営業DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITを活用して営業活動を効率化・自動化することです。
消費者の購買行動の変化や人手不足などにより、DXは国も積極的に推進しています。
この記事では営業DXの利点から進め方、成功するためのポイントまでを解説します。
注意点もお伝えするので本格的に営業DXを進めたい方は参考にしてみてください。
営業DXとは

営業DXとはデジタル技術とデータを活用して、顧客の購買行動や接点を最適化することです。
これまでの営業活動は、商品を販売して売上を立てるところに焦点が集まっていました。
しかし現在の営業には「顧客の課題を解決する」という、コンサルタントのような役割が求められます。
営業DXはデジタル化と混同されやすいですが、デジタル化はITツールを導入して定着するのがゴールです。
営業DXの場合、ITツールは単なる手段にすぎません。
ITツールの力を借りて業務を効率化し、顧客を成功に導いて企業全体の収益アップがゴールになります。
営業DXに取り組む利点
営業DXに注力すれば、次のような効果が生まれます。
- 営業活動の効率化と生産性を向上する
- 属人化を防ぎ業務やスキルを標準化できる
- 営業戦略が最適化される
営業活動は可視化が難しく、長い間スキルやノウハウの属人化が問題視されてきました。
しかし営業DXでスキルやノウハウは標準化され、各営業担当者が平等に成果をあげられます。
営業戦略が効果的に実施できれば、売上や利益の大幅な増加が見込めるのです。
営業DXの進め方
ここでは、営業DXを導入する流れを5ステップで解説します。
- 営業チームの課題を可視化する
- 営業DXのゴールをイメージする
- ITツールを選定する
- 業務プロセスを改善する
- 定期的に効果を測定する
1.営業チームの課題を可視化する
まずは営業チームの課題を棚卸しします。
営業プロセスやシステムを可視化することで、最適なITツールを選定しやすくなるからです。
営業DXは複数の部門に関係するため、できる限り多くの社員から意見を集めて、課題を明らかにします。
ITツールの導入なのでITシステム部門が中心になりがちですが、ITツールを利用するのは主に営業部門です。
営業部門以外にヒアリングする際は、本来の目的から逸れ過ぎないように注意しましょう。
2.営業DXのゴールをイメージする
次に、営業DXを推進して達成したいゴールをイメージします。
目標を立てる際には「収益何%アップ」「業務効率を何%改善する」といったように、具体的に定量化することが重要です。
導入予算に余裕がある場合は、ITコンサルタントへ相談するのも良いでしょう。
なお、営業DXを推進する過程で自社の課題が変わる可能性があります。
定期的に見直しを行って営業DXの方針を調整すれば、より顧客のニーズに応えられる営業DXを実現できます。
3.ITツールを選定する
営業DXのゴールを設定したら、自社の目的に沿ったITツールを選定します。
営業DXに有効なITツール | 意味 | 効果 |
CRM | 「Customer Relationship Management」の略で、顧客関係性マネジメントという意味がある | 顧客の属性や購入履歴などから、コミュニケーションや営業活動を最適化する |
SFA | 「Sales Force Automation」の略で、営業支援システムと呼ばれる | 商談の進捗把握や成績の良い担当者の営業ノウハウを共有して、業務を効率化する |
MA | 「Marketing Automation」の略で、新規顧客の開拓や既存顧客の育成を担う | 見込み顧客に対して最適な情報を自動で届けられる |
コミュニケーションツール | オンラインでコミュニケーションを図れるツールのこと | 移動時間や時間を節約して生産性を向上させる |
特にモバイル端末に対応しているかは、重要な選定ポイントです。
場所や時間にとらわれず手軽にアクセスできる環境を整えれば、業務効率を大幅に向上できるからです。
4.業務プロセスを改善する
ITツールを選定したらITシステム部門と協力して、ツールの導入やシステム構築を進めましょう。
営業DXのゴールをしっかりと見定めていれば、各部門に対して説得力のある説明がしやすいです。
また、営業チーム内で営業DXの基礎知識やツールの活用方法をレクチャーして、ツールを使いこなせるレベルにまで昇華させます。
データを根拠にした営業プロセスを標準化して、生産性の高い営業チームを目指しましょう。
5.定期的に効果を測定する
営業DXはツールを導入して終わりではありません。
営業DXの前後を比較して、商談数や成約数にどれほど変化があったのかを測定します。
効果が表れていない箇所があれば、仮説を立てて改善に努めましょう。
営業DXの効果測定・改善を重ねることで、営業活動の最適化を実現します。
営業DXを成功させるポイント

営業DXへの理解を浸透させる
組織全体で営業DXを浸透させるため、まずは経営トップからDXへの理解を深めていきます。
営業DXに関わらず、日本はDXが浸透しにくい国と言われています。
浸透しにくい理由は、部門ごとに整合性が確立されていない点や担当者のスキル不足です。
DX研修を定期的に開催したりフォローアップの体制を整えたりすることで、全社的に営業DXへの取り組みが浸透しやすくなります。
適切な投資への意思決定を行う
営業DXを推進するためには、経営陣が適切な投資への意思決定が必要です。
DXへの投資に対して理解と優先順位をつけていない場合、予算が十分に充てられない可能性が高くなります。
また営業DXはITツールだけではなく、人材の確保や育成への投資も欠かせません。
経営陣には組織の現状を十分に理解したうえで、適切な投資の意思決定が求められます。
営業をDXする際の注意点
関連部門と連携を取る
営業DXを推進する際は関連部門と連携を取り、認識の齟齬が起きないようにしましょう。
関連部門に連絡が行き届いていない場合、運用が行き詰まる可能性があるからです。
全社に向けて営業DXの目的や方針を発表し、必要に応じて変更点の周知をします。
全従業員が自社の成長につながる取り組みだと理解すれば、DX化の推進がスムーズに行えるでしょう。
導入するITツールに合わせて営業プロセスを再構築する
営業DXでは、ITツールに合わせて営業プロセスを再構築することが重要です。
現在の営業プロセスに合わせてITツールを選択すると、ツールの利用幅に制限が生じて本当に実現したいことが実現できません。
営業プロセスとツールが適合しなければ、現場で使われずに形骸化する恐れもあるのです。
営業DXの成功事例
レノボ・ジャパン合同会社
レノボ・ジャパンは、パソコンおよび周辺機器の製造・販売を手掛けるメーカーです。
CRMの導入により顧客情報の一元管理と、CRMデータベースとのスムーズな連携を実現しています。
CRMを導入したきっかけは顧客情報が部門ごとに分散して、状況把握に時間がかかったり顧客対応への質が低下したりしたからです。
現在ではCRMの活用で営業活動の進捗が明確になり、非効率な飛び込み営業を削減しています。
MIZUNO株式会社
MIZUNOはスポーツ用品の製造・販売を行う、国内大手のスポーツ用品メーカーです。
営業プロセスを改善するために、データを一元管理して効率化とデータ活用の基盤作りに取り組みました。
営業活動に関わる情報は1つのSFA・CRMに集約して、データの利活用から資料作成までが行える環境を整えています。
まとめ
営業DXはデジタル技術とデータを活用して顧客の行動を分析し、営業プロセスを最適化することです。
営業DXを成功させるためには自社の課題を把握したうえで、ゴールを明確にする必要があります。
インターネットの普及により、ビジネスの現場は絶えず変化しています。