プロジェクト管理において、管理工数は非常に重要です。

管理工数で適切な見積もりを行うと、スケジュール通りの納品や品質の確保に貢献します。

この記事では管理工数の意味から計算方法、IPA(情報処理推進機構)のデータを元にした、管理工数比率までを解説します。

管理工数でよくある課題と対策、具体的な見積もり方法もお伝えするので、プロジェクト管理に悩んでいる方は参考にしてみてください。

管理工数とは?

管理工数とはプロジェクト管理やシステム開発、ソフトウェア開発で発生する作業に対して、どれほどの人数や時間がかかるかを表す指標です。

工数の算出方法は「工数 = 作業人数 × 作業時間」です。

例えばプロジェクトマネージャー1人がスケジュール作成に8時間かかった場合、管理工数は8時間(1人×8時間)となります。

管理工数をしっかりと行えば「品質の高さをどうやって維持するか」「短納期化には何が必要か」を把握できます。

タスクごとにコストを算出することで、予算に応じて適切なリソースを分配できるでしょう。

また作業の効率化や生産性の向上にも期待できるため、管理工数による適切な見積もりは欠かせないといえます。

なお、管理工数はエクセルやスプレッドシート、専用ツールを使って作成・管理します。

管理工数のメリット

管理工数のメリット

ここでは、管理工数のメリットを簡単に解説します。

  • スケジュールの管理・調整がしやすくなる
  • プロジェクトチームの作業効率が向上する
  • プロジェクトメンバーのモチベーションが上がる
  • 計画や見積もりの精度が向上する

管理工数を実施するとメンバーそれぞれの工数を把握でき、「作業負荷が集中している」「空き時間がある」などが明確になります。

チームメンバーの作業負荷をうまく分散して、生産性の向上や納期内の完遂を目指しましょう。

管理工数のデメリット

ここでは、管理工数のデメリットを簡単にみていきます。

  • 工数の入力に時間がかかる
  • 管理工数の定着に時間がかかる
  • データに不備があるとプロジェクトが混乱する

工数の入力には多くの時間と労力が必要なうえ、データに不備があると正確な管理工数ができません。

工数管理ツールを導入すれば入力の手間は軽減できますが、教育や管理体制を整える時間が必要なことも理解しておきましょう。

システム開発の工数比率【IPA】

ここではIPA(情報処理推進機構)が公開する「ソフトウェア開発データ白書」を元に、システム開発の管理工数比率を求めます。

工程N最小P25中央P75最大平均標準偏差
基本設計3040.0010.1150.1550.2070.5680.1690.088
詳細設計3040.0030.1290.1670.2110.8840.1750.09
製作3040.0030.260.3260.3790.870.3260.112
結合テスト3040.0040.1490.1990.2410.4460.20.079
総合テスト3040.0010.0730.1160.1670.5070.130.08

出典:図表7-1-16 工程別の実績工数の比率の基本統計量(新規開発)|IPA

ここから中央値を計算すると、次のようになります。

工程割合
基本設計18%
詳細設計18%
製作31%
結合テスト20%
総合テスト13%

一般的に、プロジェクト管理における管理工数比率の目安は、10〜20%といわれています。

特に試算見積や概算見積を行う際の指標として活用できるので、管理工数を行う際はぜひ「ソフトウェア開発データ白書」を参考にしてみてください。

概算見積で見積もりの割合がIPA指標と大きくズレていた場合は、実態のプロジェクトに沿って詳細見積を行うようにしましょう。

工数管理の具体的な見積もり方法

工数管理の具体的な見積もり方法

管理工数の具体的な見積もり方法を、3ステップで解説します。

  1. プロジェクト管理の作業項目を洗い出す
  2. 作業項目ごとに管理工数を算出する
  3. クライアントと調整して妥協点を探る

1.プロジェクト管理の作業項目を洗い出す

まずは、プロジェクト管理の作業項目を洗い出して整理しましょう。

見積もりの精度を上げるためにも、以下のように作業項目を細分化します。

管理工数の種類具体的な作業
進捗管理スケジュールや進捗報告書、WBSの作成など
品質管理設計書のレビュー工数の確認など
変更管理変更箇所に対する影響調査やスケジュール調整など
障害管理テストに対する障害の集計と改修計画など

このように、どのような管理作業があるかを明確にしておきましょう。

2.作業項目ごとに管理工数を算出する

作業項目を整理したら、それぞれの管理工数を具体的に算出します。

WBSの作成を例にした数値の算出方法は、以下の通りです。

人数(2人) × 時間(2時間) × 週間(4週間) = 16時間

同様に、品質管理を例にした場合は、設計書のレビュー時間は次のように算出できます。

設計書数(100本) × 時間(0.5時間) = 50時間

作業内容ごとに時間や工数を試算することで、クライアントに対して管理工数の根拠を提示できるようになるのです。

3.クライアントと調整して妥協点を探る

最後に、管理工数のコストをクライアントと調整しましょう。

管理工数を試算していくと、開発工数はおおむね10〜20%に落ち着くことが多いです。

クライアントと調整する際は管理工数の必要性を理解してもらい、管理作業の時間や成果物を明確にするようにしてください。

システム開発では品質の担保と短納期化が求められるため、安易に管理工数を削らずうまく妥協点を探りましょう。

管理工数におけるよくある課題と対策

管理工数におけるよくある課題と対策

管理工数におけるよくある課題をまとめました。

  • 作業の重複や非効率なプロセスで時間が無駄になる
  • コミュニケーション不足で誤解が生まれたり情報が遅れたりする
  • 不明瞭なタスク管理や優先順位付けで作業が遅れる

これらの課題を解決するには、工数管理ツールやERPなどを用いるのが一般的です。

工数管理ツールとはタスクの進捗管理やコスト管理などを効率化して、工数の削減につなげるためのツールです。

ERPとは企業全体のQCDを一元管理して、経営に活かすツールを意味します。

ツールを利用すればプロジェクトにかかる時間や人数を一元管理して、管理工数の最適化を実現できます。

工数管理・プロジェクト管理の代表的な方法

工数管理・プロジェクト管理の代表的な方法

工数管理・プロジェクト管理には、企業や組織ごとにさまざまな方法がとられています。

  • WBS
  • ガントチャート
  • CCPM
  • PERT

WBS(英語:Work Breakdown Structure)

WBSとはタスクを細分化して、プロジェクトの全体像を把握する構成図のことです。

「いつまでに」「どの段階まで」「どのように進めるか」が明確になるので、タスクの重複や抜け漏れを防げるというメリットがあります。

ガントチャート

ガントチャートとはプロジェクトの進捗状況を棒グラフで視覚化したもので、WBSを用いて作成します。

各タスクから横長の棒グラフが伸びていて、作業の進捗や期間を示しています。

仮に日程を変更したい場合でもすぐに調整できるところが、ガントチャートのメリットといえるでしょう。

CCPM(英語:Critical Chain Project Management)

CCPMとはスケジュールに余裕を持たせて、確実に納品を行うプロジェクト管理方法です。

タスクの納期をあえて短縮して、早急にプロジェクトを達成することを目的としています

CCPMではWBSなどで工数を計算したうえで、10〜20%の余裕を持たせて短縮します。

トラブルが起こってもバッファの分で対応できますし、遅延などもすぐに発見できるのがポイントです。

PERT(英語:Program Evaluation and Review Technique)

PERTとはプロジェクト中の工程の流れや業務の優先順位、必要な日数を図で表す管理方法です。

各工程の関係性が明らかになり、仕事の遅延や先延ばしを防ぐことができます。

まとめ

管理工数の見積もりが正確で工数を確保できれば、スケジュールの遅延を防ぎ品質も担保できます。

IPAのデータからもわかるように、プロジェクト管理における管理工数比率の目安は10〜20%がおすすめです。

工数管理ツールを導入する場合は、工数やコストなどを効率的に推進・改善できるツールを選ぶようにしましょう。

工数見積もりの精度を高めたりメンバー間のコミュニケーションを活性化させたりして、プロジェクトを円滑に進めてみてください。