スキル管理・アサイン管理支援ツールfapi(ファピー)を提供する株式会社エフ・ディー・シーのDXサービス事業推進部 佐々木舞美が、200名以上のITエンジニアのスキル管理・アサイン管理を25年以上行ってきた実務経験をもとに、プロジェクト稼働率について解説します。
見積もりの段階で「メンバーは100%稼働できる」と考えてしまうと、突発対応を吸収できず、納期遅延や負荷の偏りを招きやすくなります。この記事では、プロジェクト稼働率の基本から、100%前提が危険な理由、見積もりで使える計算方法までわかりやすく解説しますので、無理のない要員計画づくりにお役立てください。
プロジェクト稼働率とは?
プロジェクト稼働率とは、メンバーが本来稼働可能な時間に対して、実際にどれだけプロジェクト業務へ充てられているかを示す指標です。現場では「どれくらい手が空いているか」「あと何%アサインできるか」を判断するための目安として使われます。
たとえば、1か月の所定労働時間が160時間のメンバーが、ある案件に120時間入る予定であれば、単純計算の稼働率は75%です。反対に160時間すべてを1案件に割り当てると、帳票上は100%になりますが、実務ではそれ以外の業務が入り込む余地がなくなります。
見積もり時に稼働率を確認する目的は、単なる人数調整ではありません。納期、品質、メンバー負荷のバランスを取りながら、無理なく遂行できる体制かどうかを見極めるために使います。
見積もり時の100%稼働が危険な理由
見積もり時に100%稼働を前提にすると、計画には一見ムダがなく見えます。しかし、現場運営の観点では余白がなく、想定外に弱い計画になりがちです。理由を3つに分けて解説します。
メンバーの時間はプロジェクト作業だけではない
プロジェクト見積もりでは、工数だけを積み上げても実態に合わないことがあります。なぜなら、メンバーの時間はプロジェクト作業だけで構成されているわけではないからです。朝会、進捗報告、レビュー、1on1、教育、障害対応、他案件の問い合わせ対応など、直接工数に見えにくい業務が日常的に発生します。
この見えにくい時間を無視して「160時間まるごと使える」と考えると、計画上は成立しても、運用段階で遅れや残業が発生しやすくなります。特に、複数案件を兼務しているエンジニアやリーダー職は、予定外の調整工数が増えやすいため注意が必要です。
突発対応を吸収できず、スケジュールが崩れる
100%前提の計画でまず問題になるのが、突発対応を吸収できないことです。レビュー差し戻しや仕様確認、顧客からの追加依頼が入った時点で、スケジュールは簡単に崩れます。
さらに、特定メンバーを100%で貼り付けると、その人がボトルネックになり、前後工程で待ちが発生する恐れもあります。見積もり段階から稼働率を管理しておけば、案件ごとの過不足を早期に把握でき、アサイン再調整や要件見直しの判断も前倒しで行えます。
負荷の集中が品質低下と手戻りを招く
メンバー本人の集中力や判断力の低下も見逃せません。業務量が常に上限近くになると、品質確認の抜け漏れやコミュニケーション不足が起きやすくなります。結果として再作業や手戻りが増え、短期的には埋まっていたはずの工数が、長期的にはむしろ膨らむケースもあります。
なお、厚生労働省のガイドラインでも、使用者には労働時間を適正に把握する責務があり、始業・終業時刻を確認・記録する必要があると示されています。見積もりや配員を考える際も、厚生労働省のガイドラインを参考に、「実際にどこまで稼働できるか」を実態ベースで把握する視点が欠かせません。
プロジェクト稼働率の目安は何%が適切?
プロジェクトの性質や役割によって差はありますが、見積もり段階では100%ではなく、一定の余白を残して考えるのが基本です。当社では、メンバーに負担をかけすぎないよう、80〜90%程度を目安に見積もる考え方をおすすめしています。
ただし、全員を一律に同じ比率で見るのは適切ではありません。たとえば、管理業務の多いPMやPL、社内調整の多いリーダー職は、実作業にフルで入れないケースが多くなります。一方で、専任かつ短期集中の開発フェーズでは、比較的高い稼働率で計画しやすいこともあります。
重要なのは、「役割ごとの実態」に合わせることです。見積もり時点で、会議、レビュー、教育、障害対応、営業支援などの周辺業務を洗い出し、純粋な作業時間をどこまで確保できるかを見極めましょう。
見積もりで使える稼働率の計算方法
見積もりで稼働率を考える際は、次の式で整理すると分かりやすくなります。
稼働率(%)=プロジェクトに充てる予定時間 ÷ 本来の稼働可能時間 × 100
たとえば、月160時間働くメンバーについて、会議や社内業務で20時間、他案件対応で30時間かかる場合、この案件に使える時間は110時間です。このとき、160時間をフルに見込むのではなく、110時間をベースに見積もる方が実態に近くなります。
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| 月の所定労働時間 | 160時間 |
| 会議・報告・社内業務 | 20時間 |
| 他案件対応 | 30時間 |
| 当該案件に使える時間 | 110時間 |
| 稼働率 | 68.75% |
このように、まずは「使える総時間」を引き算で明確にしてからアサインを組むと、見積もり精度が高まります。特に兼務者が多い組織では、帳票上の空き時間と実際に使える時間がずれやすいため、注意が必要です。
稼働率を安定させるための管理ポイント
稼働率は一度見積もって終わりではありません。案件開始後も、実績との差分を継続的に確認することが重要です。押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 案件別・メンバー別に予定工数と実績工数を見える化する
- 会議やレビューなどの間接工数も含めて把握する
- 特定メンバーへの集中を早めに検知する
- 稼働率だけでなく、生産性や納期遵守率もあわせて見る
- 複数案件をまたぐアサイン情報を一元管理する
特に、スキル情報とアサイン状況を別々に管理していると、「入れたい人はいるが、今どれだけ空いているか分からない」という状態が起こりやすくなります。こうした状況では、見積もりのたびに確認コストが増え、判断が属人化しやすくなります。
当社が提供するfapiでは、スキル管理とアサイン管理をあわせて行えるため、必要な人材情報を見ながら配員を検討しやすく、アサイン調整時間の削減にもつながります。
プロジェクト稼働率のよくある質問
Q. プロジェクト稼働率と工数は何が違うのですか?
工数は「どれだけ時間がかかるか」を示す量で、稼働率は「使える時間のうち、どれだけその案件に割り当てているか」を示す割合です。工数だけでなく稼働率まで見ることで、配員の現実性を判断しやすくなります。
Q. 稼働率100%で見積もってはいけないのですか?
絶対に不可というわけではありませんが、長期間の運用前提としてはリスクが高くなります。突発対応やコミュニケーション工数を吸収しづらく、遅延や品質低下につながりやすいため、余白を持たせる考え方が有効です。
Q. 稼働率の目安は職種によって変わりますか?
変わります。PM、PL、営業支援を兼ねる要員は調整業務が多く、開発専任メンバーより実作業に充てられる割合が低くなる傾向があります。役割別に実態を見て設定することが大切です。
Q. 複数案件を兼務している場合はどう管理すべきですか?
案件ごとの予定時間を合計するだけでなく、会議や社内業務などの共通工数も含めて確認する必要があります。案件横断で稼働状況を一覧化できると、過負荷や空きの偏りを把握しやすくなります。
Q. 稼働率が低いと問題ですか?
一概には言えません。待機や余力が多すぎる状態は改善対象ですが、繁閑調整や教育期間として必要な余白である場合もあります。低い・高いの二択ではなく、その理由を把握して判断することが重要です。
Q. Excelでも稼働率管理はできますか?
小規模であれば可能です。ただし、兼務者が増えたり案件数が多くなったりすると、更新漏れや属人化が起きやすくなります。スキル情報やアサイン情報をまとめて管理できる仕組みがあると、見積もり精度と運用負荷の両面でメリットがあります。
まとめ
プロジェクト稼働率とは、使える時間に対して、どれだけ案件へ時間を割り当てているかを示す重要な指標です。見積もり時に100%前提で考えると、一見効率的に見えても、実際には突発対応を吸収できず、ボトルネックや手戻り、メンバー負荷の増大につながる恐れがあります。
そのため、見積もりでは帳票上の稼働可能時間をそのまま使うのではなく、会議、報告、兼務、レビュー対応などを差し引いたうえで、実態に合った稼働率を設定することが大切です。無理のない配員を行うには、メンバーのスキルと空き状況をあわせて可視化し、案件横断で判断できる状態を整えましょう。
アサイン精度をさらに高めたい場合は、アサイン管理ツールの選び方とおすすめ比較もあわせてご覧ください。自社に合う管理方法を整理するヒントになります。
