はじめに:Salesforceデータモデルの重要性
Salesforceを使いこなす上で欠かせないのが「データモデル」の理解です。データモデルとは、ビジネスで扱う情報をSalesforce上でどのように整理・管理するかを定めた設計図のようなものです。
この設計図を正しく理解し、構築することで、Salesforceは単なるデータベースではなく、企業のビジネスプロセスそのものをデジタルで表現する強力なツールになります。この記事では、ITエンジニアを200名以上抱え、システム開発を25年以上経験する弊社、FS部 佐々木舞美がデータモデルを構成する基本要素である「オブジェクト」「レコード」「リレーション」を初心者にも分かりやすく徹底的に解説します。
その他、Salesforceセキュリティは神話か?データ保護の真実を開発担当者が、別記事でもまとめておりますので合わせて参考にしてください。
Salesforceの「オブジェクト」:データの種類を定義する「箱」

Salesforceにおける「オブジェクト」は、データベースでいうところの「テーブル」にあたります。特定の種類の情報を構造化して保存するための「箱」や「分類」だと考えると分かりやすいでしょう。
顧客データ、案件データ、商品データなど、ビジネスで扱うさまざまな情報をオブジェクトとして管理します。
標準オブジェクトとカスタムオブジェクト:それぞれの役割と具体例
オブジェクトには、大きく分けて以下の2種類があります。
標準オブジェクト(Standard Objects) | カスタムオブジェクト(Custom Objects) | |
定義 | Salesforceが最初から用意している、一般的なビジネスでよく使われるデータの「箱」。 | Salesforceの標準機能ではカバーできない、企業の独自の業務に合わせて作成する「箱」。 |
特徴 | あらかじめ定義された項目(フィールド)や機能が備わっている。削除はできない。 | 企業独自のビジネスルールや情報を管理するために設計される。完全にカスタマイズ可能で、不要になれば削除も可能。 |
主な例 | 取引先(企業情報)、取引先責任者(個人情報)、商談(案件情報)、リード(見込み客)など。 | 「プロジェクト」オブジェクト、「備品管理」オブジェクト、「イベント参加者」オブジェクトなど。 |
標準オブジェクトとカスタムオブジェクトを組み合わせることで、Salesforceを自社の業務に完全にフィットさせることができます。
Salesforceの「レコード」:オブジェクトの中に保存される具体的なデータ
Salesforceにおける「レコード」とは、オブジェクトという「箱」(データ型)の中に保存される、個々の具体的なデータの集まりのことです。データベースでいえば、テーブルの「行」に相当します。
オブジェクトは「データの種類や分類」を定義するのに対し、レコードは「その種類の具体的な実体やインスタンス」を指します。
具体例:
「取引先」というオブジェクトに、以下の項目(列)が定義されているとします。
会社名 | 業種 | 電話番号 |
株式会社ABC | 製造業 | 03-XXXX-YYYY |
ABC株式会社 | ITサービス | 06-YYYY-ZZZZ |
この場合、上の表の1行目と2行目がそれぞれ1つの「取引先レコード」です。
ユーザーはSalesforce上でこれらのレコードを作成、閲覧、編集、削除することで、ビジネスに必要な情報を管理していきます。
Salesforceの「リレーション(関連)」:オブジェクト同士を紐づける仕組み

Salesforceにおける「リレーション(関連)」とは、異なるオブジェクト(データの箱)同士を論理的に紐づけ、関連する情報を結びつける仕組みのことです。
これにより、顧客の全体像を深く理解できるようになります。
リレーションは、Salesforceのデータモデル設計の根幹をなし、情報の整合性を保ちながら効率的なデータアクセスを可能にします。主に以下の2種類があります。
参照関係(Lookup Relationship)の基本とユースケース
- 特徴: 1つのオブジェクトのレコードが、別のオブジェクトのレコードを「参照」する、比較的緩やかな関連付けです。
親オブジェクト(参照される側) が削除されても、子オブジェクト(参照する側) のレコードが自動的に削除されることはありません(設定で変更可能)。
子オブジェクトは、親オブジェクトに紐づいていなくても存在できます(必須項目でない限り)。 - ユースケース: 「取引先責任者」オブジェクトが「取引先」オブジェクトを参照するケース。
ある個人(取引先責任者)がどの会社(取引先)に所属しているかを示します。
取引先が削除されても、その担当者だった個人のレコードは残しておきたい場合に適しています。
主従関係(Master-Detail Relationship)の基本とユースケース
- 特徴: 親オブジェクト(Master)と子オブジェクト(Detail)の間に、非常に密接で強い従属関係が生まれます。
子オブジェクトのレコードは、必ず親オブジェクトのレコードに紐づいている必要があります。
親オブジェクトが削除されると、それに紐づくすべての子オブジェクトのレコードも自動的に削除されます(カスケード削除)。これは、子オブジェクトが親なしには存在し得ない場合に適用されます。
子オブジェクトのレコードは、親オブジェクトのサマリー項目(例:合計金額)に集計できます。 - ユースケース: 「商談」オブジェクト(親)に紐づく「商談商品」オブジェクト(子)。商談商品レコードは単独では存在できず、必ず特定の商談に紐づいています。商談が削除されれば、関連する商談商品も自動的に削除されます。
【保存版】リレーションシップの種類と特徴を徹底比較

参照関係(Lookup) | 主従関係(Master-Detail) | |
関連性 | 緩やか | 密接で強い従属関係 |
紐づけ | 必須ではない(設定可能) | 必須 |
親レコード削除時の挙動 | 子レコードは残る(設定で変更可能) | 子レコードも自動で削除される |
セキュリティ | 親オブジェクトとは独立 | 親オブジェクトの設定を継承 |
集計項目 | 作成できない | 作成できる(親に子レコードの合計などを表示可能) |
用途 | 多くのユースケースで利用される汎用的な紐づけ | 親子関係が明確で、親なしでは子が存在し得ない場合に利用 |
まとめ:Salesforceのデータモデルを理解するメリット
オブジェクト、レコード、そしてリレーションは、Salesforceの柔軟で強力なデータモデルを理解するための基本中の基本です。これらの概念を把握することで、以下のようなメリットがあります。
- データの一貫性と整合性の確保: 関連する情報が自動的にリンクされるため、データの重複や不整合を防ぎます。
- 顧客の360度ビューの実現: ある取引先のレコードを開けば、その会社に関連するすべての取引先責任者、商談、ケースなどを一目で確認できます。
- 効率的なデータ分析: 複数のオブジェクトをまたがるレポートやダッシュボードを簡単に作成でき、多角的なデータ分析が可能になります。
これらの基本をしっかりと理解し、自社のビジネスニーズに合わせてデータモデルを設計することが、Salesforceを最大限に活用するための第一歩となります。
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Salesforce活用の第一歩を踏み出そう

この記事を読んで、Salesforceのオブジェクト、レコード、リレーションについて理解が深まったでしょうか?
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