効率的な人材育成や効果的な人事評価に役立つのが「スキルマップ」です。
従業員に求められるスキルが多様化している今、スキルマップを作成して適切に管理することが企業成長への大きな一歩となります。
この記事ではITエンジニアを200名以上抱え、日々エンジニアのスキル管理を25年経験してきて効率化し、スキル管理ツールを開発・運用している弊社、DXサービス事業推進部 佐々木舞美がスキルマップの作成手順とメリット・デメリット、参考にしたい活用方法・導入事例を解説します。
スキルマップの作り方を学んで、業務効率化・利益最大化を実現したい方は参考にしてください。
スキルマップとは?目的と重要性
スキルマップとは従業員一人ひとりのスキルを可視化して、人員配置や人材育成に活かす取り組みです。
製造業とIT業界では早い段階から導入され、業務改善や人材育成などで有効性を広げてきました。
従業員に求められるスキルが多様化している背景から、効率的にレベルアップすることが望まれます。
従業員の成長は企業の成長を意味するため、適切なスキルマップの作り方を知っておくことが大切です。
スキルマップの作り方のメリット・デメリット
以下に、スキルマップの作り方のメリット・デメリットについて簡単にまとめました。
メリット
- 自社のスキル状況を正確に把握できる
- 人員配置が効率的に行える
- 効果的な人材育成を進められる
- 客観的な人事評価ができる
- 業務を効率化できる
- 社員のモチベーションアップが期待できる
メリットの内容からわかるように、スキルマップの導入は大きな恩恵を生み出します。
スキルマップのメリットを一つ挙げるとすれば、人材育成の効果を高められることでしょう。
従業員のスキルアップは、企業の成長および業績に直結します。
自身に足りないスキルを把握して、順を追ってレベルアップが図れる点において、スキルマップは非常に有用なツールといえます。
デメリット
- スキル項目の洗い出しに時間がかかる
- 導入効果を実感するまで時間がかかる
企業の従業員数が多い場合は、スキルマップの作り方に時間がかかります。
また、人材育成は一朝一夕で仕上がるものではないので、完成までに相応の時間が必要です。
当記事では効率的なスキルマップの作り方を解説しているので、デメリットを少しでも解消したい方はこのまま読み進めてみてください。
ISO9001の力量管理でもスキルマップを使用
スキルマップは国際的な品質マネジメント規格である「ISO9001」の力量管理でも活用できます。
ISO9001が定める要求事項では、従業員の力量管理が求められています。
力量とは各業務に必要な技能や知識、資格に経験といった「能力」のことです。
力量をきちんと管理していることを証明するため、監査の際には「スキルマップ(力量管理表)」「力量評価表」「教育計画表」を提出します。
スキルマップで従業員一人ひとりのスキルレベルを「数値」で管理することで、客観的な評価が可能となります。
簡単なスキルマップの作り方(4ステップ)
ここでは、スキルマップの作り方を4ステップで解説します。
スキルマップの作り方①必要なスキルを洗い出してスキル項目を決める
スキルマップの作り方のファーストステップは、スキルの洗い出しとスキル項目の決定です。
スキル項目の階層数は、業務フローを考慮しながら「2〜3階層」程度に抑えます。
階層数が細かいと、管理が頻雑になり効果が薄まるので注意してください。
「誰が」「どのスキルを」「どの程度保有しているか」を、一目でわかるように設定するのがポイントです。
スキルマップの作り方②スキルの評価基準と評価段階を決める
客観的にスキルレベルを把握できるように「数値」を用いて評価段階を決めます。
厚生労働省の「職業能力評価シート」にあるように、スキルレベルは「4段階」で評価するのがおすすめです。
レベル4 | 他者を指導できる |
レベル3 | 単独で実施できる |
レベル2 | サポートがあれば実施できる |
レベル1 | 知識がある |
スキルの評価基準を明確化すれば、スキル習得までの道のりがわかりやすいスキルマップを作成できます。
スキルマップの作り方③運用ルールを明確にする
全従業員が同じ認識でスキルマップを運用できるように、具体的なルールを設けます。
運用ルールを明確にした「マニュアル」を用意することで、不明点があった際に確認できるようになります。
運用の仕方が従業員によって違う、という事態が発生すればスキルマップの目的が果たせません。
マニュアルの作成は全従業員にヒアリングを行い、定期的な更新・調整も忘れないようにしてください。
スキルマップの作り方④スキルマップを作る(エクセルORスキル管理ツール)
スキルマップの作り方の最終工程は「エクセル」または「スキル管理ツール」による作成です。
エクセルで一からスキルマップを作成するのは手間がかかるため、インターネット上にあるテンプレートを活用します。
テンプレートのフォーマットは、業務に合わせて自由にカスタマイズできます。
スキル管理ツールは、従業員が50人を超える企業や効率的にスキル管理を行いたい企業におすすめです。
ツールによってはスキルマップを自動で作成できますし、外部システムと連携して業務を効率化できる点が優れています。
スキルマップの作り方の注意点
ここでは、スキルマップの作り方の注意点を2つ取り上げます。
作成者・管理者を決める
スキルマップの作成には、何かしらの形で全従業員が関わるべきです。
一般的にスキルマップは上司や現場リーダーが作成・管理することが多いですが、現場の全てを知っているわけではありません。
また、他部署の管理職や役員も含めることで、見えなかったスキル項目が明らかになる可能性を高められます。
スキルマップの作成・管理は、多角的な視点で実施できる人材を設置することをおすすめします。
前年度などの対比が可視化できるようにする
スキルマップの作り方でおすすめできるのが、前年度との対比です。
「昨年の自分と比較して、今の自分はどうか」と比較できるので、成長や課題を理解できるようになります。
個人で状況改善を把握できれば、モチベーションがアップして新たな目標を設定できるでしょう。
現場単位だと人材育成への取り組み方を変えたり目標を変更したりと、別の対策を模索できます。
スキルマップの活用方法・導入事例『トヨタ』
トヨタは従業員の技術向上・多能工の育成を目的に、いち早くスキルマップを導入した企業です。
多能工とは1人で複数の業務をこなせる人材を意味します。
諸説ありますが「スキルマップは多能工を育成する際に活用されたのが起源」とも言われています。
多能工の増員でさまざまな車種を臨機応変に生産できるようになり、業績が一気に向上します。
生産性や生産スピードが上がり、業務における「ムダ」「ムラ」「ムリ」を削減して利益率アップを実現できたわけです。
多能工が活躍する生産方法は「トヨタ生産方式」と呼ばれ、今日でも多くの業界・職種で取り入れられています。
【Excel】スキルマップのテンプレート|厚生労働省
厚生労働省が公開する「職業能力評価シート」は、スキルマップの有名なテンプレートです。
職業能力評価シートでは人材開発や営業など19種類の事務系職種に、ねじ製造業や卸売業など16業種を用意しています。
スキルマップを一から作成するのは時間がかかりますが、テンプレートの活用でスキルマップの作り方を省略できるのがメリットです。
さらにエントリーからシニア・マネージャーまでレベルごとのテンプレートを提供しているので、従業員のレベルに合わせて長く活用できます。
自社に合わせてスキル項目も変更できるので、すぐにスキルマップを導入したい方は下記からダウンロードしてご活用ください。
キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード
効率的なスキルマップの作り方は「スキル管理システム」がおすすめ!
効率的なスキルマップの作り方は「スキル管理システム」がおすすめです。
スキル管理システムとは従業員の保有スキルや習熟度、業務経験などを一元管理して業務に活用できるシステムです。
エクセルでのスキル管理はファイルが分散したり更新履歴が残っていなかったりと、情報の正確性に欠けるのが欠点でした。
スキル管理システムはリアルタイムで情報が反映され更新履歴も残ることから、最新のスキル情報を参照できるのが強みです。
もちろん管理項目は使いやすくカスタマイズできるので、効率的・効果的に人材育成を進められます。
情報更新を依頼する必要がなく属人化も起こらないので、スムーズにスキルマップを作成できます。
まとめ
今回はスキルマップの作り方とメリット・デメリット、押さえておきたい注意点についてお伝えしました。
スキルマップは業務効率化、人材育成、人員配置など、企業の土台となる「従業員」を見える化するツールです。
この記事を参考にして適切なスキル項目を設定し、業務改善に役立つスキルマップを作成してください。