プロジェクトで利益を残すためには、適切なコスト管理・原価管理が重要です。
しかしながら「いつも赤字プロジェクトになっている」「コスト管理を適切に行いたい」と悩む方は少なくありません。
この記事ではコスト管理に活用される、エクセルのメリット・デメリットについて解説します。
エクセルで起こりやすい問題の解決策もお伝えするので、コスト管理を始めたいという方はぜひ最後までご覧ください。
コスト管理とは?

コスト管理とは、企業やプロジェクトの活動に必要なお金を管理することです。
コストには「固定費」と「変動費」があり、管理する項目数は非常に膨大です。
固定費 | プロジェクト・業務を進める上で必ずかかる費用のこと(人件費やシステムの利用料金など) |
変動費 | 事業・プロジェクトの売上によって価格が変動する費用(原材料費や光熱費など) |
コスト管理を行う最大の目的は「プロジェクトを予算内で収めること」といえます。
コスト管理を適切に行わなければ、「コスト超過でプロジェクトが継続できない」「プロジェクトが完了したのに赤字だった」という問題が起こりかねません。
コスト管理はエクセルやスプレッドシートなどの表計算ソフト、もしくは工数管理ツールで管理を行うのが一般的です。
コストを適切に管理して、無駄なコストを抑えプロジェクトで利益を残すことは、企業が存続するために欠かせない取り組みといえるでしょう。
なお「費用」「原価」「コスト」は一緒くたにされることもありますが、意味は異なります。
以下の表に意味の違いをまとめたので、これからコスト管理を始める方は参考にしてみてください。
コスト | 会社が使ったすべてのお金のこと。固定費や変動費、売れ残りや在庫に関するお金も該当する |
費用 | 商品やサービスを売るために使ったお金のこと。原価や人件費、製造費などが該当する |
原価 | 商品の製造や提供までにかかったお金のこと。原材料費や人件費、光熱費などが該当する |
コスト管理をエクセルで行うメリット

エクセルで適切なコスト管理は可能なのか、気になる方も多いでしょう。
ここでは、エクセルでコスト管理するメリットをお伝えします。
導入コストがかからない
すでにエクセルを導入している企業の場合は、導入コストがかかりません。
2022年3月にキーマンズネットが行った「Microsoft Excelの利用状況調査」によると、実に98.6%の勤め先で導入されていることがわかりました。
つまり、エクセルを活用すれば、ほとんどの企業でコスト管理・原価管理が可能ということを意味します。
教育コストがかからない
エクセルはほとんどの企業に導入されており、操作に慣れている人が多いです。
そのため、エクセルの教育時間を節約できる点がメリットといえます。
エクセルはマニュアル作成や研修期間などのコストがかからないため「教育する時間がない」という企業にもおすすめできます。
コスト管理向けのテンプレートが豊富
コスト管理向けのエクセルテンプレートはインターネット上に豊富に存在します。
システム開発業や建設業、士業など幅広い業界に対応している点も優れています。
テンプレートを活用すれば作成する手間がかからず、プロジェクトに合わせて項目の増減も可能です。
基本的にダウンロードは無料ですので、自社の業務にあったテンプレートを見つけてみてください。
コスト管理をエクセルで行うデメリット

エクセルでのコスト管理には課題もあります。
ここでは、エクセルでコスト管理を行う際のデメリットを解説します。
管理が属人化してしまう
エクセルでコスト管理を行うと、管理が属人化する恐れがあります。
属人化とは、ある業務の手順や状況を特定の担当者しか把握できていない状態のことです。
そのため「担当者が不在でトラブルに対応できない」「業務の引き継ぎができておらず誰も操作できない」といった事態を招いてしまいます。
管理が属人化すると仕事を進められないだけでなく、業務効率を下げる結果となります。
ヒューマンエラーが起こりやすい
エクセルは入力がすべて手作業となるため、入力ミスや入力漏れが起こりやすいです。
入力ミスを完全に防ぐのは難しいですが、専用ツールには入力漏れがあった際にアラートで教えてくれる機能があります。
ヒューマンエラーを少しでも防ぐためには、ダブルチェックやトリプルチェックを行なうことが大切です。
管理に手間がかかる
エクセル管理は、ファイルの管理に手間がかかります。
プロジェクトごとに存在するコスト管理表や原価管理表を、一つのにまとめるのは困難でしょう。
担当者が作業のために別々のパソコンで保存した場合、ファイルが複数に分かれて最新ファイルの所在がわからなくなってしまいます。
各ファイルの確認作業が増えること、管理が頻雑化することは、エクセル管理の大きなデメリットといえそうです。
更新に手間がかかる
エクセルでコスト管理を行うデメリットの4つ目は、更新に手間がかかることです。
エクセルファイル形式の管理では、情報更新のたびにファイルを開かなければなりません。
更新したファイルはメールやチャットでメンバーに共有する必要があり、手間がかかります。
また、複数人で同時編集ができないため、作業が終わるたびにメンバーへ連絡する点もデメリットです。
管理に利用できるエクセルテンプレート
ここでは、コスト管理に利用できるエクセルテンプレートを紹介します。
製造業向けコスト管理テンプレート「活動ベースのコスト管理」
Microsoftが提供する製造原価を算出するためのコスト管理テンプレートです。
「直接原価」「間接原価」「一般費」「管理費」が管理可能で、製品原価と週あたりの生産単位数を入力すれば合計生産原価を自動で計算してくれます。
「活動ベースのコスト管理」はMicrosoft公式サイトからダウンロードできるため、安心して利用できるメリットがあります。
Microsoft「活動ベースのコスト管理」 |
https://create.microsoft.com/ja-jp/templates/%E4%BC%81%E7%94%BB |
bizocean 書式テンプレのテンプレート
国内最大級のエクセルテンプレート数を誇る、bizoceanからダウンロードできるコスト管理テンプレートです。
汎用的なものから製造業や飲食業など業界に特化したものまで公開されており、自社にマッチするテンプレートが見つかりやすいです。
bizocean 書式テンプレのテンプレート |
https://www.bizocean.jp/doc/list/?keyword=%E4%BA%88%E5%AE%9F%E7%AE%A1%E7%90%86 |
管理の属人化を防ぐ3つのポイントとは?

エクセルでコスト管理を行う際の、属人化を防ぐポイントをお伝えします。
エクセルファイル置き場を共有
エクセルのファイル置き場を共有しておけば「最新のファイルがどれかわからない」という問題を解決できます。
ファイルの置き場所は個人のパソコンではなく、ファイルサーバーやストレージを活用しましょう。
クラウドを利用する際はハッキングや情報流出のリスクに備えて、セキュリティ対策を十分に実施してください。
マニュアルを策定
マニュアルの策定は、エクセルでコスト管理を行う際の重要なポイントです。
「ファイルが複数あってどれが最新かわからない」という事態はエクセル管理のあるあるです。
「ファイルの保存先はファイルサーバーのフォルダAを使用する」など文章で明確にすることで、確認作業の手間を減らせます。
さらに「エクセルでコスト管理を行う目的」「具体的なプロセス」なども記載すれば、教育コストの節約にもつながります。
マクロ・関数でエクセル原価管理をシステム化
データ集計・分析を手作業で行うときは、マクロや関数が便利です。
なぜなら手作業で表管理を行う際に、担当者のスキルや経験が作業効率に大きな影響を与えるからです。
マクロや関数でエクセル原価管理をシステム化すると、スキルに左右されず安定した結果が出せるようになります。
まとめ
今回はコスト管理の入門編として、エクセルでコスト管理を行うメリット・デメリットを中心に解説しました。
エクセルのコスト管理は属人化しやすいのがデメリットですが、ファイル置場の共有やマニュアル作成、マクロ・関数を活用することで、問題点を解決できます。
本記事で紹介したエクセルテンプレートも活用して、コスト削減や利益改善に動き出しましょう。