力量管理は製造業やIT業界、建設業界で広く実施されています。

場合によっては、ISO対応や顧客監査の対策として実施している企業も多いことでしょう。

今回は力量管理の基本と目的、実施するメリットを解説します。

力量管理表(スキルマップ)の作り方や手順も紹介するので、会社の経営者やPMはぜひ参考にしてみてください。

力量管理とは?

力量管理とは?

力量管理とは従業員が持つスキルや知識、経験などを把握して、企業活動に活用するための手法です。

力量とは上記の項目に能力や資格を加えたも総称で、企業によってはスキルと呼ぶ場合もあります。

力量管理はスキル管理ともいわれ、力量管理表(スキルマップ)を使って管理したり評価したりします。

製造業やIT業界、建設業界では早い段階から導入・活用されている手法の1つです。

力量管理を実施する目的とは?

力量管理を実施する目的とは?

ISOを取得するため

ISOの取得には、力量管理の実施を証明しなくてはなりません。

ISOを取得することで顧客満足度の向上やリスク管理の強化、業務効率化を実現します。

人材育成に活用するため

力量管理は人材育成に広く活用されます。

従業員個人のスキルが可視化されるので、伸ばすスキルや補うべきスキルが明確になるからです。

スキル継承や多能工の育成に活用して、効果的・効率的に人材育成を推進できます。

効果的な人材活用のため

これまでの人材配置は個々人の特性を無視した、上司の経験や勘に頼った場当たり的なものでした。

力量管理を行うと、部門をまたいで従業員のスキルを把握・活用できます。

成果が期待できる人材配置アサイン調整の時短化など、さまざま恩恵を受けられます。

エンゲージメントが向上するため

スキル情報をもとにした正当な人事評価は、従業員のエンゲージメントを向上します。

エンゲージメントとは企業と従業員の関係性の強さを表す言葉で、企業が継続するために欠かせません。

従業員のエンゲージメント向上は、企業への貢献意欲や業績向上につながるからです。

力量管理の基本要素(カッツ理論)とは

力量管理の基本要素(カッツ理論)とは

カッツ理論とは、1950年代にアメリカの経済学者ロバート・リー・カッツ氏が唱えた理論です。

カッツ理論では力量管理に、「テクニカルスキル」「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」が含まれるとしています。

テクニカルスキル

テクニカルスキルは、業務を遂行するうえで最も必要な能力のことです。

求められるスキルは業種・職種によって異なりますが、以下のようなものが該当します。

  • Excelによる図表作成
  • 基本的なビジネスマナー
  • 商品・サービスに関する知識力

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルは管理職や経営層を対象としたスキルです。

例えば、論理的思考(ロジカルシンキング)や俯瞰力が求められます。

身につけると多様な状況の変化や重要な場面において、適切な判断を下せるようになります。

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルは全ビジネスパーソン必携の、コミュニケーション関連スキルです。

昨今はテレワークなど非対面の働き方が増えていますが、事業目標を達成するためにコミュニケーションは欠かせません。

ヒューマンスキルは、相手にわかりやすく伝える技術や相手を配慮した行動などが該当します。

力量(スキル)管理のメリット

力量(スキル)管理のメリット

従業員一人ひとりのスキルを可視化する

力量管理を実施すると、従業員一人ひとりのスキルが可視化されます。

最適な人材配置や効率的なスキル継承、スムーズなアサイン調整と、さまざまなシーンで活用されています。

適切な人材配置を実現する

スキルや経験を考慮しない人材配置は、進捗に遅れが出たり品質が均一化しなかったりするのが課題でした。

スキルや業務経験に基づいた適切な人材配置は、製品・サービスの品質向上や短納期化に期待できます。

また、研修やスキルアップを目的にして、力量不足の人材を配置するということも可能です。

トラブルや納期に関してもある程度予測を立てられるようになるので、スケジュール調整がしやすいのもメリットといえます。

企業の得意不得意が明らかになる

従業員一人ひとりの能力の可視化は、企業の得意不得意が明らかになることと同義です。

そのため、いつ・どこに・どのように注力すべきかが明確になるのです。

従業員の能力を正しく把握したうえで、性格や特性に合わせた人材教育が重要になります。

企業の競争力が高まる

力量管理は企業の競争力を高めて、優位性を保つことにつながります。

なぜなら適材適所の人材配置と従業員のスキルの向上が、品質の高い製品・サービスを提供できるようになるからです。

従業員の定着率がアップしたり無駄な残業を減らせたりと、会社により多くのお金を残せるのです。

ISO9001ではスキルマップの提出が求められる

ISO9001ではスキルマップの提出が求められる

品質マネジメントの国際規格「ISO9001」を取得するためには、力量管理表(スキルマップ)の提出が求められます。

実際に「ISO9001:2000規格の要求事項」には、「製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。」とあります。

出典:ISO9001:2000規格の要求事項 6.2.2 力量,認識及び教育・訓練|JQA

ISO9001を取得して製品・サービスの品質を継続的に向上することで、顧客満足度や企業としての信頼度を高められるのです。

なお、ISO9001では力量の明確化や実施証拠として、力量管理表以外に力量評価表と教育訓練表の提出を求めています。

力量管理表(スキルマップ)とは

力量管理表とは従業員個々人のスキルや資格、業務経歴などをまとめた記録表のことです。

保有スキルや習熟度が定量化されるため、誰が見ても判断しやすいのが特徴といえます。

Noスキル名スキルの説明社員A社員B社員C
1スキルAスキルAの内容124
2スキルBスキルBの内容235
3スキルCスキルCの内容415

力量管理表があれば人材配置や人材育成、人事評価がスムーズに実施できるでしょう。

力量管理表(スキルマップ)の作り方を解説【簡単6ステップ】

  1. 力量管理表の目的を定める
  2. 業務の遂行に必要なスキルを洗い出す
  3. スキルの評価者と評価方法を策定する
  4. スキルの評価基準を策定する
  5. 力量管理表を作成する
  6. 力量管理表を導入して効果測定・定期更新を行う

従業員数が少ない場合は、Excel・Googleスプレッドシートで力量管理表を作成します。

スキル項目の粒度は、自社の業務に沿っているか確認することが大切です。

粗すぎると判断がつきにくくなり、細かすぎると管理が大変になるからです。

マネジメントスキルを例に挙げると、「課題を分析する能力」「問題が起きたときの解決力」などと細分化します。

導入開始後は現場からの声を常に汲み上げて、より業務に則った内容へと更新し続ける必要があります。

まとめ

力量管理とは、従業員のスキルや資格などを定量化した一覧表のことです。

人材配置の効果を高めたり、無駄のないスキルアップにつなげたりと、どの企業でも幅広く活用されています。

力量管理は専用のツールを使うことで、より素早く分析して経営戦略に役立てることができます。

次の記事では力量管理におすすめのツールをご紹介していますので、こちらも併せて読んでみてください。