Salesforce導入プロジェクトを成功に導くためには、単に技術力があるだけでなく、貴社のビジネスを深く理解し、本質的な課題解決に貢献できる開発ベンダーを選定することが不可欠です。本記事では、ITエンジニアを200名以上抱え、システム開発を25年以上経験する弊社、FS部 佐々木舞美が、プロジェクトの失敗リスクを最小限に抑え、真のビジネスパートナーを見極めるための具体的な評価基準を、経験豊富な視点から徹底的に解説します。


開発プロジェクトの遅延・失敗が起きる根本的な原因を解明する

開発プロジェクトの遅延・失敗が起きる根本的な原因を解明する

Salesforce開発プロジェクトが遅延・失敗に陥る原因は、多くの場合、単なる「バグ」や「コーディングミス」ではありません。根本的な原因は、以下の2点に集約されます。

  • ① 要件定義の段階でのビジネス要件の誤解: ベンダーが貴社の業務フローや業界特有の慣習を十分に理解せず、表層的な機能要求のみを実装しようとすること。
  • ② 技術的な実装難易度の過小評価: 既存システムとの複雑な連携や、将来を見据えた拡張性を考慮せず、目先の技術力だけで安易に請け負ってしまうこと。

特に、Salesforceのような柔軟性の高いプラットフォームでは、「何を作るか」 よりも 「なぜそれを作るのか」 の問いにベンダーが答えられるかが、成功の鍵を握ります。


技術力だけでは不十分!ベンダーに求めるべき「ビジネス理解度」の重要性

高いコーディングスキルや認定資格を持つ技術者であっても、貴社のビジネス目標やプロセスを理解していなければ、Salesforceの標準機能から逸脱した、「過剰なカスタム開発」 を提案しがちです。これにより、メンテナンスコストの増大や、将来的なバージョンアップの妨げにつながります。

真に価値のあるベンダーは、まず貴社の以下の点を深くヒアリングし、理解しようとします。

  • KGI/KPI: プロジェクトを通じて達成したい具体的なビジネス目標。
  • As-Is/To-Be: 現在の業務プロセス(As-Is)と、Salesforce導入後の理想的なプロセス(To-Be)。
  • エンドユーザーの視点: 実際にシステムを利用する営業やカスタマーサポート部門の「使いやすさ」への配慮。

ビジネス理解度は、Salesforceの「設定(標準機能)」で解決できる課題と「開発(カスタムコード)」が必要な課題を正しく切り分ける判断力、すなわち「Salesforce最適解」 を導き出す能力に直結します。


認定資格だけでは分からない、真のSalesforce技術力を測る方法

Salesforce認定資格は、ベンダーの技術力を測る上での「最低ライン」を示す指標に過ぎません。真の技術力は、以下の点で評価すべきです。

  • 実装経験の「質」と「深さ」:
    • 単なるCRUD操作(作成・読み取り・更新・削除)だけでなく、複雑なApexコード、非同期処理(Queueable, Future, Batch Apex)、LWC(Lightning Web Component)を用いた高度なUI/UX開発の実績があるか。
    • Salesforceのガバナ制限(Governor Limits)を考慮した、スケーラブルな設計ができているか。
  • 設計ドキュメントの品質:
    • 開発着手前に、データモデル、セキュリティモデル、インテグレーション設計が明確かつ論理的に記載されたドキュメントを提示できるか。
  • 最新技術への対応力:
    • Salesforceが毎年3回リリースする最新機能(Spring, Summer, Winter)や、最新の開発パラダイム(例:LWCへの移行)にどれだけ迅速かつ積極的に対応しているか。

開発体制の透明性を高めるためのチェック項目:オフショア、ニアショア、内製との連携

開発体制の選択は、コストと品質、コミュニケーション効率に大きく影響します。特にオフショアやニアショアを活用しているベンダーの場合、その連携体制の透明性を確保することが重要です。

チェック項目評価のポイント
コミュニケーション体制プロジェクトマネージャー(PM)と直接話せるブリッジSE/PMが日本語でどこまでビジネス/技術を理解しているか。
進捗管理ツールJira, Trello, Backlogなどのツールを利用し、タスクの進捗状況(誰が、何を、いつまでに)が常に確認できる状態にあるか。
コードレビュー体制品質を担保するために、本国や日本側のリードエンジニアによるコードレビューが必須プロセスに含まれているか。
成果物の共有開発中のSandbox環境へのアクセス権や、テスト状況のレポート提出頻度。

SFsolution のご紹介

FDCは、Salesforce開発経験と、お客様のビジネスに寄り添うコンサルティング力を両立した開発体制を提供しています。オフショアの活用を含む柔軟な体制により、高い技術力とコスト効率を両立し、貴社のSalesforceプロジェクトを成功に導きます。SFsolutionの詳細はこちら


Salesforce 開発 ベンダー選定における「技術力の偏り」や「ビジネス要件の誤解」のリスク

1. 「技術力の偏り」リスク

特定のベンダーがSales Cloudの実装に特化していて、Service CloudやExperience Cloudの知見が極端に浅いなど、技術力の適用範囲に偏りがある場合、プロジェクト全体として最適なアーキテクチャが組めないリスクがあります。

  • 確認すべきこと: 貴社が導入を検討している製品群(Sales/Service/Experience/Marketing Cloudなど)すべてにおいて、過去の成功事例と専門知識を持つエンジニアの在籍数を確認しましょう。

2. 「ビジネス要件の誤解」リスク

これは前述の通り最も致命的なリスクです。ベンダーが「要件通り」に開発したにもかかわらず、それが現場の業務効率を悪化させる「使えないシステム」になることです。

  • 確認すべきこと: 提案書に記載された「提案理由」が、貴社の抱える具体的なビジネス課題(例:営業のパイプライン管理の非効率性など)と一対一で対応しているかを精査しましょう。

真の開発パートナーを見極め、プロジェクトの成功を導く「解決策」とは?

プロジェクトの成功を導く「真のパートナー」を見極めるための解決策は、ベンダーとの関係性を「単なる請負業者」から「戦略的な共同開発者」へと変えることです。

以下の要素をベンダー選定の軸に据えてください。

  1. 「課題解決力」の有無: 提案が、機能一覧の羅列ではなく、「なぜその機能が必要か、どうビジネスに貢献するか」というロジックで構成されているか。
  2. 「対等な議論」の姿勢: 貴社の要件がSalesforceのベストプラクティスに反する場合、それに異議を唱え、より良い代替案を提案できる姿勢があるか。
  3. 「内製化支援」へのコミットメント: プロジェクト完了後も貴社が自立してシステムを運用・改善できるよう、技術移転やトレーニングに積極的に取り組む意思があるか。

Salesforceを真に活用するためには、開発プロジェクトの初期段階から、将来的な内製化を見据えた連携が重要です。


提案書とデモで見抜く!ベンダーが持つ業界特化の知見とは

提案書とデモで見抜く!ベンダーが持つ業界特化の知見とは

業界特化の知見は、「手戻りの少なさ」と「最適なアーキテクチャ設計」に直結します。特に、特定の業界(金融、製造、サービス業など)の商習慣や法規制を熟知しているベンダーは、以下のような点で優位性があります。

  • プロセスの標準化: 業界の「成功パターン」に基づいた業務フローを提案できる。
  • データモデル設計: 業界特有のオブジェクト(例:保険業界の「契約」オブジェクト)の適切な設計ができる。
  • デモの説得力: 提案書だけでなく、貴社の業務を想定したデモ(プロトタイプ)の質で、そのベンダーの知見の深さが分かります。汎用的なデモではなく、「この業界特有の課題を解決する」ための具体的な画面構成やデータ構造を見せてもらいましょう。

既存システムとの連携実績とデータ移行ノウハウの評価

Salesforce導入の複雑性の約半分は、既存の基幹システムやレガシーシステムとの「連携(インテグレーション)」と「データ移行」にあると言っても過言ではありません。

評価すべきポイント

  1. 連携実績: ERP(SAP/Oracleなど)、会計システム、SFAなど、貴社が持つ既存システムとの連携にどのような実績があるか。特に双方向のリアルタイム連携の経験が重要です。
  2. データ移行戦略: 移行対象データのクレンジング(データの品質向上)、マッピング(Salesforceのオブジェクトへの関連付け)、移行後のバリデーション(データ検証)計画が明確であるか。
  3. 使用ツールの選定: Data Loader、Informatica、MuleSoftなど、連携・移行に使用するツールの選定理由と、それぞれのツールの専門知識を持つ技術者がいるか。

アフターフォロー体制:リリース後の保守・改修スピードと柔軟性を確認

Salesforceは、リリースして終わりではなく、常にビジネスの変化に合わせて改善していく「育てるシステム」です。したがって、リリース後のアフターフォロー体制は極めて重要です。

  • 保守契約の範囲: 障害発生時のSLA(サービスレベルアグリーメント)、対応時間、対応フローが明確か。
  • 改修の柔軟性: 小規模な改修(例:項目追加、レポート作成)に対応するための「スポット契約」や「準委任契約」など、柔軟な契約形態を持っているか。
  • 専門チームの有無: 開発を担当したメンバーと、保守を担当するメンバーが分かれている場合、引き継ぎプロセスが確立されているか。

まとめ

Salesforce開発ベンダーの選定は、単なる機能要件の比較検討ではなく、貴社の将来のビジネス成長を託すパートナー選びです。

本記事でご紹介した「技術力」と「ビジネス理解度」を測る具体的なチェック項目を活用し、認定資格や表面的な実績にとらわれず、貴社の課題に深くコミットし、本質的な解決策を提示できる真の開発パートナーを見極めてください。これにより、プロジェクトの成功確率を飛躍的に高めることができます。