企業のITシステムは、ビジネスの成長と共に進化し続ける必要があります。しかし、長年使用してきたシステムは、老朽化や技術的負債といった問題に直面します。この課題を解決し、システムの未来を切り開く鍵となるのが「マイグレーションサービス」です。
本記事では、マイグレーションの基本から、具体的な種類、成功事例、サービスを選ぶ際のポイントまでを徹底的に解説します。

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マイグレーションサービスとは?その定義と重要性
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定義と背景
「マイグレーション(Migration)」とは、既存のシステム、データ、アプリケーションを、新しい技術や環境へ移行することを指します。サポートが終了したレガシーシステムを使い続けることのセキュリティリスクや、高止まりする維持・管理コストを解決するため、専門的な「マイグレーションサービス」の需要が高まっています。
移行が不可欠な主な理由
- 技術的負債の解消: 古い言語やフレームワーク(例:VBマイグレーションが必要な環境)は、開発効率や拡張性が低く、ビジネスの足かせになります。
- セキュリティの確保: サポート切れのOSやミドルウェアは脆弱性対策ができず、情報漏えいリスクが致命的になります。
- 運用コストの最適化: メインフレーム マイグレーションのように、高価なハードウェアや専門知識が必要なシステムからオープンシステムへ移行することで、トータルコストを削減できます。

マイグレーションの種類と、対応が急務なレガシー資産
マイグレーションは、移行対象によって主に4つの種類に分けられ、それぞれに特有の課題と成功事例があります。
1. プラットフォームマイグレーション(基盤移行)
メインフレーム マイグレーション / ホストマイグレーション
長年企業の基幹を担ってきたメインフレームやホストコンピューターを、オープンシステムやクラウドへ移行すること。コスト削減効果が非常に大きく、近年最も注目されています。
【事例ハイライト】メインフレームのオープン化
沖縄電力様の事例では、メインフレームの維持コスト高止まりやベンダー依存の課題解決のため、オープン化を実施。高精度な変換ツールを活用し、コストと工数の課題をクリアすることで、レガシー環境からの脱却を実現しています。また、他の事例では、既存のCOBOL資産やジョブ定義を極力変更しないリホスト方式を採用し、リスクを低減しつつオープン環境への移行に成功しています。
2. 言語・開発環境マイグレーション
VBマイグレーション(Visual Basic)
VB 6.0など、サポートが終了した開発言語で構築されたシステムを、VB .NETやJava、C#などのモダンな環境へ移行すること。
【事例ハイライト】VBシステムの近代化
ある部品製造業A社では、販売管理システムなど、5世代にわたるVBバージョンが混在し、メンテナンスコストとスキルの継承が課題でした。VBマイグレーションにより、約120万ステップのコードを新しいバージョンに集約。パイロット移行で不安を払拭し、移行後の保守性を大幅に改善しています。また、金融機関B社様のように、VB 6.0とVB .NETが混在する環境をVB .NETへ統合し、クライアントOS更改への対応と標準開発環境への刷新を同時に進めた事例もあります。
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3. アプリケーションマイグレーション(フレームワーク移行)
Struts マイグレーション
Apache Struts 1など、セキュリティサポートが終了したWebアプリケーションフレームワークを、Spring MVCやStruts 2などの最新フレームワークへ移行すること。脆弱性対策が最大の目的です。
【事例ハイライト】Strutsからの脱却
株式会社シーイーシー様(自社事例)では、Apache Struts 1で開発されたEDI取引用システムに脆弱性が指摘されたことを受け、Strutsマイグレーションを実施。Spring MVCへの移行と同時にマルチブラウザー対応(IE依存脱却)も実現しました。StrutsやSpringに精通したハイスキルなエンジニアをアサインし、要件定義で現行調査と動作確認を徹底したことが、品質の安定と成功に寄与しています。
4. データマイグレーション
データベース(DB)やストレージを新しい環境に移行します。データの整合性維持とダウンタイムの最小化が鍵となります。
クラウドマイグレーション:現代の主流とリフト&シフト戦略
マイグレーションの主流は、オンプレミスからAWS、Azureなどのクラウド環境へ移行するクラウドマイグレーションです。
移行戦略は、以下の手法を組み合わせます。
| 手法 | 概要 | 効果・目的 |
| リホスト (Rehost / Lift) | 既存のOSやアプリケーションをほぼ変更せず、そのままクラウドへ移す。 | 移行スピード重視、コスト削減効果を早期に得る。 |
| リプラットフォーム (Replatform) | OSやミドルウェアをクラウド向けに変更する。 | クラウドのメリット(例:マネージドサービス)を活用する。 |
| リファクタリング (Refactoring / Shift) | クラウドネイティブなアーキテクチャ(マイクロサービスなど)に最適化し、大幅に書き換える。 | 将来の拡張性・俊敏性を最大化する。 |
マイグレーションサービス提供企業の選び方と成功の鍵

マイグレーションプロジェクトの成否は、適切なパートナー選びにかかっています。
- 徹底したアセスメント能力: 事前の現状調査と影響範囲の特定を徹底し、正確な移行戦略(リホストかリファクタリングかなど)を立案できるか。
- 移行対象の専門性: メインフレーム、VB、Strutsなど、自社のレガシー資産に関する豊富な実績とノウハウがあるか。
- 自動化ツール・技術力: 高精度な変換ツールや自動化技術を持ち、手作業を減らし、品質とスピードを両立できるか。
- ダウンタイムへの配慮: サービス停止期間を最小限に抑えるための綿密な移行計画と技術的な工夫を持っているか。
マイグレーション成功のための専門家への相談ステップ
マイグレーションは専門的な知識と技術を要するプロジェクトです。まずは、自社の状況を正確に把握し、ベンダーに共有するための準備から始めましょう。
Step 1: 相談前の内部情報の整理(アセスメント準備)
専門家に相談する前に、社内で以下の情報を可能な限り整理しておくと、具体的な提案を迅速に引き出すことができます。
- 移行対象の特定:
- 現在使用しているシステム名、規模(ステップ数、ユーザー数)。
- 特に移行が必要なレガシー資産:メインフレーム、ホスト、VB 6.0、Struts 1など、具体的な名称とバージョン。
- 利用しているデータベース、OS、ミドルウェアのバージョン。
- 移行の目的と期待する効果:
- 「コスト削減(具体的な目標額)」、「セキュリティリスクの低減」、「技術者確保」など、最も優先度の高い目的を明確にする。
- 「新しい機能開発のスピードアップ」など、移行後に実現したいビジネス要求。
- 期限と予算感(暫定で可):
- システムがサポート終了を迎える期限など、移行完了の目標時期。
- 現時点で確保可能な暫定の予算感。
Step 2: サービス提供企業の選定とコンタクト
整理した情報を基に、複数のマイグレーションサービス提供企業をリストアップし、コンタクトを取ります。
- 選定基準:
- 自社と同じ業種・業態での成功事例があるか。
- メインフレームやVBなど、自社のレガシー技術に特化した専門性とノウハウを持っているか。
- クラウドへの移行(AWS、Azureなど)を希望する場合、そのパートナー認定を受けているか。
- 問い合わせ:
- Webサイトの問い合わせフォームや電話で「マイグレーションサービスの相談希望」として連絡し、Step 1で整理した内容を簡潔に伝えます。
Step 3: 初回ヒアリングとアセスメント(現状調査)
ベンダーとの初回ミーティングでは、整理した情報を正確に伝えます。ここからが本格的な「アセスメント(現状調査)」の開始です。
- ベンダーに依頼すること:
- 現在のシステム構成やプログラムの規模、複雑性を分析するためのアセスメントサービスの提案を依頼する。
- 貴社の課題に対し、リホスト、リファクタリング(書き換え)など、どのような移行方式が最適か、その理由を含めて説明を求める。
- 重要ポイント:
- ドキュメントが不足している部分や、業務ロジックが複雑でブラックボックス化している部分について、正直に伝えることが重要です。
まとめ:マイグレーションサービスで未来のIT基盤を築く
マイグレーションサービスは、セキュリティとコストという二大課題を解決し、企業のIT基盤を未来志向へと変革します。特にメインフレーム マイグレーションやVBマイグレーション、Struts マイグレーションといったレガシー資産の近代化は、待ったなしの経営課題です。
成功事例からもわかるように、徹底した事前検証と専門性の高いパートナーの存在が、プロジェクト成功の鍵となります。
