Salesforceでの大量データ処理において、効率的かつ高速な処理を実現するBulk APIは必要不可欠な技術です。
この記事ではSalesforceの導入サポート、開発・連携を行う(株)FDCのエンジニアチームが、Bulk APIの仕組みから実装方法まで、中級者向けに詳しく解説します。
千から百万件単位の大量データを扱う際には、通常のREST APIやSOAP APIでは処理効率や時間の制約から実現困難ですが、Bulk APIを活用することで非同期処理により効率的なデータ操作が可能になります。このあたりの仕組みやBulk APIの用途について詳しくみていきましょう。

Salesforce、Bulk APIの基本概念と仕組み
Bulk APIとは何か
Bulk APIは、大量のデータを非同期で処理するためのRESTベースのAPIです。通常のSalesforce APIとは異なり、1,000件から100万件という大量のレコードを効率的に処理することに特化しています。
Bulk APIの主な特徴は以下の通りです。
- 非同期処理により、大量データの操作中も他の処理を並行実行可能
- バッチ処理による効率的なデータ処理
- サーバーサイドでの最適化により高いパフォーマンスを実現
- エラー処理機能により、失敗したレコードの特定と再処理が可能
処理の基本的な流れ
Bulk APIでの処理は以下のステップで実行されます。
- ジョブの作成(操作対象オブジェクトと操作種別を指定)
- データファイル(CSV形式)のアップロード
- ジョブの実行開始
- 処理状況の監視(ポーリング)
- 結果の取得と確認
Bulk API 1.0と2.0の違いと選択基準
主要な違いの比較
項目 | Bulk API 1.0 | Bulk API 2.0 |
---|---|---|
データ形式 | CSV、XML、JSON | CSV、JSON |
バッチ管理 | クライアント側で分割 | 自動分割 |
並列処理 | シリアル/パラレル選択可能 | 自動最適化 |
実装の複雑さ | 高い | 低い |
推奨利用条件 | 2,000件未満 | 2,000件以上 |
Bulk API 2.0の優位性
Bulk API 2.0は現在の推奨バージョンであり、以下の改善点があります。
- 自動バッチ管理により実装が簡素化
- 失敗したデータの自動再試行機能
- より効率的な並列処理の実現
- ジョブ状態の管理が簡略化
- エラーハンドリングの向上
Bulk APIの実装方法と実践的な使用例
基本的な実装手順
Bulk API 2.0を使用したデータ挿入の基本的な実装手順を説明します。
- 認証とセッション確立
まず、SalesforceのOAuth2.0またはセッションIDを使用してAPIへの認証を行います。 - ジョブの作成
操作対象のオブジェクト(Account、Contactなど)と操作種別(insert、update、upsert、delete)を指定してジョブを作成します。 - データのアップロード
CSV形式のデータファイルをジョブにアップロードします。 - ジョブの実行とモニタリング
ジョブを実行し、定期的にステータスを確認して処理完了を待ちます。
実装時の注意点
- CSVファイルのフォーマットは厳密に準拠する必要があります
- 非同期処理のため、適切なポーリング間隔の設定が重要です
- エラーレコードの処理ロジックを事前に設計しておくことが推奨されます
- 大量データ処理時は、Salesforceの制限値に注意が必要です
Bulk APIの制限事項と対処法
主要な制限事項
Bulk APIを使用する際に理解しておくべき制限事項があります。
制限項目 | 制限値 | 対処法 |
---|---|---|
1日あたりのジョブ数 | 10,000ジョブ | ジョブの統合・効率化 |
クエリ結果ファイル数 | 15ファイル | クエリ条件の最適化 |
クエリ結果の有効期限 | 7日間 | 早期ダウンロード実装 |
ファイルサイズ上限 | 1GB | データ分割処理 |
パフォーマンス最適化のポイント
効率的なBulk API処理を実現するための重要なポイントは以下の通りです。
- ロック競合を避けるためのデータ編成の工夫
- 適切なバッチサイズの設定(推奨:10,000レコード以下)
- 並列処理の最適化によるスループット向上
- エラー処理とリトライ機能の実装
具体的な活用シーンと事例
データ移行プロジェクト
既存システムからSalesforceへの大量データ移行において、Bulk APIは必要不可欠です。特に以下のようなケースで威力を発揮します。
- 顧客マスタデータの一括移行(数十万件のAccountレコード)
- 過去の取引履歴データの移行(数百万件のOpportunityレコード)
- 外部システムとの定期的なデータ同期処理
定期的なデータ更新処理
日次・週次での大量データ更新においても、Bulk APIの活用が効果的です。
- 在庫情報の一括更新処理
- 顧客属性の定期的な更新
- 価格情報の一括変更処理
Bulk APIとその他のAPIとの使い分け
API選択の指針
適切なAPIの選択は、処理するデータ量と要求される応答時間によって決まります。
データ量 | 推奨API | 特徴 |
---|---|---|
200件未満 | REST API | リアルタイム処理、即座の応答 |
200〜2,000件 | Bulk API 1.0またはREST API | 処理量に応じて選択 |
2,000件以上 | Bulk API 2.0 | 高効率、非同期処理 |
統合システム設計での考慮点
複数のAPIを組み合わせたシステム設計では、以下の点を考慮する必要があります。
- リアルタイム性が求められる処理にはREST APIを使用
- 大量データの一括処理にはBulk APIを活用
- エラーハンドリングと再試行ロジックの統一
- API制限値の管理と監視機能の実装
2025年における最新動向と今後の展望
APIバージョン廃止への対応
2025年Summer ’25リリースでは、Platform API バージョン21.0から30.0が廃止される予定です。これに伴い、以下の対応が必要です。
- 現在使用中のAPIバージョンの確認と更新
- 新しいAPIバージョンでの動作検証
- 影響範囲の評価と対策の実施
新機能と改善点
最新のBulk API 2.0では、継続的な機能改善が行われています。
- 処理速度の向上とスループットの最適化
- エラー報告機能の充実
- 監視とログ機能の強化
- セキュリティ機能の向上
まとめ
SalesforceのBulk APIは、大量データ処理において不可欠な技術であり、特にBulk API 2.0の活用により効率的なデータ操作が実現できます。適切な実装により、データ移行や定期更新処理などの様々なシーンで威力を発揮します。
この記事でご紹介したようにAPI連携やSaleforceのカスタマイズには知見やリソースが必要となります。弊社(株)FDCの「SFSolution」ならSalesforceの導入サポート、開発・連携を提供することが可能です。この記事を読んでSalesforceの拡張機能やデータ管理に興味を持たれた方は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社のビジネスに最適な活用術をご提案します。
