2025年6月のSummer ’25リリースで実際に廃止されたSalesforce Platform APIバージョン21.0から30.0について、その影響範囲と対策方法をSalesforceの導入サポート、開発・連携を行う(株)FDCのエンジニアチームが詳しく解説します。
今回のバージョン21.0から30.0の廃止は、SOAP API、REST API、Bulk APIを使用するすべての外部システム連携に影響を及ぼす重要な変更です。
既に廃止が実施されているため、対象のAPIバージョンを使用している場合は早急な対応が必要となります。

Salesforce Platform API バージョン21.0~30.0の廃止とは
2021年にSalesforceが発表した包括的なAPI廃止計画の一環として、Platform APIバージョン21.0から30.0が2025年6月のSummer ’25リリースで正式に廃止されました。この廃止は当初Summer ’23で予定されていましたが、ユーザーの準備期間を考慮して2回延期され、最終的にSummer ’25での実施となりました。
廃止対象となるAPIの種類
今回の廃止措置は、以下の3つの主要APIに適用されます。
- SOAP API(Simple Object Access Protocol API)
- REST API(Representational State Transfer API)
- Bulk API(大量データ処理用API)
これらのAPIバージョン21.0から30.0を使用しているすべてのコード、パッケージ、アプリケーション、外部システム連携が影響を受けます。
廃止後のエラー内容
Summer ’25リリース以降、廃止されたAPIバージョンへのリクエストは以下のエラーを返すようになります。
| API種類 | エラーステータス | 説明 |
| REST API | HTTP 410: GONE | リソースが永久に利用不可 |
| SOAP API | HTTP 500: UNSUPPORTED_API_VERSION | サポートされていないAPIバージョン |
| Bulk API | HTTP 400: InvalidVersion | 無効なバージョン指定 |
組織への影響範囲を確認する方法
自組織がこの廃止の影響を受けているかを確認することが、最初の重要なステップとなります。Salesforceは影響を受ける組織の管理者に通知メールを送信していますが、以下の方法で詳細な確認が可能です。
Event Log Browserでの確認方法
Winter ’24リリースで導入されたEvent Log File Browserを使用すると、API Total Usageイベントログを簡単に確認できます。
- 設定メニューから「セキュリティ」→「イベントモニタリング」→「Event Log Browser」に移動
- API Total Usageのイベントログファイルをダウンロード(過去24時間分が利用可能)
- CSVファイルを開き、APIバージョン30.0以下へのリクエストがないか確認
- Event Monitoringを有効化している場合は、過去30日間の詳細データが確認可能
組織のAPIバージョンを確認する手順
組織で現在サポートされている最新のAPIバージョンを確認するには、以下の方法があります。
- 設定→クイック検索で「組織情報」を検索→組織情報ページで現在のAPIバージョンを確認
- 設定→開発→API→Enterprise WSDLを生成してバージョン番号を確認
- Apexクラスの新規作成画面で「Version Settings」タブから最新バージョンを確認
2025年10月現在、最新のAPIバージョンはWinter ’26リリースに対応したバージョン65.0となっています。
イベントログから特定すべき重要情報
APIリクエストの発信元を特定するために、以下のフィールドに注目します。
| フィールド名 | 内容 | 活用方法 |
| CONNECTED_APP_ID | 接続アプリケーションID | APIコールを行った接続アプリを特定 |
| CLIENT_NAME | クライアント名 | オプションヘッダーで設定されたアプリ名 |
| USER_ID | ユーザーID | API認証に使用されたユーザーを特定 |
| CLIENT_IP | IPアドレス | リクエスト元のIPアドレス |
APIバージョン廃止への具体的な対応策
影響範囲が判明したら、以下の対策を速やかに実施する必要があります。
APIバージョンの更新手順
外部システムやカスタムコードで使用しているAPIバージョンを、バージョン31.0以降の最新バージョンに更新することが基本的な対策となります。
- APIエンドポイントURLのバージョン番号を変更(例:/services/data/v30.0/ → /services/data/v64.0/)
- WSDL(Web Services Description Language)ファイルを最新バージョンで再生成
- 接続クライアントライブラリを最新バージョンに更新
- 変更後は開発環境やSandbox環境で十分にテストを実施
廃止強制テスト機能の活用
新たに利用可能になったAPIバージョン廃止強制テスト機能を活用することで、本番廃止前に影響を確認できます。
- 設定メニューから「リリース更新」を開く
- 「Salesforce Platform API Versions 21.0 through 30.0 Retirement」カードを選択
- 「テスト実行を有効化」ボタンをクリック
- 廃止対象APIバージョンへのリクエストが実際にエラーとなることを確認
- テスト完了後は「テスト実行を無効化」で元に戻す
この機能により、実際の廃止と同じエラーを事前に体験でき、影響を受けるアプリケーションの特定が容易になります。
インストール済みパッケージの確認と更新
AppExchangeからインストールしたパッケージも影響を受ける可能性があります。
- 設定→アプリケーション→インストール済みパッケージで一覧を確認
- 各パッケージの最新バージョンを確認し、必要に応じてアップグレード
- パッケージベンダーに問い合わせて対応状況を確認
- サポート終了パッケージは代替ソリューションへの移行を検討
今後のAPI廃止に備えるベストプラクティス
今回の廃止への対応だけでなく、将来のAPI廃止にも備えることが重要です。
APIガバナンスの確立
組織全体でAPIの使用状況を管理する体制を構築することが推奨されます。
- 接続アプリケーションを必ず使用し、各クライアントアプリに明示的な識別情報を付与
- API呼び出し時に「Sforce-Call-Options」ヘッダーでクライアント名を指定
- 各外部システム連携に専用のSalesforce Integrationユーザーライセンスを割り当て
- 定期的にEvent Logを監視し、古いAPIバージョンの使用状況を確認
Salesforce APIのサポート期間ポリシー
Salesforceは各APIバージョンをリリース日から最低3年間サポートします。ただし、品質とパフォーマンス向上のため、3年を超えるバージョンは廃止される可能性があります。
現在発表されている今後の廃止予定は以下の通りです。
- SOAP API login()メソッド:Summer ’27(2027年6月)にバージョン31.0~64.0が廃止予定
- 今後も定期的にレガシーバージョンの廃止が計画される見込み
常に最新APIバージョンを使用する習慣
新機能へのアクセスとスムーズな移行のために、以下を実践することが推奨されます。
- 新規開発時は常に最新のAPIバージョンを使用
- 年3回のメジャーリリース(Spring、Summer、Winter)ごとにAPIバージョンを確認
- 既存の連携システムも計画的に最新バージョンへ更新
- Salesforceリリースノートを定期的にチェックし、廃止予定を早期に把握
まとめ:salesforce api 廃止への対応は早急に
Salesforce Platform APIバージョン21.0から30.0の廃止は、2025年6月のSummer ’25リリースで既に実施されています。対象バージョンを使用している場合、外部システム連携が正常に動作しなくなるため、速やかな対応が必須です。
Event Log Browserやリリース更新のテスト機能を活用して影響範囲を特定し、APIバージョンを31.0以降に更新しましょう。また、今後のAPI廃止に備えて、接続アプリケーションの適切な使用、専用ユーザーの割り当て、定期的な監視体制の構築といったAPIガバナンスを確立することが重要です。
Salesforceは各APIバージョンを最低3年間サポートしますが、品質向上のため定期的に古いバージョンが廃止されます。常に最新のAPIバージョンを使用する習慣を身につけ、リリースノートを定期的に確認することで、将来の廃止にもスムーズに対応できる体制を整えましょう。
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