ITエンジニアや社員のスキル管理ツールfapi(ファピー)を提供する株式会社エフ・ディー・シーのDXサービス事業推進部 佐々木舞美が、工数計算の基礎知識と実践的な計算方法を解説します。
200名以上のITエンジニアのスキル管理・アサイン管理を25年以上行ってきた実務経験をもとに、プロジェクトの見積もり精度を高める工数計算のポイントをお伝えします。
工数計算は、プロジェクトの作業量を「人数×時間」で数値化する方法です。正確な工数計算ができれば、適切な人員配置やスケジュール設定に役立ちます。
この記事では、工数計算の基本から人時・人日・人月の計算方法、実務で使える計算例まで、初心者にもわかりやすく解説します。見積もり精度を上げるポイントや工数管理に使えるツールもあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
工数計算とは?プロジェクト管理に欠かせない基本知識
工数計算とは、プロジェクトを完了するまでに必要な人数と時間を算出することです。「作業時間×作業人数=工数」という計算式で求めます。
工数計算は工数管理の基本となる作業で、エクセルやスプレッドシート、専用ツールを使って管理するのが一般的です。テンプレートも多数公開されており、マイクロソフト公式サイトなどから無料でダウンロードできます。
工数計算を行うことで、以下のようなメリットが得られます。
- プロジェクトの進捗を正確に把握できる
- 適切な見積もりを取引先に提出できる
- 人件費の最適化で利益を確保しやすくなる
- メンバーの負荷を均等に配分できる
- 無理のない納期設定ができる
工数計算の最大の目的は、業務効率化と生産性向上によってプロジェクトの利益を確保することです。
工数計算で使う3つの単位(人時・人日・人月)
工数計算では「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」の3つの単位を使います。それぞれの意味と換算方法を押さえておきましょう。
| 単位 | 意味 | 英語表記 | 換算の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 人時(MH) | 1人が1時間でこなせる作業量 | Man Hour | 1人日=8人時 | 短期タスク・日次管理 |
| 人日(MD) | 1人が1日(8時間)でこなせる作業量 | Man Day | 1人月=20人日 | 数日〜数週間の作業 |
| 人月(MM) | 1人が1ヶ月(20営業日)でこなせる作業量 | Man Month | 1人月=160人時 | 中〜大規模プロジェクト |
人時(にんじ)
人時は、1人が1時間で完了できる作業量を「1」とする単位です。
1人で1時間かかる作業は「1人時」、5人で5時間かかる作業は「25人時」となります。短期タスクや日次の工数管理で使われることが多い単位です。
人日(にんにち)
人日は、1人が1日でこなせる作業量を「1」とする単位です。
1日の稼働時間は、休憩やミーティングを除いた「8時間」で計算するのが一般的です。3人で5日かかる作業は「15人日」、10人で5日かかる作業は「50人日」となります。
人月(にんげつ)
人月は、1人が1ヶ月でこなせる作業量を表す単位です。
1ヶ月の営業日は「20日」として計算するのが標準的です。20人で2ヶ月かかる作業は「40人月」です。システム開発や製造業など、中長期プロジェクトでよく使われます。
工数計算の方法と実務で使える計算例
基本の計算式は「作業時間×作業人数=工数」です。この式を応用すれば、必要な人数や納期の逆算もできます。
| 求めたいもの | 計算式 | 計算例 |
|---|---|---|
| 工数 | 人数×時間 | 5人×10日=50人日 |
| 必要な人数 | 工数÷時間 | 50人日÷10日=5人 |
| 必要な期間 | 工数÷人数 | 50人日÷5人=10日 |
人時の計算例
人時は「作業時間(時間)×作業人数」で求めます。
【例1】5人で5時間かかる作業の場合:5時間×5人=25人時
【例2】途中で人数が変わるケース:3人で3時間作業した後、2人が加わり合計5人で2時間作業した場合
(3時間×3人)+(2時間×5人)=9+10=19人時
人日の計算例
人日は「作業日数×作業人数」で求めます。1日の稼働時間は8時間が基準です。
【例3】5人で10日かかる作業の場合:10日×5人=50人日
【例4】必要な人数を逆算するケース:工数が320時間(40人日)、納期が20日の場合
40人日÷20日=2人が必要
人月の計算例
人月は「作業月数×作業人数」で求めます。1ヶ月は20営業日が基準です。
【例5】10人で半月かかるプロジェクトの場合:0.5ヶ月×10人=5人月
【例6】人月から概算費用を算出するケース:工数5人月、1人月あたりの単価80万円の場合
5人月×80万円=400万円(概算費用)
単位を変換する計算例
異なる単位間の変換が必要になる場面もあります。以下の換算式を覚えておくと便利です。
| 変換元 | 変換先 | 計算式 | 計算例 |
|---|---|---|---|
| 人月→人日 | 人日 | 人月×20 | 3人月=60人日 |
| 人日→人時 | 人時 | 人日×8 | 10人日=80人時 |
| 人月→人時 | 人時 | 人月×160 | 2人月=320人時 |
| 人時→人日 | 人日 | 人時÷8 | 40人時=5人日 |
工数計算の精度を上げる5つのポイント
工数計算の精度を上げるために、実務で押さえておきたいポイントを5つ紹介します。
1. メンバーのスキルや作業スピードを考慮する
工数計算では、メンバー一人ひとりの能力差を考慮することが大切です。
新人とベテランでは作業スピードが異なります。システム開発であれば、プログラミングは得意でも要件定義は苦手というメンバーもいるでしょう。スキルに合った作業を割り振ることで、計算どおりに工数を消化しやすくなります。
2. 稼働率を加味してバッファを設ける
メンバーは1日8時間すべてを作業に充てられるわけではありません。ミーティングや報告業務、急な問い合わせ対応などの時間も発生します。
稼働率を80〜90%程度で見積もり、スケジュールには余裕(バッファ)を持たせましょう。一般的には、工数全体の10〜20%をバッファとして確保するのが目安です。
3. 過去プロジェクトの実績データを活用する
類似プロジェクトの実績データがあれば、工数計算の精度は大幅に向上します。
「チームの得意・不得意」「どの程度バッファを設けたか」「実際の工数と見積もりの差」などを参照すれば、時間や手間の節約にもつながります。
4. 工数入力を毎日の習慣にする
メンバーが日々の実績工数を正確に入力することで、進捗状況をリアルタイムに把握できます。
入力が遅れると「気づいたときには大幅な遅延が発生していた」という事態を招きかねません。工数管理の重要性をチーム全体で共有し、毎日の入力を習慣化しましょう。
5. タスクを細分化して見積もる
大きなタスクをそのまま見積もると、作業の抜け漏れが発生しやすくなります。
タスクを細かく分解し、それぞれに工数を割り当てたうえで積み上げる方法が効果的です。付帯作業(準備・レビュー・修正など)も忘れずに含めましょう。
工数計算の時間管理に役立つツール3選
工数計算を効率化するためのツールを3種類紹介します。チームの規模や目的に合わせて選びましょう。
| ツール種類 | おすすめの企業規模 | コスト | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| Excel・スプレッドシート | 少人数チーム | 無料〜 | 操作に慣れた人が多い・テンプレートが豊富 | 同時編集しにくい・入力ミスが起きやすい |
| 勤怠管理システム | 中小企業 | 月額数百円〜/人 | 勤怠と工数を一元管理・リモートワーク対応 | 工数分析の機能が限定的な場合がある |
| アサイン・プロジェクト管理ツール | 中規模以上 | 月額数千円〜/人 | リアルタイム共有・アラート機能・高度な分析 | 初期費用や導入の手間がかかる |
Excel・スプレッドシート等の表計算ソフト
表計算ソフトは多くの企業で導入されており、追加コストなしで工数管理を始められます。少人数チームや、まず工数管理を試してみたい企業に向いています。
一方で、誤入力や入力漏れが起こりやすい点、複数人でのリアルタイム編集が難しい点には注意が必要です。Googleスプレッドシートを使えば同時編集は可能ですが、データ量が増えると動作が重くなることがあります。
勤怠管理システム
勤怠管理システムの中には、工数管理機能を備えた製品があります。勤怠データと工数データを一本化できるため、プロジェクトの収益性を正確に把握しやすいのがメリットです。
リモートワークやテレワークにも対応しており、メンバーの労働時間と作業内容を多角的に分析・管理できます。
アサイン・プロジェクト管理ツール
アサイン・プロジェクト管理ツールは、中規模以上の企業やプロジェクト数の多い組織に適しています。
| アサイン管理ツール | プロジェクトに配置したメンバーのスキルや稼働状況を可視化し、一元管理できるツール |
| プロジェクト管理ツール | プロジェクト全体を可視化して、分析や情報共有で効率化・品質向上を図るツール |
アラート機能や勤怠管理システムとの連携により、入力漏れの防止やリアルタイムのデータ共有が可能です。スマホアプリ対応の製品なら、外出先からの確認・入力にも対応できます。
工数計算に関するよくある質問
Q. 工数計算の基本的な計算式は?
基本の計算式は「作業時間×作業人数=工数」です。たとえば、5人が10日間作業する場合は「50人日」となります。逆に工数がわかっていれば「工数÷時間=人数」「工数÷人数=時間」で必要なリソースを逆算できます。
Q. 人月・人日・人時はどう使い分ける?
プロジェクトの規模や期間に応じて使い分けます。数時間〜数日の短期タスクには「人時」、数日〜数週間の作業には「人日」、1ヶ月以上の中長期プロジェクトには「人月」が適しています。
Q. 工数計算で1人月は何時間?
一般的に1人月は「20営業日×8時間=160時間」として計算します。ただし企業や業界によって1日の稼働時間(7.5時間など)が異なる場合もあるため、自社の基準を事前に確認しておきましょう。
Q. 工数計算で見積もりが合わないときはどうする?
見積もりと実績に差が出る主な原因は、タスクの洗い出し不足・メンバーのスキル差・バッファの不足の3つです。過去プロジェクトの実績データを参照し、稼働率やリスク係数を加味して計算しましょう。
Q. エクセルで工数計算を始めるにはどうすればいい?
エクセルで工数計算を始めるには、「タスク名」「担当者」「予定工数」「実績工数」「開始日」「終了日」の列を用意した一覧表を作成します。マイクロソフト公式サイトやインターネット上で無料テンプレートも入手可能です。チームの規模が大きくなったら、専用の工数管理ツールへの移行も検討しましょう。
まとめ
工数計算は、プロジェクトに必要な人数・時間・コストを把握するための基本スキルです。「作業時間×作業人数=工数」という計算式を軸に、人時・人日・人月の3つの単位を使い分けましょう。
精度の高い工数計算を行うには、メンバーのスキルや稼働率を考慮し、バッファを設けることが大切です。過去プロジェクトの実績データを蓄積・活用することで、見積もりの精度はさらに向上します。
工数管理の効率化や人員配置の最適化を目指す方は、アサイン管理ツールの導入もぜひご検討ください。
