Salesforceの導入・開発プロジェクトは、企業のビジネス変革の核となる重要な取り組みです。しかし、「ベンダー選びで失敗した」「開発が長引き、費用がかさんだ」といった声も少なくありません。
本記事では、ITエンジニアを200名以上抱え、システム開発を25年以上経験する弊社、FS部 佐々木舞美がSalesforce開発を成功に導くために、失敗例から学び、適切なベンダーを選定し、プロジェクトを成功させるための具体的なステップとチェックリストを、経験豊富な視点から徹底解説します。
- 失敗から学ぶ:Salesforce導入・開発プロジェクトで最も多い課題とは?
- 要件定義の段階で「何を」「どこまで」決めるべきか?
- Salesforce開発の種類と、最適なベンダータイプを理解する
- Salesforce 開発 ベンダー選定時に潜む「ブラックボックス化」や「知識不足」の具体的なリスク
- 開発ベンダー選定の悩みを解消し、プロジェクト成功へ導く「解決策」とは?
- 【徹底比較】開発ベンダーを評価する際の重要チェックリスト10項目
- コストパフォーマンスだけでなく、将来的な拡張性を見据えたベンダーの見極め方
- 契約前に確認すべき!開発体制、品質管理、そして保守・運用サポート体制
- 成功事例に学ぶ!理想的なベンダーとの関係構築とプロジェクト推進のコツ
- Salesforce開発における「内製化」と「外注」の最適解
- まとめ
失敗から学ぶ:Salesforce導入・開発プロジェクトで最も多い課題とは?

多くのプロジェクトが直面する課題を理解することは、失敗を未然に防ぐための第一歩です。
- 1. 要件の曖昧さ・スコープの拡大(スコープクリープ):
- 初期の要件定義が不十分なまま開発に進み、「あれもこれも」と後から機能追加が頻発。結果、開発期間の長期化とコスト超過を招きます。
- 2. ベンダーの技術力・知識不足:
- Salesforceの標準機能で解決できるはずの課題を、知識不足からすべてカスタマイズで対応しようとし、無駄な開発費用と後のメンテナンスコストを増大させます。
- 3. 開発体制のブラックボックス化:
- プロジェクトの進捗や問題点が顧客側に見えにくい状態となり、手戻りが発生しても気づくのが遅れ、致命的な遅延につながります。
- 4. 導入後の運用・定着化の失敗:
- システムが完成しても、現場のユーザーが使いこなせず、結局Excel管理に戻ってしまうなど、投資対効果(ROI)がゼロになるケースです。これは、開発後のサポート体制の不備や、ユーザー教育の不足が主な原因です。
要件定義の段階で「何を」「どこまで」決めるべきか?
プロジェクトの成否は、要件定義で8割決まります。ベンダーに丸投げせず、顧客側が主体となって「何を」「どこまで」決めるかが重要です。
| 決定事項 | 決定の深さ | 失敗を防ぐポイント |
| ビジネス要件(What) | 目的、ゴール、KPI、業務フローの現状と理想 | “なぜ” その機能が必要なのか、”何をもって” 成功とするのかを明確にする。 |
| システム要件(How) | 実装する機能、データモデル、外部連携の範囲 | **「必須」「あれば良い」「フェーズ2以降」に優先順位をつけ、スコープを明確に区切る。 |
| 非機能要件 | セキュリティ、パフォーマンス、運用・保守の体制 | 導入後の運用フェーズ**を具体的に想定し、SLA(サービス品質保証)を含めて合意する。 |
ポイント: Salesforceの標準機能で実現できることを最大限活用することを前提に要件を定義し、本当に必要な部分だけをカスタマイズ対象とすることがコスト最適化の鍵です。
Salesforce開発の種類と、最適なベンダータイプを理解する
Salesforce開発は、単なるコーディングだけではありません。プロジェクトの特性によって、最適なベンダーのタイプが異なります。
Salesforce開発の主な種類
- 1. 標準機能中心の導入・設定:
- Sales CloudやService Cloudなどの標準機能の設定・カスタマイズが中心。
- 2. アドオン開発(APEX/Visualforce/LWC):
- 標準機能では実現できない複雑な業務ロジックやユーザーインターフェースを開発(コーディング)する。
- 3. 外部システム連携(インテグレーション):
- 基幹システム、会計システムなど、外部のシステムとのデータ連携を構築する。
- 4. 定着化・運用支援:
- 導入後のユーザー教育、データ移行、システム管理者への引継ぎ、ヘルプデスク対応など。
最適なベンダーのタイプ
| 開発の特性 | 最適なベンダータイプ | 重視すべきスキル |
| 標準機能中心・迅速な導入 | Salesforceの資格数と実績が豊富な認定パートナー | 業務理解力と設定スキル |
| 大規模なアドオン開発・連携 | 開発実績(APEX/LWC)が豊富で、PM力が高いSIer | 高度なプログラミングスキルとアーキテクチャ設計能力 |
| 特定業界・ニッチな機能 | 業界特化型のソリューションを持つベンダー | 専門的な業務知識と導入ノウハウ |
最適なベンダーを選び、費用対効果を最大化したいとお考えの方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
【合わせて読みたい】:Salesforce 開発 ベンダーと費用対効果を最大化する見積もり交渉術
Salesforce 開発 ベンダー選定時に潜む「ブラックボックス化」や「知識不足」の具体的なリスク
ベンダー選定時に見落としがちな、プロジェクトを破綻させる具体的なリスクについて解説します。
1. 開発体制のブラックボックス化のリスク
これは、特にオフショア開発や、プロジェクトマネージャー(PM)のコミュニケーション能力が低い場合に起こりやすいです。
- リスク1: 手戻り・遅延の常態化: 顧客側がソースコードや進捗を詳細に把握できないため、仕様の誤解やバグが最終段階まで発見されず、手戻りによる納期遅延が連鎖的に発生します。
- リスク2: 属人性の高さ: 特定のエンジニアにしか分からないコードや設定が残され、そのエンジニアが離脱すると、保守・改修が不可能になり、高額な費用をかけて一から再開発が必要になる場合があります。
2. ベンダーの「知識不足」が引き起こすリスク
Salesforceの知識が浅いベンダーは、以下のような致命的なミスを犯すことがあります。
- リスク3: パフォーマンスの低下: 標準機能の制約(ガバナ制限)を理解せず、非効率なAPEXコードや大量のデータ処理を行い、システム全体の動作速度が極端に遅くなる。
- リスク4: アップデートへの対応不能: Salesforceは年に3回大規模なアップデートがあります。知識不足のベンダーが開発したカスタム機能は、アップデート後に動作しなくなるリスクが高く、その度に改修コストが発生します。
SFsolutionのご紹介
SFsolutionは、Salesforce開発・導入における「ブラックボックス化」や「知識不足」のリスクを徹底的に排除します。専門知識を持つプロフェッショナルが、お客様のビジネスに最適なSalesforce活用をサポートし、透明性の高い開発プロセスでプロジェクトの成功を導きます。(https://www.fdc-inc.co.jp/sfsolution/)

開発ベンダー選定の悩みを解消し、プロジェクト成功へ導く「解決策」とは?

リスクを回避し、成功に導くための具体的な「解決策」を提示します。
- 解決策1: 要件定義フェーズを切り出す:
- ベンダー選定前に、要件定義やグランドデザイン(全体構想)のみを、コンサルティング能力の高いベンダー(または独立系コンサルタント)に依頼し、要件を固める。その要件書を基に、複数の開発ベンダーに見積もりを依頼することで、見積もりのブレを防ぎます。
- 解決策2: 開発実績と担当者のスキルを「個」で確認:
- 会社全体の実績だけでなく、プロジェクトにアサインされる予定のPMや主要エンジニアのSalesforce認定資格、過去の類似プロジェクトでの役割、経験年数を直接ヒアリングし、スキルシートを提出してもらう。
- 解決策3: 共通言語の確保(アジャイル推奨):
- 進捗確認の場だけでなく、開発中のSandbox環境へのアクセス権を共有してもらい、週単位で開発状況をレビューする仕組みを導入する(特にアジャイル開発の場合)。これにより、早期に問題を発見できます。
【徹底比較】開発ベンダーを評価する際の重要チェックリスト10項目
ベンダーを客観的に評価し比較するための、必須のチェックリストです。
| No. | チェック項目 | 確認すべき内容 | 評価理由 |
| 1 | Salesforce認定パートナーレベル | 最上位の「Platinum/Gold」か、専門分野の認定バッジがあるか。 | 会社全体の信頼度と技術力を示す。 |
| 2 | 担当者の実務経験年数 | PM・主要エンジニアのSalesforce開発経験が3年以上か。 | 経験年数がノウハウと直結する。 |
| 3 | 類似プロジェクトの実績 | 自社と同業界・同規模のプロジェクト事例の有無。 | 業務理解度の高さを判断できる。 |
| 4 | 要件定義への関与姿勢 | 提案段階で業務フロー改善の提案をしてくるか。 | 受託開発だけでなく、コンサルティング能力があるか。 |
| 5 | 見積もりの内訳の透明性 | 工数(人月)だけでなく、作業内容と単価が詳細に記載されているか。 | コストの妥当性を検証するため。 |
| 6 | 開発における標準機能の優先度 | 標準機能とカスタマイズの切り分け基準を明確に持っているか。 | 無駄なカスタム開発を防ぐ姿勢があるか。 |
| 7 | 品質管理(テスト)体制 | 単体テスト、結合テストの計画とテスト自動化への取り組み。 | システムの品質とバグの少なさに直結。 |
| 8 | 保守・運用サポート体制 | 導入後のSLA(応答時間)、システム管理者向けトレーニングの有無。 | システム定着化と安定稼働のために必須。 |
| 9 | ドキュメント作成のポリシー | 設計書、操作マニュアルの作成基準や引き渡し時期。 | 内製化への移行のしやすさに影響。 |
| 10 | 契約変更への柔軟性 | スコープ変更や追加開発が発生した場合の対応プロセス。 | プロジェクトの柔軟な推進を可能にする。 |
コストパフォーマンスだけでなく、将来的な拡張性を見据えたベンダーの見極め方
目先のコストだけでなく、5年後、10年後を見据えたベンダー選びこそが、真のコストパフォーマンスにつながります。
- 拡張性を考慮した設計思想:
- 将来的に機能を追加しやすいように、Salesforceのベストプラクティス(標準機能の活用、疎結合なコード設計)に従って開発を行うベンダーを選びましょう。「その場しのぎ」のカスタムコードが多いベンダーは、後の改修で膨大なコストがかかります。
- ロードマップ策定の支援:
- 開発ベンダーが、現在の要件だけでなく「フェーズ2、フェーズ3」を見据えた中長期のSalesforce活用ロードマップ策定をサポートしてくれるかを確認しましょう。単なる開発だけでなく、ビジネスパートナーとしての視点を持っているかが重要です。
- 内製化支援の有無:
- 将来的には自社で簡単な改修や運用を行いたい場合、システム管理者(アドミン)を育成するためのトレーニングプログラムや、開発ドキュメントの充実を支援してくれるベンダーが理想的です。
契約前に確認すべき!開発体制、品質管理、そして保守・運用サポート体制
契約書にサインする前に、これらの項目を詳細に詰めることで、トラブルを大幅に回避できます。
1. 開発体制に関する確認事項
- アサインされるメンバーの確定: 契約書に、主要なPM・エンジニアのスキルレベルとアサイン期間を明記してもらう。
- コミュニケーションルール: 定例会議の頻度、進捗報告の粒度、使用ツール(Slack, Chatter, Zoomなど)を事前に取り決める。
- ソースコードの管理: 開発したカスタムコードの知的財産権が顧客側にあること、及びGitなどのリポジトリへのアクセス権が顧客に付与されることを確認する。
2. 品質管理・テストに関する確認事項
- 検収基準: 「バグがないこと」だけでなく、「定義された要件を満たしていること」を具体的なテストケースをもって確認する基準を合意する。
- テスト環境の準備: 顧客側でのUAT(ユーザー受け入れテスト)用の環境、データの準備をどう進めるか、ベンダーのサポート範囲を明確にする。
3. 保守・運用サポート体制に関する確認事項
- サービスレベルアグリーメント(SLA):
- システム障害発生時の対応開始時間と解決目標時間を明確にする。
- 特に重大なバグや障害に対する24時間365日のサポートが必要か確認する。
- 引き継ぎ: 開発完了後の運用マニュアル、設計ドキュメントの納品物のリストを確定し、ドキュメントに基づいた運用担当者へのトレーニング期間を確保する。
成功事例に学ぶ!理想的なベンダーとの関係構築とプロジェクト推進のコツ
プロジェクトを成功させている企業は、ベンダーを単なる「外注先」ではなく、「戦略的パートナー」として位置づけています。
- 対等な関係の構築: ベンダーを専門家として尊重しつつ、顧客側も「実現したいビジネスゴール」を明確に伝え、対等な立場で議論する姿勢を持つ。
- 早期のフィードバック: アジャイル的に、小さな機能からでも早期に触って(プロトタイプやSandboxで)、積極的にフィードバックを行う。手戻りを最小限に抑える最大のコツです。
- 情報共有の徹底: 顧客側の業務変更や組織変更の予定など、プロジェクトに影響を与えそうな情報は、隠さず、素早くベンダーと共有する。ベンダーはそれを踏まえて最適な解決策を提案できるようになります。
- 感謝と評価: 成果が出た際には、適切にベンダーの努力を評価し、良好な関係を継続することが、長期的なシステムの安定稼働につながります。
Salesforce開発における「内製化」と「外注」の最適解
Salesforceの開発・運用体制は、最終的に「内製化」と「外注」のどちらを目指すべきかという課題に直面します。
内製化は、スピード感のある改修とコストの抑制を可能にしますが、優秀なシステム管理者の育成・確保が最大の課題です。
外注は、高度な専門知識をすぐに利用できるメリットがありますが、ブラックボックス化のリスクと継続的なコストが発生します。
最適解へのステップ
- 初期開発は「外注」: 複雑な要件定義、システム連携、大規模なコーディングが必要な初期導入フェーズは、ノウハウと技術力のある専門ベンダーに「外注」する。
- ベンダーに「内製化支援」を依頼: その際、ベンダーに「将来的な内製化」をゴールとして伝え、ドキュメントの整備や自社システム管理者へのOJT(On-the-Job Training)を依頼する。
- 運用・軽微な改修は「内製化」: 導入後は、ユーザー管理やレポート作成、簡単なワークフローの変更などの運用業務を自社のシステム管理者(アドミン)で実施する。
このように、「外注」で基盤を構築し、「内製化」で運用を安定させるハイブリッドな戦略こそが、Salesforceを最大限に活かす最適解と言えます。
まとめ
Salesforce開発の成功は、適切なベンダー選定にかかっています。本ガイドでご紹介したチェックリストと解決策を活用し、目先のコストだけでなく、将来の拡張性、そして何より信頼できるパートナーを見極めてください。
次のアクションとして、まずは貴社の現在の要件を整理し、本記事の「徹底比較チェックリスト10項目」を基に、候補ベンダーを評価してみることをお勧めします。
