Salesforceの導入サポート、開発・連携を行う株式会社FDCのエンジニアチームが、Salesforce Data360(旧 Data Cloud)の特徴や活用方法について、2026年最新の情報をもとに詳しく解説いたします。
Data360は、企業内に点在する顧客データをリアルタイムで統合し、パーソナライズされた顧客体験を実現するSalesforceのデータプラットフォームです。
今回はそんなSalesforce Data360(旧 Data Cloud)についてどなたにでもわかりやすく、Data360の基本から実践的な活用方法まで体系的にご紹介していきます。

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Salesforce Data360(旧 Data Cloud)とは

Salesforce Data360は、企業のあらゆるデータをSalesforceのAgentforce 360 Platformに統合するデータプラットフォームです。2025年のWinter ’26アップデートで「Data Cloud」から「Data 360」にブランド変更されましたが、その本質的な機能は変わらず、むしろ進化を続けています。

従来、企業内のデータは営業システム、マーケティングツール、カスタマーサービス、外部データレイクなど、さまざまな場所に分散していました。Data360は、これらのデータソースに関係なく、すべての顧客データを集約し、一元化した顧客プロフィールを作成します。これにより、セールス、サービス、マーケティングの各チームが統一された顧客情報にアクセスでき、パーソナライズされた顧客体験を提供できるようになります。

Data360のブランド変更について

2025年10月のWinter ’26リリースにて、「Data Cloud」は「Data 360」に正式に名称変更されました。この変更は、データを任意のアプリケーション、AIエージェント、エクスペリエンスに統合して有効化する信頼できる基盤としての役割を明確にするためです。既存のData Cloudユーザーは、機能や設定に変更なく、そのまま利用を継続できます。[出典:Salesforce Help]

Salesforce Data360の主要な特徴

Data360が他のデータソリューションと異なる点は、SalesforceのCRMとネイティブに連携する唯一のデータプラットフォームであることです。ここでは、Data360の主要な特徴を詳しく見ていきましょう。

Salesforceメタデータフレームワークとのネイティブ連携

Data360の最大の特徴は、Salesforceのメタデータフレームワークと完全に統合されている点です。あらゆるソースからのデータを、Salesforceユーザーが既に使い慣れている標準的なオブジェクトやフィールドに自動的に変換できます。

これにより、複雑で費用のかかるデータパイプラインを構築することなく、Salesforce外部のすべてのデータをSales CloudやService Cloudなどの日常的なアプリケーション内で直接利用できます。技術的な専門知識がなくても、データを業務に活用できる環境が整います。

ローコード・ノーコードでのデータ活用

Data360では、クリック操作のみでデータの収集・統合・活用が可能です。Salesforceのメタデータフレームワークですべてのデータを調整すると、フローなどのローコードツールや、Agentforce Assistant、プロンプトビルダーなどの生成AIソリューションを用いてデータを活用できます。

これにより、ビジネスチームはIT部門に依存することなく、ワークフローの自動化やAI、分析機能を強化できます。データエンジニアやプログラマーでなくても、業務担当者自身がデータを活用した施策を実行できる点が大きなメリットです。

オープンで拡張可能なアーキテクチャ

Data360は完全オープン型で拡張可能な構造に設計されています。特に注目すべきはゼロコピー統合の採用です。これにより、データを移行したり複製したりすることなく、SnowflakeやDatabricks、AWS、Google BigQueryなどのトッププラットフォームとシームレスに連携できます。

企業が既に投資しているデータレイクやデータウェアハウスのROIを最大化できるため、既存のデータインフラを活かしながらSalesforceのCRM機能を強化できます。

Data360の主要機能

Data360は、データの取り込みから統合、活用まで、包括的な機能を提供しています。ここでは、実務で活用できる主要機能をご紹介します。

あらゆるデータソースとの接続

Data360は、200種類以上のプレビルドされたコネクターを提供しており、大手クラウドプロバイダーやWeb/モバイルアプリケーション、さまざまなデータソースから外部データを簡単に取り込むことができます。

接続方法 説明 主な用途
プレビルドコネクター MuleSoftが提供する200種類以上のコネクター AWS、Snowflake、Google BigQueryなどとの接続
ゼロコピー統合 データを複製せずに双方向でデータを共有 主要なデータレイクやデータウェアハウスとの連携
Ingestion API 外部システムからData360にデータをプッシュ 大量データの一括アップロードやストリーミング
ベクトルデータベース 非構造化データの取り込み PDF、チャット文字起こし、ナレッジベース記事など

構造化データだけでなく、メール、画像、PDFなどの非構造化データにも対応しており、企業のあらゆるデータを統合できます。[出典:Salesforce公式サイト]

ID解決による統合プロファイルの作成

ID解決(Identity Resolution)は、Data360の中核機能の一つです。異なるシステムやチャネル上に存在する同一顧客のデータを特定し、一つの統合プロファイルにまとめる処理エンジンです。

ID解決のプロセスは以下の要素で構成されています:

  • 一致ルール:異なるデータソース間で同一顧客を識別する基準(メールアドレス、電話番号、顧客IDなど)
  • 照合ルール:データの競合が発生した場合に、どの値を優先するかを決定するルール
  • ルールセット:一致ルールと照合ルールを組み合わせて、統合プロファイルを作成

例えば、ウェブサイトの閲覧履歴、店舗での購買履歴、カスタマーサポートの問い合わせ履歴が別々のシステムに保存されていても、ID解決により一人の顧客として統合され、360度の顧客ビューが実現します。[出典:Salesforce Help]

データハーモナイゼーション(データ調和)

Data360は、さまざまなソースから得たデータを単一の顧客ビューに集約する「データハーモナイゼーション」と呼ばれるプロセスを使用します。すべてのデータをSalesforceの標準メタデータフレームワークに統合することで、異質なデータを調整して単一のモデルに統合します。

ワンクリックのマッピング機能や、自動的にデータをマッピングする事前構成済みのデータバンドルによって、驚くほど簡単にデータを調整できます。これにより、技術的な知識が少ないユーザーでも、データ統合作業を実施できます。

計算済みインサイトとセグメンテーション

Data360のローコードビルダーを使用すると、データから顧客生涯価値(CLV)、購買傾向、エンゲージメントスコアなどの有効な指標を簡単に作成できます。

また、セグメンテーション機能により、インテリジェントで価値の高い顧客セグメントを構築、分析、発見できます。使いやすい単一のインターフェースで、ターゲットを絞ったオーディエンスグループを作成し、マーケティングキャンペーンやパーソナライズ施策に活用できます。

リアルタイムデータ処理

Data360は、リアルタイムの取り込み機能でデータを即座に処理し、そのデータに基づいて行動します。高性能なデータグラフを作成することで、リアルタイムの操作性と自動化されたアクションが可能になります。

これにより、顧客が今まさに必要としている情報やサービスを、適切なタイミングで提供できるようになります。例えば、ウェブサイトでの行動に基づいて、数ミリ秒でパーソナライズされたレコメンデーションを表示することが可能です。

Data360の活用方法と実践事例

Data360は、さまざまな業界や部門で活用されています。ここでは、具体的な活用方法と実践事例をご紹介します。

営業部門での活用

営業担当者は、Data360により統合された顧客プロファイルにアクセスすることで、顧客の全体像を把握できます。過去の購買履歴、ウェブサイトでの行動履歴、カスタマーサポートへの問い合わせ内容などを一元的に確認できるため、より効果的な営業アプローチが可能になります。

  • 顧客の購買パターンや傾向を分析し、最適なタイミングで提案
  • クロスセルやアップセルの機会を自動的に検出
  • 顧客エンゲージメントスコアに基づいた優先順位付け

マーケティング部門での活用

Data360は、従来のCDP(顧客データプラットフォーム)のメリットを超えて、マーケティングチームに包括的なデータソリューションを提供します。統合された顧客データを活用することで、高度にパーソナライズされたマーケティングキャンペーンを実施できます。

Agentforce Marketingと連携することで、既存のデータを移動することなく、即座にアクションに変換できます。顧客の行動や好みに合わせて、リアルタイムにパーソナライズされたコンテンツやオファーを提供することが可能です。[出典:Salesforce公式サイト]

カスタマーサービスでの活用

カスタマーサービス担当者は、Data360により顧客の完全な履歴にアクセスできます。これにより、問い合わせに対してより迅速かつ正確な対応が可能になります。

実例として、エア・インディアはData360とEinsteinを活用し、顧客からの問い合わせ・クレームへの対応の迅速化、ルーティングの効率化、顧客体験のパーソナライズ化に成功しました。AIを活用した返信レコメンデーションと予測AIで、迅速なサポートとパーソナライズされたレコメンデーションを提供しています。[出典:Salesforce Customer Stories]

業界別の活用事例

さまざまな業界でData360が活用されています:

  1. スポーツ・エンターテインメント業界:Formula 1社は、ファンの位置情報やコンテンツの好み、好きなドライバーに基づいたパーソナライズを実施。ファンの満足度88%、初回コンタクトでの解決率86%、メールの配信率99.6%という成果を達成しました。
  2. ホスピタリティ業界:Turtle Bay社は、顧客を理想的なペルソナにセグメント化するためにData360に投資。Agentforce Assistantと連携し、ファミリー層には家族向けのアクティビティを推奨するなど、顧客に合わせたレコメンデーションを実現しています。
  3. 通信業界:中部テレコミュニケーション株式会社は、SnowflakeとData360を連携させたゼロコピー統合により、データ戦略を強化し、顧客体験の向上を実現しています。

AgentforceとData360の連携

2026年現在、AgentforceとData360の連携が注目を集めています。Agentforceが業務プロセスを自律的に遂行するには、正確かつ最新の顧客データが不可欠です。Data360は、構造化データと非構造化データを統合し、AIエージェントに適切なコンテキストを提供します。

Data360の統合されたプロファイルを基盤として、企業は「エージェントファースト」の組織に生まれ変わることができます。AIエージェントは、Data360から得られる包括的な顧客情報を活用し、より精度の高い判断とアクションを実行できるようになります。

Data360の料金体系

Data360の料金体系は、基本料金とクレジット制の組み合わせで構成されています。2026年現在の価格情報をもとに、主要な料金プランをご紹介します。

基本的な料金構造

Data360の価格設定は、データの取り込み量、保存量、処理量に応じたクレジット制を採用しています。主な料金要素は以下の通りです:

項目 概要
基本ライセンス料 Data360の基本機能を利用するための月額料金
データ取り込みクレジット データソースからデータを取り込む際に消費
データストレージ Data360内に保存するデータ量に応じた料金
アクティベーション 統合されたデータを外部システムに送信する際の料金
ゼロコピー接続 1接続あたり600ドル(プライベート/パブリッククラウドとのフェデレーション)

具体的な価格は、企業の利用規模やデータ量によって異なるため、Salesforceの営業担当者に問い合わせて見積もりを取得することをおすすめします。[出典:Salesforce公式価格ページ]

無料Provisioningについて

既存のSalesforceライセンスをお持ちの場合、一定範囲内でData360を無料で利用できる「無料Provisioning」が提供されています。これにより、まずは小規模にData360を試用し、効果を確認してから本格導入を検討することが可能です。

Data360導入時の注意点とベストプラクティス

Data360を効果的に導入するためには、いくつかの重要なポイントがあります。

データガバナンスとセキュリティ

Data360は、プライバシーとデータ倫理のベストプラクティスに基づいて設計されています。Salesforceのテクノロジー倫理と人道的使用に関する部門との協働により、基礎からデータガバナンスが考慮されています。

  • 統合されたデータとメタデータを自動的にタグ付けし、分類
  • ポリシーベースのガバナンスをAgentforceやアナリティクスに適用
  • ユーザーはクリック操作でポリシーを作成・管理し、すべてのデータに一貫して適用
  • 脆弱性の予防、機密情報の保護、柔軟な暗号鍵管理

Agentforce 360 Platformによってデータポリシーを管理するレイヤーが追加されることで、顧客データの安全性を確保しながら世界中の規制遵守要件を満たすことができます。

段階的な導入アプローチ

Data360の導入は、一度にすべてを統合するのではなく、段階的に進めることをおすすめします:

  1. 最も価値の高いデータソースから統合を開始
  2. ID解決ルールを慎重に設定し、統合プロファイルの精度を検証
  3. 特定の部門やユースケースで効果を確認してから、全社展開
  4. ユーザートレーニングを実施し、データ活用の文化を醸成

既存システムとの連携設計

Data360のオープンアーキテクチャを活用し、既存のデータレイクやウェアハウスとの連携を最適化します。ゼロコピー統合を利用することで、データの重複を避け、管理コストを削減できます。

また、Amazon SageMakerなどの外部プラットフォーム由来のモデルとも簡単に接続できるため、既存のAI/MLモデルをData360に保存されたデータで活用することが可能です。

Data360と従来のCDPとの違い

従来の顧客データプラットフォーム(CDP)は、主にマーケティングチームが使用するソリューションでした。しかし、Data360は従来のCDPのメリットを超えて、営業、サービス、マーケティングなど全事業部門に包括的なデータソリューションを提供します。

項目 従来のCDP Data360
主な利用部門 マーケティング中心 全部門(営業、サービス、マーケティング等)
CRM連携 API連携が必要 Salesforceとネイティブ統合
データパイプライン 複雑な構築が必要 ローコード・ノーコードで構築可能
AI/エージェント連携 限定的 AgentforceやEinsteinと完全統合
リアルタイム処理 製品による 標準でリアルタイム処理に対応

Data360は、データを活用したデータ主導の自動化プロセスや事業プロセスの構築を簡素化し、チームが手間をかけずにデータを有効活用できる環境を提供します。

まとめ:Data360で実現する次世代のデータ活用

Salesforce Data360(旧 Data Cloud)は、企業内に点在するデータを統合し、リアルタイムで活用できる強力なデータプラットフォームです。2026年現在、AgentforceなどのAI機能との統合がさらに進み、自律的なAIエージェントを支える基盤として、その重要性が増しています。

主要なポイントをまとめます:

  • SalesforceのCRMとネイティブに連携する唯一のデータプラットフォーム
  • ローコード・ノーコードでデータの統合・活用が可能
  • ID解決により、異なるシステムの顧客データを統合プロファイルに集約
  • リアルタイムデータ処理により、即座にアクションを実行
  • ゼロコピー統合で既存のデータインフラを活用
  • AgentforceやEinsteinなどのAI機能を強化
  • 包括的なデータガバナンスとセキュリティ機能

Data360を導入することで、企業は顧客の360度ビューを獲得し、パーソナライズされた顧客体験を提供できるようになります。営業の効率化、マーケティングの最適化、カスタマーサービスの品質向上など、さまざまな部門で具体的な成果を生み出すことができます。

Salesforce Data360の導入をご検討中の方へ

いかがだったでしょうか、今回はSalesforce Data360(旧 Data Cloud)について詳しく解説してきました。

この記事を読むことで、ある程度はSalesforce Data360についてご理解いただけたと思いますが、実際の導入や運用には専門的な知識と経験が必要なケースが多いです。またデータソースの選定、ID解決ルールの設計、既存システムとの連携など、最適な実装を行うには多くの考慮事項があります。

株式会社FDCでは、Salesforceの各種導入から運用まで、包括的なサポートを提供しています。お客様のビジネス要件を丁寧にヒアリングし、最適なデータ統合戦略をご提案いたしますのでぜひ当社までお気軽にご相談ください。経験豊富なエンジニアチームが、貴社のデータ活用を成功に導きます。

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