システム開発の成功には、工程表を的確に設計する必要があります。
精度の高い工程表は「誰が」「何を」「いつまでに」行えば良いかが明確です。
当記事ではITエンジニアを200名以上抱え、日々エンジニアの工数管理を25年経験してきて効率化し、工程管理ツールを開発・運用している弊社、DXサービス事業推進部 佐々木舞美がシステム開発における工程表の重要性とメリット・デメリット、WBSの作り方について実務者が解説します。
工程表やWBSを作成する際のポイントもお伝えするので、過不足のないスケジュールでシステム開発を成功させたい方は参考にしてください。
システム開発の工程表とは?

システム開発で使う工程表とは、納期内で終わらせるためのスケジュール表です。
工程表には、プロジェクトの開始日から終了日までの作業内容や期日などを一覧でまとめています。
「誰が」「何を」「いつまでに」終わらせるかが客観的に把握できるので、納期に遅れにくく情報共有がしやすくなります。
システム開発工程は、以下の流れで進むのが一般的です。
Phase1 | 要件定義 |
Phase2 | 設計(外部設計・内部設計) |
Phase3 | 開発(プログラミング) |
Phase4 | テスト |
Phase5 | リリース(システム移行) |
Phase6 | 運用・保守 |
なお、システム開発の手法は「アジャイル開発」や「ウォーターフォール開発」を用いることが多いです。
システム開発工程 | |
アジャイル開発 | 開発・検証・テストを短期間で繰り返しながら進める開発手法 |
ウォーターフォール開発 | 企画・設計・実装・テストのフェーズごとにクリアしていく開発手法 |
システム開発における工程表のメリット・デメリット
ここでは、システム開発における工程表のメリット・デメリットを紹介します。
【工程表のメリット①】スケジュールの全体像を掴みやすい
工程表を作成すれば、スケジュールの全体像が掴みやすくなります。
「作業の流れが悪い」「1人の従業員に業務が集中している」といった問題を発見して、早急に対処できるでしょう。
一つひとつのタスクをスムーズにすることが、全体の流れを整えることにつながります。
【工程表のメリット②】納期をきちんと管理できる
工程表は成果物を納期内に納品したり、前倒しで納品したりするために役立ちます。
もし納品が遅れると売り上げの損失になりますし、何よりクライアントからの信頼を損ねてしまいます。
また、メンバー同士で納期を意識しながら作業するため、プロジェクトの成功率を高められるでしょう。
進捗に遅延が見られる箇所があれば、すぐにフォローを入れられます。
【工程表のメリット③】人員配置・調整を最適に行える
工程表を作成すると「どこに」「誰が必要か」がわかるため、適切な人員配置・調整が可能になります。
メンバーの負荷状況を考慮したうえで調整できますし、空き要員をゼロにすることも可能です。
適切な工程管理で時間に余裕が生まれるので、作業効率の上昇にも期待できます。
【工程表のデメリット】作業内容の詳細はわからない
工程表には作業一つひとつの詳細までは組み込めません。
なぜならば、スケジュール全体像の把握を目的に作成しているからです。
作業の詳細は別途管理して、工程表と組み合わせながら業務を進めてください。
システム開発の工程表作成のポイント

システム開発で工程表を作成するポイントは3つです。
メンバーの作業量を見誤らないこと
システム開発の工程表作成でよくある失敗が、作成者がメンバーの作業量を見誤ることです。
メンバーのキャパシティを超える作業量は、スケジュールの遅延やミスが発生する確率を高めてしまいます。
反対にスキルや経験が豊富なメンバーの作業量が少ないと、進行に遅れが出やすくなるでしょう。
工程表を作成する際は、メンバーのキャパシティやスキルを十分に考慮することが重要です。
WBSを活用すること
基本的に、システム開発を進める際はWBS(Work Breakdown Structure)を作成・管理します。
WBSのメリットは、工程表作成の準備段階でタスクを漏れなく洗い出せることです。
タスクの洗い出しが不十分だとプロジェクトに必要なタスク漏れが発生し、スケジュールの大幅変更を余儀なくされます。
工程表の精度を上げるためにも、WBSは積極的に活用してください。
テンプレートを活用すること
テンプレートを活用すると、時間や手間をかけずに工程表を作成できます。
WBSの構造化では時間がかかり抜け漏れも起こりやすいですが、テンプレートがあれば未然に防ぐことができます。
web上には無料で使えるWBSテンプレートが数多く存在します。
システム開発社内で使いやすいようにアレンジして、作業効率の向上を目指してください。
WBS(Work Breakdown Structure)の作り方

ここでは、システム開発の工程表に欠かせないWBSの作り方を紹介します。
システム開発の成果物(システム)を明確にする
システム開発のメインとなる要件定義や設計などの詳細は、システム開発社内で明確化します。
成果物に求める「機能要件」と「非機能要件」は発注者に依頼するのが一般的です。
機能要件 | 発注者がシステムに必ず搭載したいと考えている機能のこと |
非機能要件 | 機能要件を除いた仕組みのことでシステムのレスポンスやユーザービリティなどを意味する |
要件を満たさないとシステム開発は失敗ともいえるため、確認しながら作業することを徹底しましょう。
発注者に直接ヒアリングする機会を設ければ、内容についてより深く理解できます。
成果物に必要なタスクを洗い出す
次に、成果物に必要なタスクを細かく洗い出します。
細分化しないと「思ったよりタスクが多くて納期に間に合わない」という事態を招きかねません。
一つのタスクを「数時間から数日」で終わるように設定するのが、WBS作成のポイントです。
タスクの工数が多いと感じたら、作業をより細分化してみてください。
システム開発の流れに沿って構造化する
最後に洗い出したタスクを、システム開発の流れに沿ってツリー構造化します。
例えば大タスクが「基本設計」の場合、小タスクは「業務フローの作成」「機能一覧表の設計」「テーブル定義」となるでしょう。
この際、タスクの粒度は揃えてください。
粒度にばらつきがあると「ある部分は詳細だが別の部分は大雑把」というWBSになってしまいます。
WBSで工程表を作成する際の注意点

クリティカルパスを見逃さない
クリティカルパスを短くするほど、システム開発全体のスケジュール期間は短くなります。
クリティカルパスとは、システム開発のスケジュールでもっとも時間がかかりそうなタスク群のことです。
クリティカルパスを見逃さないようにするには、PERT図を用いるのがおすすめです。
タスクの主担当者を決める
ひとつのタスクに担当者が複数人いるときは、主担当者を決めてください。
担当者が複数いると責任の所在が曖昧になり「誰かがやってくれるだろう」という気持ちが生まれます。
タスクが放置されると後々スケジュール全体に大きな影響をもたらす恐れがあります。
「 ひとつのタスクに1人の主担当者をつける」ということを忘れないでください。
工程管理はプロジェクト・アサイン管理ツールの活用がおすすめ

システム開発の工程表は、Excelやスプレッドシートで作成します。
初めて工程表を作成する際はかなりの時間を要しますし、相応のノウハウも必要です。
各タスクの担当者にその都度進捗状況を確認したり、リアルタイムでの更新が難しかったりするのもデメリットといえます。
そんな時におすすめしたいのが「プロジェクト・アサイン管理ツール」です。
Excelなどと比較して、WBSやガントチャートを簡単に作成できるうえ操作性が良いのも特徴です。
クラウド型のプロジェクト・アサイン管理ツールならリアルタイムで進捗状況を把握でき、工程表のメリットを最大限に活かせます。
機能や費用はツールによって異なるので、資料や無料トライアルで比較して自社に合う製品を探してみてください。
まとめ
今回はシステム開発プロジェクトにおける、工程表の重要性やWBSの作り方について解説しました。
工程表は「誰が」「何を」「いつまでに」行うかを明確にして、システム開発を成功に導く重要なツールです。
プロジェクト・アサイン管理ツールを活用すれば、リアルタイムで情報が更新され業務の精度を高められます。
無料トライアルを実施している会社も多いので、気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。