情報共有システムは、建設業・土木工事業のコミュニケーションを円滑にするために欠かせないシステムです。
国土交通省も活用ガイドラインを策定していることから、建設工事への導入の促進が見込まれます。
この記事では、情報共有システムの概要から導入するメリットまでを解説します。
業務をサポートする情報共有ツールもお伝えするので、現場監督をはじめ事務所の作業負担を抑えたい方は導入の参考にしてみてください。
情報共有システムとは何ですか?
情報共有システムとは工事・業務において、受発注者間のやりとりをオンラインで円滑化するシステムです。
「スケジュール調整の効率化」「書類の電子納品で業務効率化」などを図り、工事の業務効率化につなげて生産性を向上をします。
国土交通省の「土木工事・業務の情報共有システム活用ガイドライン」では、情報共有システムを次のように定めています。
公共事業において、情報通信技術を活用し、受発注者間など異なる組織間で情報を交換・共有することによって業務効率化を実現するシステム |
参考:土木工事・業務の情報共有システム活用ガイドライン(令和5年3月)|国土交通省
公共事業では多くの人が関わり、現場状況や関係機関協議資料などの情報を迅速かつ正確に共有しなければなりません。
情報共有システムは受発注者間のやりとりをスムーズにすることから、国土交通省は土木工事において導入を推進しています。
建設業において情報共有はなぜ大事か?

建設業において情報共有は、生産性や安全性、品質などを向上するために欠かせません。
例えば現場のトラブルを早期に共有すれば早めに対策を打てますし、作業時のリスクを共有すればより効果的な安全対策を講じることができます。
また、国土交通省では次のように情報共有システムの重要性を示唆しています。
国土交通省が「i-Construction2.0」を策定したため
国土交通省が策定した「i-Construction2.0」によると、2040年までに建設現場の省人化3割、生産性1.5倍の向上を目指しています。
i-Constructionとは測量から施工、維持管理までのあらゆる工程にICTを取り入れて、生産性の向上を目指す取り組みのことです。
抜本的な省人化対策として、施工・データ連携・施工管理それぞれをオートメーション化するとしています。
省人化を実現すればより少ない人員・時間で、これまでと同等の工事量を確保できます。
参考:i-Construction2.0〜建設現場のオートメーション化〜|国土交通省
生産年齢人口の減少や高齢化を解決するため
建設現場では少子高齢化の影響を受け、生産年齢人口の減少や高齢化、インフラの老朽化が大きな問題になっています。
従来の方法では受発注者間で資料のやりとりが頻発し、余計な手間や労力が生じていました。
情報共有システムを導入すれば情報共有がスムーズになるため、より少ない労力・時間で業務を進められるようになります。
情報共有ツールにはどんな種類がありますか?

情報共有ツールとは、社内外の情報共有をサポートする機能を備えたツール・アプリのことです。
ここでは情報共有ツールを一覧にしたので、自社に導入できそうなものがないか探してみてください。
情報共有ツール | 概要 |
ビジネスチャット | 社内外の人と気軽に連絡がとれるコミュニケーションツールのこと |
オンラインストレージ | WEB上にデータを保管できるサービスのこと |
プロジェクト管理ツール | プロジェクトを達成するためにリソースや進捗、スケジュールなどを一元管理するツールのこと |
文書管理システム | 社内の書類を電子化して、文書の作成から廃棄までを一元管理するシステムのこと |
グループウェア | スケジュールや業務管理などの情報共有を円滑にするソフトウェアのこと |
社内wiki | 従業員の経歴やノウハウを一元管理・共有できるシステムのこと |
どのツールが役立つかは、自社の情報共有に関する課題を明確にしておく必要があります。
工事情報共有システムを利用するメリットは?
工事情報共有システムを利用するメリットは、主に3つです。
- 書類提出のための移動時間を削減できる
- 図面などの大容量ファイルを共有できる
- 工事帳票の電子納品に対応する
書類提出のための移動時間を削減できる
工事情報共有システムを利用すれば、書類提出のための移動時間を削減できます。
なぜならWEB上で書類のやりとりが可能で、発議・承認・決済処理などが完結するからです。
書類の様式が統一されるので集計・分析作業も楽になり、ペーパーレス化で印刷コストを抑えられるのもメリットといえます。
図面などの大容量ファイルを共有できる
多くの場合、自治体のメールサーバーには容量制限があり、図面などの大容量ファイルを共有するには手間がかかっていました。
工事情報共有システムならASPサーバー上に大容量ファイルを共有できるので、データのやりとりがスムーズに行えます。
アップロードしたファイルは残り続けることから、従来のシステムにありがちな再アップロードや急いでダウンロードをするということもありません。
セキュリティも十分な安全性を確保していて、安心して利用できるのも見逃せません。
工事帳票の電子納品に対応する
工事情報共有システムは工事帳票の電子納品にも対応します。
これまで受注者は電子納品データを作成する際に、各自治体の電子納品ガイドラインに沿って整理・修正する必要がありました。
また発注者は、受領した電子納品データを管理システムへ登録する必要があったのです。
情報共有システムなら電子納品ガイドラインに沿って、一部の電子化を自動化したり帳票を提出できたりします。
無料でデータ共有できるツールは?

ここでは、無料から利用できる情報共有システムを3例紹介します。
- 現場クラウドConne
- Photoruction
- 現場ポケット
現場クラウドConne
現場クラウドConneは、会社・現場・協力会社の情報共有を円滑にして、業務に関わる人々の負担を軽減する情報共有システムです。
機能の多さではなく使い心地にこだわり、PCが苦手な人でもストレスなく直感的に操作できます。
フリープランではユーザー数5人以下、データ容量5GBまで利用できることから、小規模な工事に向いています。
Photoruction
Photoructionは営繕に必要な機能を搭載しながら、初期費用なしで利用できる建設ASPです。
工程表ではモバイルからリアルタイムで進捗を確認したり、プロジェクト管理では全ての現場情報を一元管理できたりします。
導入前に無料トライアルも利用できるため、慎重にシステムを選びたい方はまずは試してみることをおすすめします。
現場ポケット
現場ポケットは最大2ヶ月間無料で利用できる、施工管理者向けの建設ASPです。
トーク機能では現場ごとに業者をまとめて情報共有できるため、「どの現場の指示がわからない」「写真が混在する」といった課題を解決します。
また、アナログな方法で行われていた情報伝達や日報作成などの煩雑な業務を、自動化できるのも見逃せないポイントです。
ASP方式とはどういうシステム?
ASP方式とは「Application Service Provider」の略で、インターネット上でアプリケーションを利用するサービスを意味します。
これまでは1台のPCに1本のソフトをインストールしていましたが、ASP方式ではWEB上のサービスに複数の機器からアクセスできます。
建設業界は現場での作業が多いため、スマホ・タブレットから気軽にアクセスできるのは大きなメリットです。
なお、建設業向けのASPは「建設ASP」と呼ばれるので、覚えておくと良いでしょう。
情報共有システム(ASP)国土交通省活用ガイドライン
情報共有システム活用ガイドラインでは、ICTを導入して建設事業における受発注者の生産性向上および品質確保を推進しています。
工事書類の処理の迅速化や受発注者間のコミュニケーションの円滑化を目的に、情報共有システムの活用を積極的に図っています。
ガイドラインには情報共有システムの用語集や利用上の留意点も網羅しているので、一度目を通して理解を深めると良いでしょう。
参考:土木工事・業務の情報共有システム活用ガイドライン(令和5年3月)|国土交通省
まとめ
情報共有システム(ASP)は建設工事・業務における受発注者間のやりとりを、オンラインで円滑にするシステムです。
国土交通省の「i-Construction2.0」にあるように、生産人口が減少する建設現場では早急に省人化・生産性向上を進める必要があります。
BIM/CIMが原則化されたことからも、膨大な情報を扱える情報共有システムの導入を進めていきましょう。