Salesforceを活用する企業にとって、APIの制限やガバナ制限の理解は業務の安定性確保に欠かせません。
本記事では、Salesforceの導入サポート、開発・連携を行う(株)FDCのエンジニアチームが、2025年最新のSalesforce制限について詳しく解説します。
ぜひこの記事を読んでエラーを回避し効率的な運用を実現するAPIの回数制限やガバナ制限についての知識を深めてみてください。

SalesforceのAPI制限とは
SalesforceのAPI制限は、マルチテナント環境の安定性を確保するために設けられた重要な仕組みです。これらの制限により、特定のユーザーがシステムリソースを独占することを防ぎ、すべてのユーザーが安定してサービスを利用できる環境を維持しています。
API制限の種類
Salesforceでは以下の3つの制限により、トランザクションの負荷を調整しています:
- 同時API要求数の制限
- APIタイムアウト制限
- 合計API要求の割り当て
同時API要求数の制限
組織種別 | 制限数 |
---|---|
Developer Edition組織とトライアル組織 | 5 |
本番組織とSandbox組織 | 25 |
この制限は20秒以上の同時受信要求数に適用されます。20秒より短い同時要求の数に制限はありません。
エディション別API回数制限
SalesforceのAPI制限は、組織のエディションによって大きく異なります。2025年現在の最新情報をもとに、各エディションの制限を詳しく見ていきましょう。
24時間あたりのAPI制限一覧
エディション | 基本API制限 | ライセンス毎の追加コール数 | 備考 |
---|---|---|---|
Developer Edition | 15,000 | なし | 固定制限 |
Professional Edition | 100,000 + (ライセンス数 × 1,000) | 1,000 | APIアクセス有効時のみ |
Enterprise Edition | 100,000 + (ライセンス数 × 1,000) | 1,000 | APIコールアドオンで追加可能 |
Unlimited Edition | 100,000 + (ライセンス数 × 5,000) | 5,000 | Salesforceライセンスは1ライセンス当たり5,000コール |
Performance Edition | 100,000 + (ライセンス数 × 5,000) | 5,000 | Salesforce Platformライセンスも同様 |
Full Sandbox | 5,000,000 | なし | テンプレートから作成されていない場合 |
API制限の計算例
実際の制限計算を理解するために、具体例を見てみましょう:
- Enterprise Edition組織(Salesforceライセンス15個):115,000件(100,000 + 15 × 1,000)
- Unlimited Edition組織(Salesforceライセンス20個):200,000件(100,000 + 20 × 5,000)
ガバナ制限(Governor Limits)の詳細
ガバナ制限は、Apexコードの実行時に適用される細かい制限事項です。これらの制限により、単一のトランザクションがシステムリソースを過度に消費することを防いでいます。
トランザクション単位の主要制限
制限項目 | 同期Apex | 非同期Apex |
---|---|---|
SOQLクエリの合計数 | 100 | 200 |
SOQLで取得されるレコード数 | 50,000 | 50,000 |
SOSLクエリの合計数 | 20 | 20 |
DMLステートメントの合計数 | 150 | 150 |
DMLで処理されるレコード数 | 10,000 | 10,000 |
コールアウトの合計数 | 100 | 100 |
ヒープサイズ | 6 MB | 12 MB |
最大CPU時間 | 10,000ミリ秒 | 60,000ミリ秒 |
よくあるガバナ制限エラー
開発現場でよく遭遇するガバナ制限エラーを、発生頻度順にご紹介します:
- Too many DML statements: 151 – DML操作が150回を超過
- Too many SOQL queries: 101 – SOQLクエリが100回を超過(同期処理の場合)
- Too many query rows: 50001 – 1つのトランザクションで取得するレコード数が上限を超過
- Too many callouts: 101 – 外部APIコールアウトが100回を超過
- Apex CPU time limit exceeded – CPU処理時間が上限を超過
API制限の確認方法
適切な運用のためには、現在のAPI使用状況を定期的に監視することが重要です。Salesforceでは複数の方法でAPI使用状況を確認できます。
設定画面での確認方法
- システムの概要ページ:[設定] → [システムの概要] → [API使用状況]セクション
- 組織情報ページ:[設定] → [組織情報] → [API要求数(この24時間以内)]
- API使用状況通知:指定した割合を超えた場合のメール通知設定
プログラムでの確認方法
- REST API:Sforce-Limit-Info応答ヘッダー
- SOAP API:レスポンスボディの<type>API REQUESTS</type>内
- Lightning Platform REST API:/limitsコール
- Apexメソッド:OrgLimits.getAll()またはOrgLimits.getMap()
制限回避の具体的方法
Salesforce制限を効果的に回避するには、設計段階からの適切な対策が不可欠です。以下に実践的な対策をご紹介します。
SOQL制限の回避策
- バルク処理の活用:ループ内でのSOQL実行を避け、Map型を使用したバルク処理を実装
- 親子関係の活用:サブクエリを使用して関連レコードを一度に取得
- Database.QueryLocatorの活用:大量データ処理時はバッチApexと組み合わせて使用
DML制限の回避策
- バルクDML操作:ループ内でのDML実行を避け、List型でレコードをまとめて処理
- upsert操作の活用:insert/updateを判別する処理を削減
- エラーハンドリング:Database.insert(partial: true)などの部分成功オプションを活用
CPU時間制限の対策
- 効率的なアルゴリズム:O(n²)のようなコストの高い処理を避ける
- 非同期処理の活用:CPU集約的な処理はfutureメソッドやキュー可能Apexで実行
- ループ最適化:不要なループ処理を削減し、効率的なデータ構造を使用
特別な制限事項
通常のAPI制限に加えて、特定の機能や状況で適用される追加の制限についても理解しておく必要があります。
Bulk APIの制限
項目 | 制限値 |
---|---|
24時間内の送信可能バッチ数 | 15,000 |
チャンクサイズ(APIバージョン20.0以前) | 100レコード |
チャンクサイズ(APIバージョン21.0以降) | 200レコード |
QueryLocatorで返される最大レコード数 | 5,000万 |
認定管理パッケージの制限
AppExchangeの認定管理パッケージには、独自の制限セットが適用されます:
- 各パッケージに独自の150 DMLステートメント制限
- 各パッケージに独自の100 SOQLクエリ制限(同期処理)
- 累積クロス名前空間制限:名前空間あたりの制限の11倍
制限監視とトラブルシューティング
効果的な制限管理には、継続的な監視と迅速なトラブルシューティング体制が重要です。
監視のポイント
- 日次監視:24時間のAPI使用量トレンドを把握
- ピーク時間の特定:使用量が集中する時間帯を特定し、分散処理を検討
- アラート設定:制限の80%に達した時点でのアラート設定
- アプリケーション別分析:どのアプリケーションが多くのAPIを消費しているかを特定
緊急時の対応策
- 処理の一時停止:非緊急処理の一時停止による負荷軽減
- バッチ処理の調整:実行間隔の調整や処理量の削減
- API効率化:REST API複合リソースの活用による呼び出し数削減
2025年の制限変更点と今後の展望
Salesforceは継続的にプラットフォームを改善しており、2025年にもいくつかの重要な変更が予定されています。
主な変更点
- プロセス制限の更新:2025年12月31日以降、既存プロセスの編集が可能
- フロー要素制限の撤廃:APIバージョン57.0でフロー要素の制限(2000)が削除
- ConnectApi処理数制限の変更:Winter ’25より順次、Salesforce Platform API処理数制限への移行
対応推奨事項
- API効率化の継続:新しい制限体系に備えた最適化の実施
- 監視体制の強化:変更に伴う影響を早期に検知できる体制づくり
- ライセンス戦略の見直し:必要に応じた追加APIコールの購入検討
まとめ
SalesforceのAPI制限とガバナ制限は、安定したシステム運用のための重要な要素です。エディション別のAPI制限を理解し、適切な監視体制を構築することで、ビジネスの成長に対応できる拡張性の高いシステムを実現できます。
制限を恐れるのではなく、効率的な設計と運用により最大限の価値を引き出すことが重要です。バルク処理の活用、非同期処理の適切な利用、継続的な監視により、制限内で高いパフォーマンスを実現できます。
この記事でご紹介したようにSaleforceのカスタマイズや環境構築には知見やリソースが必要となります。弊社(株)FDCの「SFSolution」ならSalesforceの導入サポート、開発・連携を提供することが可能です。この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社のビジネスに最適なSalesforce活用術をご提案します。
