株式会社エフ・ディー・シーのDXサービス事業推進部 佐々木舞美が、200名以上のITエンジニアのスキル管理・アサイン管理を25年以上行ってきた実務経験をもとに、製造業における稼働率の計算方法と改善ポイントをわかりやすく解説します。

「稼働率がどのくらいなら良いのか分からない」「計算式はあるけれど、現場にどう活かせばよいか迷っている」——そんな課題を感じている製造現場の管理者・生産技術担当者の方に向けて、稼働率の計算方法から業界別ベンチマーク・低下原因と改善策までまとめました。ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。

製造業における稼働率とは?

製造業における稼働率とは、設備や生産ラインが本来発揮できる最大能力(生産能力)に対して、実際にどれだけ生産・稼働できたかを示す割合のことです。この数値が高いほど、工場の生産能力を無駄なく活用できていることを意味します。

稼働率は製造業において特に重要な指標であり、設備投資の費用対効果を測る指標でもあります。設備が高額であっても、稼働率が低ければコストパフォーマンスは悪化してしまいます。製造現場では日常的にこの数値を把握し、継続的な改善につなげることが求められています。

稼働率と可動率(べきどうりつ)の違い

似た言葉に「可動率(べきどうりつ)」があります。この2つは混同されやすいですが、意味が異なります。

用語 定義 注目する視点
稼働率 生産能力に対して実際にどれだけ生産したか 需要・受注量との関係
可動率(べきどうりつ) 稼働すべき時間に対して実際に動いていた時間の割合 設備の信頼性・メンテナンス

稼働率は需要側の問題(受注が少ない・生産計画が低い)、可動率は設備側の問題(故障・段取り時間・チョコ停など)を反映します。両方の指標を使い分けることで、課題の原因を正確に特定できます。

製造業の稼働率の計算方法

稼働率の計算には大きく2つのアプローチがあります。現場の状況に合わせて使い分けることが重要です。

計算方法①:生産量ベースの稼働率

最も基本的な稼働率の計算式は以下のとおりです。

計算式
稼働率(%)= 実際の生産数 ÷ 生産能力(最大生産数) × 100

例:1日に最大500個生産できる設備があるとします。ある日の実際の生産数が350個だった場合、稼働率は以下のように計算します。

350 ÷ 500 × 100 = 70%

この場合、生産能力の30%が活用されていないことになります。受注量が少ない、段取り替えが多いなどの要因が考えられます。

計算方法②:時間ベースの稼働率(時間稼働率)

設備が実際に稼働した時間の割合で計算する方法です。製造現場では「時間稼働率」とも呼ばれます。

計算式
時間稼働率(%)= 実際の稼働時間 ÷ 負荷時間 × 100
  • 負荷時間:設備が稼働すべき計画上の時間(就業時間から計画的な休憩・休止を除いた時間)
  • 実際の稼働時間:負荷時間から設備の故障・段取り・チョコ停などのロスタイムを差し引いた時間

例:1日の負荷時間が8時間(480分)、設備停止ロスが60分だった場合の時間稼働率は以下です。

(480 − 60)÷ 480 × 100 = 87.5%

設備総合効率(OEE)への発展

製造業の現場では、時間稼働率だけでなく「設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)」という指標も広く使われています。OEEは3つの要素から構成されます。

要素 計算式 把握できること
時間稼働率 実際の稼働時間 ÷ 負荷時間 設備停止のロス
性能稼働率 実際の生産量 ÷ (理論サイクルタイム×稼働時間) 速度低下・チョコ停のロス
良品率 良品数 ÷ 実際の生産数 不良品・手直しのロス

OEE(%)= 時間稼働率 × 性能稼働率 × 良品率 × 100

世界水準ではOEE 85%以上が理想的とされています(出典:日本プラントメンテナンス協会が普及させたTPM指標として一般的に参照される数値)。OEEを活用することで、設備の「どの側面にロスがあるか」を具体的に特定できるため、ピンポイントな改善施策につなげられます。

製造業の稼働率の目安と業界別ベンチマーク

稼働率の目安は業種・設備によって異なります。まず一般的な水準の目安を確認したうえで、業界別の参考値を把握しておくことで自社の現状を客観的に評価できます。

稼働率の水準別・状況目安

稼働率の水準 状況の目安 対応の方向性
85%以上 設備をほぼフル活用できている 更なる生産能力拡大を検討
70〜84% 概ね良好だが改善余地あり 停止要因を分析して改善
50〜69% 受注不足または設備問題の可能性 原因の深掘りが必要
50%未満 深刻な稼働不足・設備過剰の可能性 生産計画・設備投資の見直し

業界別の稼働率ベンチマーク(参考値)

以下は経済産業省「鉱工業指数」などの統計・業界慣行として参照される一般的な目安です。自社の位置づけを確認する際の参考にしてください。実際の数値は景況・受注状況によって変動します。

業種 一般的な稼働率の目安 特徴・留意点
自動車・輸送機器 80〜90% 大量生産ラインのため高稼働が求められる。受注変動の影響を受けやすい
電子部品・半導体 75〜90% 設備の精度管理が重要。歩留まり率との組み合わせで評価
食品・飲料 65〜80% 季節変動が大きく、需要期に合わせた稼働計画が重要
金属・鉄鋼 70〜85% 設備の老朽化リスクが高く、保全管理が稼働率に直結
樹脂・化学 75〜85% 連続生産が多く、計画停止以外のロス削減がポイント

ただし、稼働率が高すぎる場合も注意が必要です。常に100%に近い状態が続くと、設備の故障リスクが高まり、急な受注増にも対応できなくなります。適切なバッファを持ちながら、80〜90%前後を安定的に維持することが理想的とされています。

稼働率が低下する主な原因と改善ポイント

稼働率が思うように上がらない場合、主に以下のような原因が考えられます。それぞれに対応した改善アプローチを確認しましょう。

原因①:設備の故障・計画外停止

突発的な設備故障は、稼働率を大きく下げる要因です。予防保全・予知保全の仕組みを導入し、定期点検を徹底することで未然に防ぐことができます。近年はIoTセンサーを活用したリアルタイム監視が普及しており、異常の早期検知が可能になっています。

原因②:段取り・切り替え時間の長さ

製品の切り替え時に発生する段取り時間(段取りロス)も大きな損失です。SMED(シングル段取り)などの手法を活用し、段取り時間の短縮に取り組むことが効果的です。標準手順書の整備や作業者教育も重要な施策となります。

原因③:受注・生産計画の最適化不足

受注量が少ない時期に稼働率が下がるのは避けられませんが、生産計画の平準化(山積み・山崩し)を行うことで設備の遊休時間を減らせます。また、見込み生産や多能工化による柔軟なライン編成も有効な手段です。

原因④:品質不良による手直し・再生産

不良品の発生は稼働時間のロスに直結します。品質管理を強化し、工程内での自工程完結(にんべんの自働化)を推進することで不良による再生産ロスを削減できます。

改善施策をまとめると以下のとおりです。

  • 予防保全・予知保全の導入
  • SMED手法による段取り時間の短縮
  • 生産計画の平準化
  • 品質管理の強化と自工程完結の推進
  • IoT・DXによるリアルタイムデータ活用

稼働率に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 稼働率と生産性の違いは何ですか?

稼働率は設備の「動いている割合」を示す指標ですが、生産性は「投入した資源に対してどれだけの成果を生み出したか」を示す指標です。稼働率が高くても、生産効率が低ければ生産性は上がりません。稼働率はあくまで生産性向上のための1つの要素と捉えることが重要です。

Q2. 設備稼働率はどのくらいの頻度で計測すべきですか?

製造現場では少なくとも日次での計測・記録が推奨されます。IoTや生産管理システムを活用することでリアルタイム計測も可能です。データを蓄積することで週次・月次のトレンド分析もできるようになり、改善活動のPDCAを回しやすくなります

Q3. 人員(作業者)の稼働率はどう計算しますか?

人員稼働率は「実際の作業時間 ÷ 就業時間 × 100」で計算します。設備稼働率と合わせて人員稼働率を把握することで、過不足のない人員配置の実現につながります。ただし、人の稼働率を100%にすることは疲弊や品質低下を招くため、適切な余裕率を設けることが重要です。

Q4. 工場全体の稼働率を上げるために最初にすべきことは何ですか?

まず「現状の稼働率の正確な把握」から始めることをおすすめします。感覚ではなく、実際のデータをもとに現状を可視化し、どのロスが最も大きいかを特定することが、効果的な改善につながります。

Q5. 稼働率を上げると設備の寿命は縮まりますか?

高い稼働率を長期間維持すると、設備への負荷が増大するのは事実です。そのため、稼働率の向上と並行して定期的なメンテナンス計画の見直しを行うことが不可欠です。予防保全の体制を整えることで、稼働率向上と設備寿命の両立が可能になります。

稼働率の管理・改善にはスキル・人員管理ツールの活用も有効

設備稼働率を継続的に改善するためには、設備だけでなく人員の稼働状況やスキルの把握も欠かせません。「誰がどの工程を担当できるか」「スキルの高い作業者がどこに配置されているか」が可視化されていなければ、多能工化や柔軟なライン編成は難しいからです。

特に製造現場での多能工推進・ライン組替えにおいては、作業者ごとのスキルと稼働状況を一元管理する仕組みを整えることで、生産計画の精度と現場の対応力が大きく向上します。

スキル管理・アサイン管理ツールの活用については、以下の記事で詳しく解説しています。