。

「長所をさらに伸ばす」「短所を補う」など、状況に合わせて育成方針を定めることも可能です。

資格の更新漏れを防げる

専用のスキル管理ツールを活用すれば、資格の更新時期を自動リマインドで漏れなく管理できます。

資料配布や申し込みもシステム内で完結するため、教育管理にかかる作業を効率化できるでしょう。

従業員の退職によるスキルの喪失を防ぎ、前もって教育計画を立てることも可能です。

スキル管理シートの作成手順

スキル管理シートの作成手順

スキル管理シートの作成手順は、次のとおりです。

  1. スキル項目を洗い出す
  2. スキルの階層・粒度を決める
  3. スキルツリーにまとめる
  4. スキルの評価基準・評価段階を設定する
  5. スキル管理シートを作成する
  6. 運用とブラッシュアップ

一般的に、スキル管理シートは部門の上司あるいはプロジェクトマネージャーが担当します。

スキル項目の洗い出しは実際の業務に則って、抜け漏れなく可視化しましょう。

「プロジェクトに本当に必要か」を重視して、個人の主観を排するのがコツです。

スキルの階層数に決まりはありませんが、2〜3階層程度を目安にしてみてください。

階層数が多すぎると基準が曖昧になり、管理が頻雑になるからです。

スキルの評価基準はスキルの習熟度に応じて1〜5、A〜Eなど「5段階」評価がおすすめです。

誰が見ても客観的で公平な評価が可能となります。

スキル管理シートを作成したらいくつかの部門で、テスト的に運用を開始します。

社員のリアルな使用感や質問をベースに、ブラッシュアップを重ねた後に全社に導入する流れがおすすめです。

スキル管理シートを有効活用するためのポイント

評価者を明確にする

スキル管理シートの評価者を明確にします。

管理者が評価する場合が多いですが、部下が評価したものを上司が確認する方法もあります。

評価者によってどのようなメリット・デメリットがあるかを考慮して、社内状況に合わせて評価者を選任すると良いでしょう。

評価基準を適切に設定する

評価基準は3〜5段階が一般的ですが、メリット・デメリットを理解したうえで採用することが大切です。

3段階評価だと中間評価の「ほぼ一人でもできる」というような、可もなく不可もなくという評価が多くなりがちです。

4段階評価は真ん中の選択肢がない分、良し悪しを明確にできるのはメリットといえます。

ただし、評価者が判断に困る場面が多くなるのは、デメリットといえそうです。

また、5段階評価は選択肢が多いがゆえに、評価者によっては最低評価と最高評価をつけにくいかもしれません。

【厚生労働省】スキルマップのテンプレート

厚生労働省のホームページでは、スキルマップのExcel向けテンプレートを無料で公開しています。

対応する職種は人材開発や情報システムなどの19種類、業種はフィットネス産業やウェブ・コンテンツ制作業など16種類です。

使い方のマニュアルとレベル別テンプレートも用意しているので、初めてスキル管理シートを作成する方でも比較的簡単に作成できるでしょう。

テンプレートをうまく活用すれば、時間や手間を節約できます。

スキル項目などは自由にカスタマイズできるため、それぞれの業務に合わせてアップデートすると良いでしょう。

キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード|厚生労働省

スキルマップの活用事例|トヨタ自動車

トヨタ自動車は多能工の育成などを目的に、業界に先立ってスキルマップを導入した企業といわれています。

多能工とは1人で複数の業務を行える人材のことで、業務効率化と生産性向上に大きく貢献する人材です。

当時の副社長が複数の業務を柔軟にこなす従業員を見たことで、多能工の育成が始まりました。

後に多能工は複数の工場に配置され、業務のムリ・ムダ・ムラが減り、業績が大きくアップします。

多能工を配置する生産方式は「トヨタ生産方式」と呼ばれ、今でも多くの企業で活用されています。

表計算ソフトでスキルを管理するのは限界がある

表計算ソフトでスキルを管理するのは限界がある

スキル管理をExcelやスプレッドシートなどの表計算ソフトで行うのには、限界があります。

スキル管理が難しい代表的な理由は、次のとおりです。

  • 入力漏れ・ミスが起こりやすいから
  • 属人化の恐れがあるから
  • 複数人による同時編集がしにくいから
  • 本格的なガントチャートが作成できないから
  • 複数のプロジェクトを同時に管理できないから

特に属人化は業務停滞の大きな原因となり、プロジェクトの進捗に遅れが出てしまいます。

さらにメンバーの人数やプロジェクトの数が多くなるほど、属人化の影響は大きくなるでしょう。

特定の人に業務が依存すると迅速な対応ができなくなり、結果として市場の変化にも適応しにくくなるのです。

「特定の個人に業務が依存しない」「ボトルネックを改善してスムーズに業務を進めたい」という場合には、「スキル管理ツール」を検討してみると良いでしょう。

まとめ

スキル管理シートは人材配置の最適化や人材育成の効率化など、業務をスムーズに進めるために欠かせない取り組みの1つです。

Excel・表計算ソフトで導入する場合は、ヒューマンエラーの起こりやすさや複数のプロジェクトに対応できない点は十分に考慮しておくべきでしょう。

表計算ソフトの課題を解決する方法としては、スキル管理ツールが挙げられます。

スキル管理ツールについて詳しく知りたい方は、サイト内の他の記事を参考にしてみてください。