工数計算はプロジェクトの作業量や必要な人数、納期を見積もるための計算方法です。
工数管理に馴染みがない方は、工数計算の重要性や工数計算で使う単位の意味がわからない方も多いでしょう。
この記事では入門編として、工数計算の概要や計算式、単位について実務者が解説します。
工数管理に便利なおすすめツールもお伝えするので、工数管理を始めたい方は参考にしてみてください。
工数計算とは?

工数計算とは一つのプロジェクトが完了するまで、人数や時間がどれほどかかったかを算出することです。
工数計算は工数管理で用いられ、工数管理はエクセルやスプレッドシート、専用ツールで作成・管理します。
工数管理は表計算ソフト向けにテンプレートが用意されていて、マイクロソフト公式サイトやインターネット上の各サイトから無料でダウンロードできます。
工数管理表の作成が面倒な人、少人数の工数管理を目的とした人は、テンプレートを活用するのもいいでしょう。
工数計算を行うメリットを以下にまとめました。
- スケジュールの進捗を把握できる
- 適切な見積もりを提出できる
- 人件費を最小限に抑えられる
- 人員配置を最適化できる
- 無理のない納期・スケジュールを設定できる
- 取引先から信頼されやすくなる
工数計算には多くのメリットがありますが、最大の目的は業務効率化と生産性向上によって利益を確保することです。
工数管理・計算で使用する単位

工数管理・工数計算に用いられる単位は「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」の3種類です。
聞き馴染みのない単位ですが、意味は簡単なのですぐに理解できます。
人時(にんじ)
人時は、チームメンバーの1人が1時間でこなせる作業量を表す単位です。
1人で1時間かかる作業は「1人時」、5人で5時間かかる作業は「25人時」となります。
人時は英語で「Man hour」、MHという単位で表記することもあります。
人日(にんにち)
人日は、メンバー1人が1日でこなせる作業量を1とする単位です。
1日といっても24時間働くわけではなく、休憩時間やミーティング時間などを抜いて「1日8時間」で計算します。
3人で5日かかる作業は「15人日」、10人で5日かかる作業は「50人日」です。
なお、人日は英語で「Man day」、MDという単位で表記することもあります。
人月(にんげつ)
人月は、チームメンバー1人が1ヶ月でこなせる作業量を表す単位です。
こちらも「人日」と同様に、1ヶ月31日間働くのではなく「1ヶ月=20日」として計算するのが一般的です。
20人がかりで2ヶ月かかる作業は「40人月」が正解となります。
人月は工場やシステム開発といった、中長期的なプロジェクトで使われることが多い単位です。
人月は英語で「Man month」、MMという単位で表記されます。
工数計算の方法
ここでは「人時」「人日」「人月」の工数計算のやり方を解説します。
基本となる計算式は「作業時間×作業人数=工数」と簡単なので、ぜひ覚えておきましょう。
人時
人時は「作業時間×作業人数」で求められます。
例えば5人で5時間かかる作業ならば、工数は25人時です。
また3人で3時間作業した後に2人が加わり、合計5人で2時間作業した場合の工数は、以下の計算方法で求められます。
(3時間×3人)+(2時間×5人)=19人時
人日
人日は「作業日数×作業人数」で求めます。
人時の計算式と同様に計算してみましょう。
例えば5人で10日かかる作業は、工数が「50人日」です。
人月
人月は「作業月数×作業人数」で求められます。
10人で半月かかるプロジェクトがあった場合は、5人月が正解です。
工数を計算する際のポイント

ここでは、工数計算と一緒に覚えておきたいポイントについてお伝えします。
工数計算の計算式で人数や納期の見積もりができる
前述した工数の計算式を応用すれば、人数や納期の見積もりが可能です。
工数 | 人数×時間 |
人数 | 工数÷時間 |
時間 | 工数÷人数 |
例えば必要な工数が320時間だった場合、1日8時間稼働すると40人日で対応できる計算となります。
納期が20日なら必要な人数は2人です。
計算式を入れ替える考え方は、プロジェクトの人数や納期を検討する際にとても効果的です。
メンバーのスキルや作業スピードを考慮する
工数計算はメンバーのスキルや作業スピードを考慮して実施しましょう。
新人とベテランでは作業スピードは異なりますし、得手不得手も考慮しなければなりません。
システム開発を例に挙げると、プログラミングは得意だが要件定義は苦手、というメンバーもいるでしょう。
要件定義に何時間もかかってしまうと、スケジュールの進捗に影響が出る恐れがあります。
そのため、工数計算では数字だけに捉われず、一人ひとりのスキルや作業スピードを考える必要があります。
メンバーの稼働率を考慮する
メンバーの稼働率を考慮することも、工数計算がうまくいくコツです。
人日を例に挙げると、メンバーは8時間ずっと仕事をしているわけではありません。
ミーティングや雑談、仕事の切り替えといった時間も要するでしょう。
したがって、スケジュールにはある程度の余裕(バッファ)を持たせることが大切です。
工数管理の入力を習慣化する
メンバーへ工数管理の重要性を十分に理解してもらい、日々の実績や問題点を入力してもらいましょう。
日々の工数入力を怠ると、スケジュールの進捗を正確に把握できません。
進捗が把握できないと「ある作業が大幅に遅れていてスケジュールの見直しが必要になる」という事態に陥ります。
工数入力を習慣化して、正確な見積もりや生産性向上を実現してください。
過去のプロジェクトの工数を参考にする
過去のプロジェクトの工数を参考にすれば、工数計算の精度が上がります。
類似したプロジェクトがある場合は「チームの得手不得手」「どのくらいバッファを持たせたか」「工数をどう見積もったか」などを参考にしてください。
過去のプロジェクトの工数を参考にすることで、時間や手間の節約にもなります。
正確な情報を参照できるように、日々の工数管理の徹底を忘れないようにしましょう。
工数計算に役立つツール

工数計算に役立つ、3種類のツールについて解説します。
Excel・スプレッドシート等の表計算ソフト
表計算ソフトはほとんどの企業で導入されているので、操作慣れしているケースが多いです。
表計算ソフトでの工数管理は、少人数チームやとりあえず工数管理を始めたい企業におすすめです
デメリットとして誤入力や入力漏れが起こりやすいこと、複数人で同時編集・共有がしにくいことが挙げられます。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは従業員の労働時間を管理するためのシステムで、リモートワークやテレワークにも対応します。
勤怠管理と工数計算を一本化することで、プロジェクトの収益性や生産性を正確に把握できるのがメリットです。
生産性向上や業務効率化、無理な残業を行なっていないかなど、プロジェクトとメンバーを多角的な視点から分析・管理できます。
アサイン・プロジェクト管理ツール
アサイン・プロジェクト管理ツールは効率的な工数計算を実現する、中規模以上の企業におすすめのツールです。
アサイン管理ツール | プロジェクトにアサイン(配置)したメンバーのスキルや稼働状況を可視化して一元管理ができるツール |
プロジェクト管理ツール | プロジェクトの全体像を可視化して、分析や情報共有によってプロジェクトの効率化および品質を向上するツール |
アラート機能や勤怠管理システムとの連携で、入力漏れが発生しにくくデータの同時編集も行えます。
デメリットは、初期費用や運用費用がかかることです。
スマホアプリに対応する製品なら、出先で情報の確認・入力ができます。
まとめ
今回は工数管理の入門編として、工数計算の必要性と計算式、単位の意味についてお伝えしました。
工数計算はプロジェクトに必要な人数や時間を数値化して、業務効率化や正確な見積もりに役立てるものです。
毎日の管理業務の負担を減らして、効果的・効率的に工数計算を行いたい方は、ぜひ工数管理ツールの利用を検討してみてはいかがでしょうか。